ひどい生理痛には低用量ピルも

ひどい月経痛、低用量ピルも視野に上手につき合って

Kさん(仮名、31)は、この2~3年、月経痛が次第にひどくなり、市販の鎮痛剤を服用しても効き目がない。
最近では、仕事に差し障りもでるようになった。
産婦人科を受診しても、とくに「異常はありません」といわれる。
何とかならないかと、別の産婦人科を受診してみた。

女性にとって月経は性機能のバロメーターでとても重要だが、時として苦痛を伴い、仕事、学業などに影響がでることもある。

月経痛の原因には、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などがあるが、思春期、更年期、軽い卵巣機能不全でも起こり、あるいは、とくに器質的な疾患がなくても起こりうる。

原因が特定されればそれに対するきちんとした治療も重要だが、原因が特定されない場合は当面の対応として鎮痛が選択される。

月経痛は無理に我慢をする必要はなく、市販の鎮痛剤から躊躇なく服用を開始してよい。
月経痛の場合、短期的服用なので効果が減弱することもない。
効果がなければそれより強い薬剤を医師に処方してもらおう。月経痛が始まった場合、我慢してから服用するよりも軽いうちから服用する方が服用量が少なくて済む。

鎮痛剤が効かないか、鎮痛剤の副作用による胃腸症状(むかつき、胃痛など)のため服用できない場合は、次の手として避妊に使う低用量ピルを用いる。
低用量ピルを使いだして月経が楽になったという人は多い。
ピルには月経調整効果、月経量調節効果も期待できる。低用量ピルは経口避妊薬なので自費だが、最近、保険適応のある低用量エストロゲン‐プロゲスチン製剤もでている。

また、重要な仕事あるいは大事なイベント(結婚式、入学試験など)で月経にあたりたくない場合は月経日の移動を考えてよい。旅行のための月経日変更が実施される現在、重要な仕事や試験のために月経日を移動することは当然の選択肢の一つだ。
月経日変更は月経開始7日以内だと予定月経の前倒しができるが、それ以降だと先延ばしになる。
長い旅行や仕事の場合、前倒しの方が楽だ。

月経もいささか厄介なものといえなくはないが、女性の性機能が順調であることを示している証拠と前向きのとらえ、症状を調整し上手に付き合うことも大切だ。

Kさんは、新しく足を運んだ産婦人科で医師に鎮痛剤を処方してもらったが、低用量ピルを使って月経痛を軽減することも考えている。
(田坂クリニック婦人科・内科院長 田坂 慶一)
出典 日経新聞 Web刊 2010.12.21
版権 日経新聞

<私的コメント>
私のような内科医にとって、産婦人科はもっとも縁遠い診療科です。
しかし、開業医としてホームドクターを目指す限りは、一定の知識と興味を持ち続けなければなりません。
以前、激しい腹痛で来院された10代の女性で卵巣嚢腫の茎捻転の症例がありました。
すぐに病院へ紹介したため、整復だけで回復しました。
そのために卵巣摘出に至らなかったため本人および母親に感謝されたこともありました。
また、女性の貧血には子宮筋腫などの産婦人科疾患をまずは疑う必要があります。
最近、他の内科で貧血の治療をして貰っているという患者さんが風邪で来院されました。
貧血の原因追及の検査は一切やっていないとのこと。
貧血の治療をすれば貧血が改善するのは当然です。
原因追及を怠れば、原因となっている病気が隠蔽されてしまい結果的に患者さんに不幸な結果を招くこともありえます。
ホームドクターには、是非広い視野で病気を診て貰える「内科医」を選んで下さい。


きょうの記事では「月経」という言葉が使われています。
当院のナースに聞いてみましたが、「生理」という言葉の方がいいのではという意見でした。
私もそう思います。
皆さんはいかがでしょうか。
別の言い方もあるのでしょうか。



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