快眠ホルモン「メラトニン」

快眠ホルモン「メラトニン」に注目 アンチエイジング睡眠術

睡眠に大きく関与するのがメラトニン
メラトニンは眠りを誘うだけでなく、酸化した体の修復や、糖や脂質代謝にも関わります。
しっかりメラトニンを分泌させる生活習慣を目指しましょう。

■眠っている間に体の酸化を修復
快眠を手に入れるには、自律神経の働きを整えるばかりでなく、メラトニンを十分に分泌させることも大切です。

メラトニンとは、睡眠を促すホルモンのこと。脳にある小指の先ほどの組織である松果体から分泌します。
メラトニンは、朝の光を浴びると約14時間後の夜から増え始め、夜中にピークがあり、再び朝の光を浴びると急激に低下します。このように、メラトニン血中濃度は、光によって制御されています」と杉田さん。

メラトニンは、体温を下げる作用があるため、体の中でメラトニンが増えると体温が下がり、体を眠りへと導きます。
一方、減少すると体温が上がり、体は活動モードになるのでスッキリと目覚めることができるのです。

メラトニンの働きは睡眠の制御だけではありません。
もう一つの大きな働きが抗酸化作用です。
メラトニンにより、眠っている間に体の中の酸化による損傷を抑えます。
しかも、メラトニンが抗酸化成分としてすぐれているのは、それ自体が直接、抗酸化成分として働くだけでなく、体の中にある活性酸素を消去する酵素の働きを高める作用も持っていて、抗酸化効果を発揮する点です。
メラトニンは、直接、間接のダブルで働き、体を老化へと進める酸化を抑えるアンチエイジングホルモンというわけです。

さらに、メラトニンは糖や脂質の代謝にも関わっていることが分かっています。
メラトニンは、肝細胞で脂質代謝を促す酵素の働きを上げ、血中のコレステロールを下げます。
だから、脂質代謝が落ちやすい40代50代女性では、その面でもメラトニンが重要な役割を果たすのです。

また、メラトニンには、インスリンの分泌を抑える作用もあります。
メラトニンの分泌が不規則になるシフトワーカー(交代勤務で働く人)では、糖尿病や肥満のリスクが高いという報告がありますが、その一因はメラトニンにあるのではないかと考えられています。

脂肪や糖の代謝がスムーズに行える体づくりのためにも、メラトニンがたっぷり出る「良い眠り」をとりたいものです。

さらに、魚のうろこを使った実験では、メラトニンが骨を壊す破骨細胞の働きを抑制します。
骨粗しょう症の予防にもメラトニンが役立つのではないかと考えられます。

とはいえ、悲しいことに、メラトニンの分泌量は加齢とともに減ることが分かっています。
しかも、自律神経の働きと同様に、夜更かしや不規則な現代風の生活習慣は、メラトニンの分泌をさらに減らす要因にもなります。
メラトニンは光を浴びると急激に減少するので、明るいところで夜中まで過ごしていると、メラトニンがいつまでも増えないからです。

では、しっかりと夜にメラトニンを増やすにはどうしたらいいのでしょうか? 
ずばり、規則正しい生活が一番の方法です。
メラトニンは、体の1日のリズムを整えるホルモンですが、逆に体内時計を整える生活をすると、本来分泌されるべきメラトニン量が、正しいリズムで出てくるからです。


体内時計を整えるために最も大切なのが朝の過ごし方。
脳の中にある体内時計をリセットする主時計も、体の隅々にある末梢時計も、「朝ですよ」という刺激を受けて、リセットのスイッチが入るためです。

そして、主時計のスイッチになるのが光です。
体のリズムを整えるなら、朝起きる時間、光を浴びる時間を一定にすることが重要です。
休日にいつもより遅く起きると、頭がボンヤリした経験がある人もいるはず。
これは、起床時間がずれたために、『プチ時差ボケ』が起こった状態です。
朝、一定の時間に起きて、光を浴びるようにしましょう。
ただし、光のリセット効果があるのは、午前10時ごろまで。
それ以降は効果がないので早起きも大切です。
睡眠時間や眠りにつく時間を無理に一定にしても、昼夜逆転の状態では意味がありません。

一方、末梢時計のスイッチになるのが朝食。
ですから、忙しいからといって朝食を抜くのはもってのほか。
しっかりとりましょう。

朝の次に大切なのが、夜の過ごし方です。
何度も説明しているように、夜の光は眠りの大敵。
少なくとも寝る1時間前には部屋の明かりを落とし、テレビやパソコンなどの光刺激を受けるものの使用は避けましょう。

また、夕方に運動するのも快眠のためのポイントです。
運動で体温と交感神経の働きをいったん上げると、入眠のための放熱や、副交感神経への切り替えがしやすいからです。

規則正しい生活習慣で、快眠を手に入れ、上手に疲労を解消しましょう。 (ライター 武田京子)

出典 日経ヘルス プルミエ  2011.6.17(一部改変)
版権 日経新聞


<私的コメント>
一昨年(2010年)4月に武田薬品工業から睡眠導入剤ロゼレム錠8mg(一般名ラメルテオン)が発売されました。
もちろん医師の処方が必要な薬剤ですが、習慣性や耐性を生じにくく、体内リズムを調整する作用を持つ睡眠導入剤です。
メラトニン受容体を刺激する「日本発の睡眠導入剤」です。




メラトニン受容体アゴニスト「ロゼレム」の話:六号通り診療所所長のブログ ...
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