虫やヘビ キャンプやハイキングでの注意点

ハイキング、マウンテンバイク、キャンプなど、家族でアウトドアレジャーを楽しむ季節になった。
心得ておきたいのは、自然の中は都市部などと違って、ダニや昆虫、ヘビなどにより被害を受ける可能性があるということだ。
予防のための注意事項や対処法などにはどんなものがあるのだろうか。

■ツツガムシ病、毎年数人の死亡例も
現在の日本では「風土病」という言葉が聞かれなくなったが、近年、厚生労働省地方自治体は、野外でダニなどを媒介して感染するいくつかの風土病に対する注意を呼びかけている。

ツツガムシ病は、リケッチアという病原体が原因の病気で、ダニの仲間であるツツガムシの幼虫に刺されることによって感染する。
感染後、5日から14日後に39度以上の高熱が出て、ダニにかまれた跡(刺し口)が赤くかさぶた状に腫れ、全身に発疹が広がる。

かつては山形県秋田県新潟県の一部の河川敷で見られる風土病だったが、戦後、新しいタイプの病原体が広まり東日本を中心に全国で発生するようになった。

1999年に感染症法が施行されてからの患者数は、毎年500人前後で推移し、毎年数人の死亡例も報告されている。

また、関東以西の地域で年に100人前後の患者が報告されているのは、やはりリケッチアが病原体で、こちらはマダニが媒介する日本紅斑熱だ。ツツガムシ病より重症化しやすいと考えられている。

■草むらでは長そで、長ズボンが基本
獨協医科大学熱帯病寄生虫病室の千種雄一教授は「これらの病気は、リケッチアに有効なテトラサイクリン系抗菌薬を用いれば回復する。重症化を防ぐために重要なのは、熱や発疹が出たときに早期に受診すること。医師にアウトドア活動の内容などを正確に伝えることが大切だ」と話す。

感染を防ぐには、まず草むらで遊ぶときは長そで、長ズボンが基本。
そして肌の露出部などにダニよけ効果のある防虫スプレーをするといい。
また草むらに上着やタオルを放置すると、繊維の間にダニは好んで入り込む。持ち物は、テーブルなどの上に置きたい。

イメージ 1



野外で危険な生物に出くわすこともある。例えば、子どもが被害に遭いやすいのがマムシやヤマカガシなど毒ヘビだ。

■早い治療で重症化防げる
正確な統計はないが、年間、3千人ほどが治療を受けていると推測される。
日本蛇族学術研究所の堺淳主任研究員は「マムシは、河川敷、沢、水田などでよく見られる。
出くわしても襲ってくることはまれだが、子どもが水辺の草むらや落ち葉のたまった場所に手を入れてかまれるケースも多い」と説明する。

一瞬なので、何にかまれたか分からないことも多い。
堺主任研究員は「マムシであっても数時間内に治療を開始すれば重症化を防げる。野外で何かにかまれたときは、落ち着いて救急車などを呼び、経験豊富な医療機関で治療を受けるといい」と指摘する。

イメージ 2



昆虫ではハチとガ(蛾)の仲間に注意だ。

獨協医科大学熱帯病寄生虫病室の桐木雅史准教授は「ガの幼虫である毛虫には毒針を持つものがあるので素手で触らないこと」と注意を促す。

■毒針はこすらないで
チャドクガなどの毒ガの幼虫や成虫は、体表に長さ0.1ミリほどの毒針毛が無数にある。
ガのいる樹木を強くゆらすと、毒針毛が粉のように降ってくることもある。

桐木准教授は「手でこすると逆に針を差し込むことになり、強いかゆみをもたらす。あわてずに水で流したり、セロハンテープなどでそっとはぎ取ったりするといい」とアドバイスする。

衣服についた毒針毛は取り除きにくいが、50度程度の湯で洗濯したり、アイロンのスチームをかけたりすると効果的だ。

イメージ 3



またハチの攻撃を受けたら速足で数十メートル以上、その場をはなれるのがよい。手でハチを払おうとするのは逆効果だ。

都会で暮らしていると忘れがちな自然との上手なつきあい方。出かける前にチェックしておくことで、安全で楽しいアウトドアライフを満喫できる。

◇            ◇

海外旅行時も油断禁物
エコツーリングなど、豊かな自然を体験する海外旅行が増えている。
ただ、途上国などには日本にはないリスクがあることを認識して、行動に注意することが必要だ。

蚊が媒介するマラリアデング熱はよく知られているが、アフリカや東南アジアではマンソン住血吸虫症、メコン住血吸虫症などの病気がある。
住血吸虫は淡水に住む貝類が媒介する寄生虫で、人に感染すると肝臓などに重い障害をもたらす場合もある。

千種教授は「こうした国では、湖や川で泳いだり、素足やサンダルで水田や水辺を散策したりするのは危険だということを知ってほしい」と話す。
帰国後、体調に異変を感じたときには、海外渡航歴や行動などを詳しく医師に説明することで早期診断・治療につながることもある。 (ライター 荒川 直樹)

出典 日経プラスワン 2012.5.26
版権 日経新聞


イメージ 4

          ワイキキビーチの夕日  2012.3.18 17.59 撮影


読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログ)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
http://harrison-cecil-lobe.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログ)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)
があります。