『最適な抗がん剤は』 遺伝子検査

『最適な抗がん剤は』 遺伝子検査、数日で見極め

http://blog.goo.ne.jp/pineapplehank/e/66b4282ed83c3b9ed81ac7514fdc546c
『まず肺がんで』 近大・国立がん研
近畿大学国立がん研究センターは、患者にとって最も効果が高く副作用が少ない抗がん剤を素早く選び出す技術を開発した。

まず肺がん患者を対象にがん細胞の遺伝子を調べて見分ける。
従来は抗がん剤ごとに必要だった検査の回数が1回で済む。

検査にかかる時間が従来の1ヵ月以上から最短で数日で済み、治療の開始が早くなり患者の負担が減る。

企業と共同研究を進め、早ければ3年以内に診断薬として承認申請する。


最も効果の高い抗がん剤を遺伝子を手がかりに素早く選ぶ診断薬は、「コンパニオン診断薬」と呼ばれる。

これまでも抗がん剤はがんの性質を決める遺伝子によって効果が異なることは分かっていたが、遺伝子の検査に手間がかかった。

新技術は検査を簡単にして患者が素早く治療に入れるようにする。

近大のグループは、物質のわずかな重さを見分ける質量分析装置を使って検査の手間を大幅に省く方法を開発した。
肺がんの発生や悪化に関連する「EGFR」や「ALK」など約30個の遺伝子を手がかりに、薬の効き目を見分ける。
 
これまでの臨床試験(治験)などから、EGFRに変異があると分子標的薬のゲフィチニブ(商品名イレッサ)や工ルロチニブ(商品名タルセバ)が、ALKではクリゾチニブ(商品名ザーコリ)という肺がんの治療薬でそれぞれ効果が高まることが分かっている。
 
患者のがん組織をDNAまたはRNA(リボ核酸)を抽出し、変化した遺伝子の種類と部位を決める。
20以上の医療機関の約300人から採取した既存のがん組織を使い確認したところ、約94%で正しく検出できた。
 
一方、国立がん研究心ンター早期・探索臨床研究センターのグループはDNAやRNA
塩基配列を高速で読む次世代シーケンサーを活用した。
 
肺がんに強く間わる約130個の遺伝子を次世代シーケンサー塩基配列を読み、変化している遺伝子を特定する。
同センター東病院などに保管する組織などで確認しかところ95%以上で従来法と結果が一致した。
 
近大、国立がん研究センターの両者で互いに精度の確認なども進める計画。
両方法とも患者の検体の処理を始めてから、数日~1週間で結果が出て薬剤が決められる。
進行・再発の肺がんでは、抗がん剤を投与するまでにかかる時間をいかに短くできるかが課題だ。
従来は1回の検査で1つの遺伝子タイプの判定しかできず、治療開始までに1ヵ月程度かかる場合もある。
早く投与すれば治療効果の向上も期待される。


抗がん剤診断薬』 欧米が開発先行
複数の抗がん剤から患者に最も効果の高い薬を見極めて投与する方法は今後、抗がん剤治療の主流になるとみられる。

バイオテクノロジーの進歩で遺伝子の変異が簡単に素早く分かり、治療前に抗がん剤の効果が見極められるようになったからだ。

遺伝子の変化を標的にした分子標的薬の開発も加速し、新しい医薬品市場を築きつつある。

遺伝子変異による抗がん剤投与のきっかけとなったのが、肺がん治療薬のゲフィチニブ(商品名イレッサ)による問題。

当初は遺伝子検査せず投与したため重大な副作用例が相次いだ。
その後、特定の遺伝子変異を持つ患者であれば治療効果が高いことが分かり、現在では投与前の遺伝子検査が定着している。

遺伝子検査が普及するのに伴い、患者の負担を減らすニーズが高まってきた。
新しい診断薬を使えば短期間で投与する薬が決まるため、実用化すれば、がん治療の現場に急速に普及すると期待される。

コンパニオン診断薬の開発では欧米が先行。
米食品医薬品局(FDA)は抗がん剤との同時開発を推奨するほか、診断薬メーカーは大幅な開発費をかけて新製品を相次ぎ投入しているからだ。

日本で使う診断薬の多くは欧米企業製。
日本は大学などの研究レベルは高いが、診断薬メーカーがほとんどなく実用化する力が弱い。

新しい診断薬の実用化には欧米の企業や大学が持つ遺伝子の特許利用権の獲得など課題は多い。


『コンパニオン診断薬』とは
最適な治療薬を選ぶために、がん組織などを手がかりに調べる診断薬。

抗がん剤などとセットで使うため、英語で「対(つい)の一方」を意味するコンパニオンから、こう呼ばれる。

がん組織などに含まれる遺伝子やたんぱく質などを調べる。
薬の投与前にどの薬が効きやすいかを見分ける。

試薬のほか、検査装置やソフトウエアなど検査分析に必要なシステム全体をさすこともある。
肺がんや大腸がんなどで実用化している。

出典
日経新聞・朝刊 2013.9.10


<関連サイト>
がんの遺伝子検査とは
http://kouganzai.sub.jp/dna/dna-kensa.html
・がんに関係した遺伝子検査には三種類あります。

・一つめはその人にがん細胞が存在するリスクがあるかどうかの検査です。
現在,その検査技術は進歩し,血液検査によるDNA解析により,画像診断でも発見が困難な5mm以下のがんも発見できるようになっています。
さらに,この遺伝子解析と腫瘍マーカーを組み合わせることにより,超早期から,中期,晩期までのがんの存在リスクを調べることが可能になりました。
ただし,この検査は存在リスクという,いわば可能性の診断であり,がんと診断するためには,画像診断や組織細胞診断が必要となります。

・二つめは採取したがんの組織のDNAを解析し,その特徴やその悪性度を判断し,その後の治療方針に役立てようとするものです。
特に特定のがんの分子をターゲットとする分子標的治療薬においては,その効果の有無を事前に調べることができる検査でもあり,その診断を可能にする薬剤をコンパニオン診断薬と呼び,近年その重要性が高まってきています。

・三つめは遺伝的性質がある腫瘍の遺伝子の保有者かどうかの診断です。
これは悪性腫瘍に関係した遺伝子変異検査とは異なり,生殖細胞系列変異(生まれつき持っている病的な変異)を調べるものです。
たとえば,乳がん卵巣がん5~10%は,遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています。

抗がん剤の個別化治療に重要性を増す遺伝子検査
・これまで,抗がん剤治療では標準治療と呼ばれるマニュアルはあっても,その効果は個人差が大きく,投与してみないとわからないという問題がありました。
そのために,その患者に効果がない抗がん剤を不必要に投与してしまったり,個人差を考慮できずに必要以上の量を投与してしまうということもありました。
しかし最近では,薬剤標的となるタンパク質や薬剤代謝酵素を規定する遺伝子の変異や発現量を調べることが可能となり,特定の抗がん剤の有効性や副作用発現の個人差を把握して,個人個人に応じた投薬の種類や投薬量を決定することができるようになりました。
これが,最近話題になっているテーラーメイド医療(個別化医療)です。


・特にがん細胞の特定のタンパクを標的とする分子標的治療薬は,効果がある遺伝子型との関連が解明され,効果がある治療薬の選択が可能となってきました。

・たとえば,非小細胞肺がんに効果があるイレッサ(ゲフィチニブ)は,がんの増殖に関係するチロシンキナーゼという酵素を阻害する分子標的治療薬です。
多くのがんではこのチロシンキナーゼが活性化され,この酵素のはたらきによりがん細胞が増殖していきます。
この薬剤は日本では承認申請から半年という短期間で世界にさきがけて承認され,すぐに保険適応にもなっています。
しかし,実際に投与してみると,劇的に効果のある人もいれば,ほとんど効果のない人もいて,その原因が不明でした。
しかし,現在では研究が進み,標的とするEGFRチロシンキナーゼが遺伝子変異を起こしている患者が効果があることがわかり,事前に遺伝子検査を行うことで,事前に予測できるようになったのです。

コンパニオン診断薬の登場で個別化治療が推進
抗がん剤の有効性や副作用を予測するために,がんの遺伝子の変異の状態や標的分子の発現などを調べる医薬品のことを,「コンパニオン診断薬」といいます。

・近年,細胞の変異などを標的にする分子標的治療薬が開発され,事前に効果のあるがんを特定できるコンパニオン診断薬はこれからの治療になくてはならないものになり,国内でもすでにいくつかの診断薬が承認されています。

乳がん治療の分子標的薬として,卜ラスツズマブやラパチニブが開発されていますが,この診断薬では,投与前にこの治療薬の標的となるHER2という遺伝子が過剰に発現しているかどうかを調べるために用いられます。
トラスツズマブは胃がんにも適応拡大されたので,現在は胃がん患者にもこの診断薬が適用されています。

・大腸がんの分子標的治療薬のセツキシマブやハニツムマブは,K-RAS遺伝子が変異している患者には効果がなく,変異がない(野生型)場合に治療効果が高いことが分かり,その診断薬も承認されました。 

・2012年には,CCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の分子標的治療薬モガムリズマブ(ポテリジオ)とその診断薬(ポテリジオテスト)が同時に承認され,さらに同年3月にはALK陽性進行非小細胞肺がんに対する治療薬クリゾチニブの診断薬も承認されました。

・世界中の製薬会社で競うように新薬とコンパニオン診断薬の同時開発が行なわれており,これからはさらに抗がん剤の「個別化治療」が進み,その効果もより大きく,的確になっていくと予想されます。

検査の費用 詳細
http://www.twmu.ac.jp/IMG/genetic-diagnosis/cost/cost-detail.html
抗がん剤を使うときに、副作用や効果を予測するオーダーメイド医療の遺伝子検査に
ついては、以下の検査は保険収載されています。
対象の抗がん剤         遺伝子検査
イリノテカン         UGT1A1遺伝子
パニツムマブ         K-ras遺伝子
セツキシマブ K-ras遺伝子など


乳がん抗がん剤使うか判定 遺伝子検査で再発リスクを数値化 副作用の負担を軽減
http://apital.asahi.com/article/iryou/2014012100006.html
乳がんは、女性ホルモン受容体に反応するかどうか、HER2というたんぱく質の受容体に反応するかどうかにより、五つに分けられる。
検査の対象となるのは原則、リンパ節転移がなく、ホルモン陽性、HER2陰性の人。
乳がんの約6割はこれに該当する。
ホルモン療法は必ずするが、抗がん剤を使うかどうかは、がん細胞の悪性度などをもとに医師が判断する。

遺伝子検査で医療が変わる
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/05/0509.html


癌治療における遺伝子検査とは
 http://www.kenko-msnet.jp/dna-kensa-ganchiryou.html
 
抗がん剤の「効く」「効かない」を事前に判定
http://www.senshiniryo.net/column_a/19/