女性ホルモンと付き合う

月経や排卵の時期がわかる基礎体温の測定は、妊娠や避妊のために行うと思われがちです。
けれど、女性の体や心の状態を見通す手がかりにもなります。

    ◇

基礎体温は、食事や運動などをせず安静な状態の体温をさす。
朝起きて体を動かす前に、基礎体温計を約5分間舌の下に入れて、その値を記録する、というのが一般的な方法だ。

だが「朝は忙しい」「毎日の記録が面倒」と挫折する人も少なくない。
最近は数十秒の検温で5分後の値を予測し、データをパソコンで管理できる商品もある。
それでもまだおっくうという人は、基礎体温計と同様の性能がある衣服内温度計を使うといい。
夜、パジャマのウエストにつけて眠るだけだ。

そうやってまずは約1カ月間、記録を続けると――。

健康な人の場合、低温期と高温期がそれぞれ2週間ほど続くグラフが出来上がる=
低温期の前半に月経、高温期に移るころに排卵があり、高温期から低温期に入ると再び月経が始まる。
この周期をおおむね25~38日間隔で繰り返す。
体温が変化するのは、女性ホルモン、プロゲステロンに体温を上げる働きがあるからだ。

高温期が10日未満のときはプロゲステロンの分泌が不十分なため妊娠しづらい。
定期的な出血はあるが、高温期がない人は排卵していない状態だという。
(私的コメント;「無排卵性月経」)
異常があっても、生活習慣の改善や治療で正常な状態に戻すことができる。
まずは今の自分の状態を知ることが重要だ。

イメージ 1



    ◇

別の女性ホルモン、エストロゲンは月経後に増加し、コラーゲンの合成を促す作用がある。
この時期は肌の調子がいいだけでなく、体や精神状態も安定するので、仕事や遊びなど積極的に活動するのに適している。

逆に、妊娠の維持に必要なプロゲステロンが増え始めて高温期に入ると、皮脂の分泌が増える。
さらに便秘になる人や、いらいらしたり、ひどく落ち込んだりする人もいる。

女性の体や心の状態は1カ月単位で変わる。
基礎体温でその変化を予測し、上手に付き合ってほしい。
例えば、調子のいい時期に仕事をまとめて仕上げ、不安定な時期は残業をせずに、体を休めるようにするといい。
いらいらしやすい時期という自覚があれば、他人への接し方も変わりそうだ。

最近、女性の体温の低さが気にかかる。
36度を下回る人も珍しくない。

衣服内温度計のメーカー「キューオーエル」(本社・東京)が2008年~09年に、約3万6千人の口中の温度を調べた。
平均36.41度で、50年前に比べ約0.3度低くなっていた。

冷えは万病のもと。
こういった人は適度な運動や体を冷やさない食事、湯船につかることを心がけるとよい。(南宏美)

◆インフォメーション
医師らでつくる「基礎体温計測推進研究会」のサイト
http://kisotaion.org
は、月経周期や体調など、基礎体温からわかることをイラスト入りでわかりやすく説明。

イメージ 2


京都・平安神宮 2012.4.15 14:30 撮影


読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログ)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログ)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)
があります。