冬場の入浴、温度差に注意

「ヒートショック」知ってますか? 冬場の入浴、温度差に注意

脱衣所・浴室を事前に暖め ぬるま湯でまず半身浴
浴槽にゆったりとつかり、体を温めると、身も心も癒やされる。
だが、家庭での入浴には思わぬ危険が潜む。
秋から冬場にかけ気温が下がると、「ヒートショック」と呼ばれる家の中の急激な温度変化で入浴中の事故が起きやすくなり、とりわけ高齢者は注意が必要だ。
安全な入浴のために浴室の環境や入浴習慣をいま一度見直し、対策を取りたい。

高齢者の入浴事故は増えている。
消費者庁が人口動態統計を基に、家庭の浴槽での溺死者数を集計したところ、2004年の2870人から14年には4866人に増加している。
約9割が65歳以上だ。
 
浴室や脱衣所も含めると死者数はさらに増える。
東京都健康長寿医療センター研究所の全国調査によると、年間で推計1万7000人が入浴に関連して亡くなっている。
圧倒的に高齢者が多く、その大半が寒い冬場に発生している、という。
 
原因の一つはヒートショック。
寒い脱衣所で服を脱ぎ体が冷え、すぐに熱い湯につかると血圧が急変し、脳出血脳梗塞心筋梗塞を引き起こし、意識を失うなどして死に至る危険もある。
持病のある高齢者は特に注意が必要となる。
 
対策として、浴室と脱衣所の室温を22~23度に保ち温度差を無くすことが重要だ。
脱衣所に暖房器を置くことに加え、入浴前に浴槽のふたを開け湯気やシャワーで浴室内を暖めておくことも有効。
 
冬に寒くなる地域では早めに入浴するのがいい。

気温が10度以下のときは冷え込む夜を避け、午後4~6時に入浴することが事故を防ぐ近道だ。
ただ、脱衣所、浴室が暖まっていない状態の一番風呂は避けた方が無難だ。
 
熱い湯を好む日本人が快適と感じる湯温は42度。
温泉や銭湯などでは42度にしているところも多い。
しかし、42度以上の高めの湯温だと、血圧、心拍数、エネルギー消費量などで体に強い影響がある。
発汗で血液の粘性が高まり、血栓(血の塊)ができやすくもなる。
さらに高温浴は、できてしまった血栓を溶かす防衛機能も低下させ、心筋梗塞脳梗塞を招く危険性がある。
39~41度の湯温で、長くても10~15分以内にとどめた方がいい。
 
特に最初の3分間が危険。
最初の3分間だけぬるま湯で半身浴をし、その後に追いだきで全身浴をすれば危険を回避できる。
 
水分補給も入浴に伴う事故防止のポイントだ。
特に高齢者は、湯温やのどの渇きに対する知覚が低下しているために注意が必要だ。
入浴前には軽く、入浴後はコップ1杯の水分補給をする。
 
周囲の配慮も欠かせない。
入浴事故で緊急搬送された高齢者をみると家族が知らない間に入っていた例が多い。
高齢者の入浴は必ず家族が確認し、できれば5~10分ごとに声がけをするといい。
ひとり暮らしの場合は、周囲に人がいる日帰り温泉や公衆浴場を利用するのも有効。
 
長年の習慣もあり、対策など気を使わずに入浴している高齢者は多い。
入浴事故は深酒してから入るなど極端に危険な入り方をした場合だけに起こるわけではない。
持病がない元気な人でも起こり得ることを再確認したい。

参考
日経新聞・夕刊 2016.10.12