妊娠中のインフルエンザワクチン接種

Aさん(仮名、32)は妊娠3カ月。
すでに2歳の子供がいる。
昨年、新型インフルエンザが大流行したため、今年はワクチン接種を考えているが、妊娠への影響が心配で迷っている。

インフルエンザは毎冬のように流行し、特に小児や高齢者は死亡率が高く、これらの人々を対象にワクチン接種が勧められている。
妊婦においても有益性が高いと考えられている。

またワクチンは症状の重症化を軽減するので、仕事や入学試験などへの影響を考えて自発的に受ける人も多い。
新型インフルエンザワクチンについて、昨年度は不明なことが多く、ワクチンの供給量も限られていたので厳密なコントロールの下、リスクの大きい集団(妊婦、有病者、小児、高齢者など)から優先的に接種された。
今年は十分な供給量が確保されている。

今年のワクチンは従来のインフルエンザワクチンの一部に加えて新型インフルエンザに対するものも含まれる。
インフルエンザワクチンは、病原性をなくした不活化ワクチンで妊娠全期間にわたって母児に対して安全であることがわかっている。
最近の報告では妊婦に対するインフルエンザワクチン接種は症状の重症化を抑制するだけでなく、新生児にも抗体が作られていることが報告されている。 
ただし、日本ではワクチン添付文書に「妊婦に対しては接種しないことを原則に、有益性が危険性を上回る場合に接種、なお小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。」と記載してある。

諸外国の公的広報活動と若干の温度差がある。
欧米では、妊婦のインフルエンザ罹患では非妊婦に比べて重症化と合併症のリスクが高いこと、新生児にもいい影響があること、新生児や周りの子供にうつる可能性があることなどの理由から、接種のメリットの方が大きいと考えられている。

2010年の米国の公的機関の広報でもインフルエンザのシーズンに分娩あるいは授乳する妊婦は積極的にワクチン接種を受けることを勧めている。

ワクチンは接種して効果が出るまで2週間かかり、2~3カ月持続する。

そろそろ接種を受ける方がよいだろう。

           (田坂クリニック産婦人科・内科院長 田坂慶一)

出典 日経新聞 Web刊 2010.10.21
版権 日経新聞


<2010.11.25 追加>

妊婦への抗ウイルス薬“影響なし

妊娠中の女性がタミフルなどの抗ウイルス薬を服用しても、現段階では生まれた子どもなどへの影響は確認されないとする調査結果を、日本産科婦人科学会がまとめました。
日本産科婦人科学会は、タミフルリレンザといった抗ウイルス薬が、妊婦や生まれてくる子どもに何らかの影響を及ぼすかどうか、全国の医療機関を通じて調べました。
去年10月からの1年間に薬を服用し、その後出産した妊婦163人のデータについて分析した結果、胎児が薬の影響を受けやすく特に注意が必要な妊娠4週から7週に服用していたのは14人でした。
このうち2人が流産していましたが、学会では、流産率にすると、妊婦全体と同じ程度だとしています。さらに、妊娠16週までの妊娠初期に服用していた34人を加えても、生まれた子どもに心臓などの異常は見つかっていないということです。
こうしたことから、学会では、現段階では生まれた子どもなどへの影響は確認されないとして、今後も、インフルエンザに感染した妊婦は速やかに抗ウイルス薬を服用するよう呼びかけるとともに、データの収集を続けることにしています。
調査をまとめた富山大学の齋藤滋教授は「インフルエンザはことしも流行が懸念されるが、重症化を防ぐことが重要なので、感染した場合は48時間以内に抗ウイルス薬を服用してほしい」と話しています。
http://www.nhk.or.jp/news/html/20101121/t10015366791000.html




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