マダニ

マダニがウイルス媒介 新感染症、国内でも死者

ダニが媒介するウイルスが引き起こす新しい感染症重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に注目が集まっている。
1月に国内で初めて感染による死亡例が発表され、これまでに計5人の死亡が報告されている。
ただ、このウイルスは以前から日本に存在していたと考えられ、「感染が急拡大している可能性は低い」と専門家は指摘する。

■SFTSによる国内初の死亡報告例は山口県の成人女性。
厚生労働省が公表して以降、愛媛、宮崎、広島、長崎のいずれも成人男性がこのウイルス感染症で死亡したことが判明した。

■SFTSは中国で2009年ごろから感染例が見つかり、11年に原因ウイルスが特定できた。
これまで数百例の感染が報告された。
患者は血液中の血小板や白血球が減り、発熱や嘔吐、下痢などの症状が出る。
潜伏期間は6日~2週間で致死率は推定で10~30%という。

■日本で判明した感染者は、直近で海外渡航歴はなかった。
血液などから検出したウイルスを国立感染症研究所が調べたところ、中国で確認されたタイプとは遺伝子が一部異なっていた。
このため、日本に存在していたウイルスが原因になったと考えられる。

■SFTSのウイルスを媒介するとみられるのは、野山に生息し動物の血を吸うマダニ。
吸血前で3~4ミリメートルあり比較的大きい。
中国でウイルスが見つかったのもマダニの一種のフタトゲチマダニだ。

■屋内などにいるイエダニはマダニとは種類が異なり、ウイルスを媒介しない。

「急拡大はない」
■今後、感染の急拡大が起こるとは考えにくい、というのが専門家の共通した見方だ。

■これまで死因不明といわれた人の中に、この感染症が原因だった例がある可能性もある。

検査体制整備へ
厚生労働省はSFTSを日本脳炎狂犬病などと同じ「4類感染症」に指定。

■ダニのウイルス保有率や地域分布などが分かれば、対策を取りやすくなる。
現在は対症療法しかないが、予防ワクチンなどの開発につながる可能性もある。

■一般の人はどうすればよいのか。
最も大切なのはマダニにかまれる危険性を減らすことだ。
マダニは北海道以南の森林や草地などに広く生息し、春から秋にかけて活動する。
仕事やアウトドア活動などをする際は、長袖・長ズボンなど地肌が隠れる服装を心がける。
また、白やパステルカラーの服を着れば、ダニが付いた際に発見しやすい。
虫よけスプレーなどの効果は過信しないほうがよい。

■ダニはSFTSのほか、日本紅斑熱やライム病、ツツガムシ病などの感染源にもなる。
細菌性の病気は基本的に抗菌剤などで治療できるが、感染しないにこしたことはない。
ダニ対策をしっかりとることが感染症予防につながる。

■ダニが服に付いた場合、自宅に持ち込んでしまうこともある。
このため、帰宅したら着替えたり、シャワーを浴びたりしよう。
自分では見えない背中などは家族に見てもらうのもよい。

■ダニは痛みを和らげる効果の物質を出しながらかむため、痛みを感じにくい。
かんだ部分をがっちりと固めて1週間ほど血を吸い続けて小豆大になることもある。

■もしかまれてしまったら、自分で無理に取るのは避けよう。
ダニの一部が皮膚に残り、炎症が起こる可能性もあるためだ。
できるだけ早く医療機関を訪れ、取り除いてもらう。

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出典  日経新聞・夕刊 2013.3.8
版権  日経新聞


<私的コメント>
重症熱性血小板減少症候群SFTS)については、以下の厚労省のサイトで閲覧できます。