機能性胃腸症

機能性胃腸症は「機能性ディスペプシア」とも呼ばれ、胃もたれや胸焼けなどの症状があるのに、潰瘍やがんなど器質的な病気がないのが特徴。
検査しても異常がないため、「思い込み」などと片付けられてしまうこともあるようです。
安倍元総理も機能性胃腸症と一部のメディアでは報道されていましたが、潰瘍性大腸炎という説もありましたね。

その胃もたれ・胃の痛み 機能性胃腸症の疑いも ストレス・早食いなど悪影響

最近どうも胃の調子が悪い。
食後に胃がもたれたり、みぞおちが焼ける感じがしたりする。
こんな症状を覚えたら、「機能性胃腸症」かもしれない。患者が多い病気の一つで、ストレスが関係しているといわれている。
ストレスを解消し、生活習慣を見直すことが有効だ。

■日本人の8人に1人が患者
機能性胃腸症は聞き慣れない名前だが、実は日本人の8人に1人が患者とする見方もあるほど、ありふれた病気だ。
昔は「胃下垂」や「胃アトニー」などと呼ばれ、最近までは「神経性胃炎」「慢性胃炎」などと診断されていた。

従来は内視鏡などで調べても潰瘍やがんが見つからないため、「気のせい」とされてしまうケースもあったが、近年は医師の間でも認知度が上がっているという。
医学的にも、胃の粘膜に異常がないのに炎症があることを示す「胃炎」と呼ぶのは正確ではないなどの理由から、機能性胃腸症と呼ばれるようになった。

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典型的な症状は食後の胃のもたれや痛み、みぞおちの痛みなどだ。
これらが半年以上続き、さらに直近の3カ月間は胃もたれなどが週に数回、みぞおちの痛みや焼ける感じが週に1回以上あれば、この病気の疑いがある。

子供から高齢者まで年齢や性別を問わずに発症するが、特に多いのが働き盛りのサラリーマンなど。
最近では親の介護を抱える人たちでも発症者が増えているという。

この病気はストレスが深く関係していると考えられている。
杏林大学医学部の高橋信一教授は「不安やストレス、過労などで自律神経のバランスが崩れたりすると、胃の機能にも影響が出てくる。それがもたれや痛みを招いている可能性が高い」と解説する。

胃は食べ物を胃酸で消化し、徐々に十二指腸に送り込む機能を持っている。
ところがストレスなどを感じて、胃の動きが悪くなると、食べ物と胃酸が胃の出口付近にたまり、一緒に十二指腸に流れ込んでしまう。
このときの胃酸などの刺激が、胃もたれやみぞおちの痛みのもとになる。

食事をするとすぐにおなかがいっぱいになると訴える例もある。
これは胃の動きが鈍くなっているため、胃に食べ物が入っても、胃の上部が拡張せずに満腹と感じてしまうのだという。
さらに、十二指腸や胃が知覚過敏になっている場合は、胃酸による比較的弱い刺激でも痛みや焼ける感じなどが表れる。


■早めの受診が大事
この病気で重要なのは他の病気との識別。慶応義塾大学の鈴木秀和准教授は「まずは医療機関を受診し、胃がん胃潰瘍などがあるか内視鏡で調べることが大事だ」と話す。
胃腸の不調には重篤な病気が隠れていることがあるためだ。
また、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染がないかも検査する。

医師が内視鏡でみても機能性胃腸症と見分けが付けにくい病気もある。
その代表例が逆流性食道炎。胃酸が逆流し、食道が炎症を起こす病気で、胸焼けや吐き気を伴う。
このほか、膵臓の機能が低下して症状が出ていることもまれにある。

ただ、胃痛がひどく自分で「胃がんかもしれない」と思い込んで悲観していた人が、医療機関を受診し、がんではないと診断されたとたんに、症状が消えた例もあったという。
いずれにせよ一人で悩まずに、早めに消化器内科などを受診しよう。

機能性胃腸症と診断された場合は、投薬や食事の改善などで病気の回復を目指す。
症状に合わせて選択する薬は異なり、胃酸が多く出ていれば過剰な分泌を抑える薬を服用する。
胃の動きが鈍っていれば、動きを活発にさせる薬を飲むのが一般的。
人によっては漢方薬が有効な例もある。また、心理的な要因が強い患者には、抗うつ薬などを処方したりする。

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■食習慣の改善も効果的
投薬だけでなく、食習慣を改善したり、食べ物の種類を変えたりするのも効果的だ。
例えば、早食いが習慣になっているケース。食べ物を十分にかまずにのみ込んでしまうと、胃に入っても1日ほど消化されずに残ることがある。
ゆっくりよくかんでからのみ込めば、2~3時間で胃を通過し、順調に消化・吸収されるようになるという。

また、肉など脂っこいものや甘すぎるもの、塩辛いもの、刺激が強い香辛料など胃に負担がかかる食べ物を控え、酒の飲み過ぎや喫煙もやめよう。

慶大の鈴木准教授は「この病気は国際線の客室乗務員やタクシー運転手など、勤務時間が不規則になりがちな職種でよくみられる」と指摘する。
生活が乱れると、自律神経のバランスが崩れ、胃にも負担がかかって動きが鈍ってしまう。
なるべく決まった時間に食事を取るとともに、睡眠も十分確保するなど規則正しい生活を送ることが大切だ。
自分なりのストレス解消法も見つけたい。

薬物治療や生活改善に取り組めば「大半の患者は症状がよくなる」と専門家は口をそろえる。
胃の調子が悪ければ、せっかくのおいしい食事も満足感が得られない。
おかしいと思ったら早めに受診するとともに、今の生活を見直すきっかけにしてほしい。 (草塩拓郎)

出典 日経新聞・夕刊 2012.4.6
版権 日経新聞


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京都・平安神宮
2012.4.15撮影



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