糖尿病と低温やけど

糖尿病患者は特に気をつけたい低温やけど

Yさん(仮名、78)は糖尿病で通院している。
といっても最近は不定期だ。
ひとり暮らしのため、寒い季節はとくにつらい。
夜、足が冷えてくると眠れない。
そこで、湯たんぽを使うようになった。
ある朝、湯たんぽが熱すぎたのか、右足の皮膚が少しひりひりする感覚で目が覚めた。
よく見ると、その部分だけが赤くなっていた。

大したことはないと思っていたが、2,3日すると、なぜか、足の皮膚の赤みは増していた。
表面の皮が少しむけたと思ったら、急速に赤い範囲が広がった。

横田さんには、自分の足であるにもかかわらず、赤い部分が自分の足ではないように感じられた。
しばらくすると、発熱するようになり一人では動けなくなった。
結局、具合が悪くなって入院することになった。
現在でも、重症治療室で治療中だ。

湯たんぽやあんかによる熱傷は低温熱傷と呼び、みかけより組織の傷みがひどいことが多い。
特に、糖尿病患者では痛みや熱に対する感覚がにぶっていることが多く、こうしたタイプの熱傷になりやすい。

糖尿病になると細菌に対する抵抗力が落ちているので、傷んだところが簡単に感染してしまう。
治療が不十分だと、感染が進展しやすく、足を切断することにもなる。

糖尿病は、全身の病気であり、総合的な自己管理が必要な病気だ。
特に食事、運動、そして薬物の療法は、糖尿病のコントロールの柱だ。
しかし、それとともに、皮膚や足を清潔にして大事にするといったきめ細かな健康管理も忘れてはならない。
こたつやカイロ、お灸などにも注意が必要だ。
湯たんぽは足を直接温めるのではなく、布団の中を温めるために使用するのが無難といえる。
近畿大学病院救急診療部・平出 敦 教授)

出典 日経新聞・Web刊 2011.3.1
版権 日経新聞



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