今年のインフルエンザワクチンと治療薬

ワクチン・治療薬──インフル 今年の備え方

もうすぐインフルエンザが流行する季節がやってくる。
昨年広まった新型インフルエンザに加え、今年は季節性インフルエンザの流行も予想されている。
10月1日からはワクチンの接種が始まった。
新しい抗ウイルス薬も増え、治療の選択肢も広がった。

昨年は主に新型インフルエンザがはやったが、今年は新型に加え海外ではA香港型も出ており、大流行の可能性がある。
香港型はここ何年も大きな流行がなく、免疫を持つ人が少ない。予防接種などの対策をとった方がよさそうだ。

インフルエンザワクチンはインフルエンザにかかりにくくし、もしかかったとしても重症になるのを防ぐ効果がある。
1回の接種(13歳未満は2回)で、新型インフルエンザと季節性(A香港型とB型)インフルエンザの3種類のタイプを予防する3価ワクチンの接種が今年の主流だ。


中高生にも推奨
高齢者や乳幼児、糖尿病などの人は、かかったときに重症になることがあるので受けた方がよい。
子どもは学校などで感染する機会が多い。
今年は中学生や高校生にも予防接種を受けてほしい。
昨年の新型インフルエンザの流行時期には、小学生に比べて中高生は予防接種を受けた人が少なかった。さらに感染者も少なかったので、免疫を持たない人が多いと考えられるからだ。

昨年は医療機関でワクチンが不足するなどの混乱があったが、今年は大丈夫だ。
国内で約5800万回分のワクチンを生産する予定で、接種の優先順位はなく誰でも受けられる。

昨年予防接種を受けた人も新たに接種を受けた方がよい。
昨年新型インフルエンザのワクチンを接種した人のうち、予防に十分な免疫力がある人は4カ月後では半減していたというデータもある。
時間がたつにつれてワクチンの効果が低下していく。

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効果までに2週間
予防接種を受けるときは、住んでいる市町村などが国と契約をした医療機関で予約をとる。
医療機関は市町村のホームページや役所に問い合わせればわかる。
費用は市町村ごとに決まっており、1回目は3600円、2回は2550円が多い。
また高齢者や小児、低所得者に対しては接種費用を補助している市町村もある。
接種後約2週間で効果が出るので、流行が始まる前に打っておいた方がよさそうだ。

インフルエンザにかかっても、早期に治療すればほとんどがよくなる。
新型インフルエンザの流行では、日本は欧米などよりも重症者や死亡者が極端に少なかったが、早期に治療薬を使ったためと治療薬の効果を指摘する海外の研究論文が相次いでいる。

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タミフルリレンザが主流だったが、今年に入り相次いで新薬が登場し、選択肢が広がった。

1月に登場したラピアクタは1回の点滴ですみ、薬の服用が難しい重症者に向いている。
肺炎や脳症を起こした重症者にも効果があるとみられ、まず入院患者の使用が中心になる。

今月内に発売されるイナビルは専用の器具を使い吸入するタイプで、リレンザと使い方が似ている。
1回で1週間効果が続くが、幼児は吸引しにくいので、主に小学生以上が適用対象になるとみられる。
(長倉克枝)

出典 日経新聞・夕刊 2010.10.15(一部改変)
版権 日経新聞


<関連サイト>
インフルエンザワクチン 油断禁物 若い人も接種を
http://sankei.jp.msn.com/life/body/101014/bdy1010141424000-n1.htm
(以下、要点を抜粋)
■接種しない場合より、健康な成人で80%程度の感染を抑え、かかったとしても最小限に抑える効果がある。
特に新型インフルエンザの場合、重篤な疾患がない人、健康な若い人も亡くなっており、油断できない。できるだけ接種した方がよい。(北里大学薬学部 平山武司専任講師)
■1歳未満の赤ちゃんへの接種については、厚労省は「免疫をつけることが難しいため、お勧めしていない」としている。
■ 昨シーズンに新型インフルエンザのワクチンを接種した人も改めて接種することが望まれる。
平山講師は「効き目は4週間後をピークに減っていき、5、6カ月ほど。また、季節性インフルエンザのワクチンは年ごとに流行が予想される株を接種している」という。
■接種後は入浴を含め、普通に生活してよい。ただ、「ワクチンを接種したからインフルエンザに絶対かからない、というのは誤解。



インフルエンザワクチンについて、もっと詳しく知りたいという方は専門的になりますが以下のサイトをご覧下さい。

インフルエンザワクチンの作用メカニズム [感染症]
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/archive/201010-1


<2010.11.29 記事を追加しました>
インフル薬市場、競争過熱 日本勢参入し海外薬に対抗
インフルエンザの本格的な流行期を前に、治療薬を巡る製薬各社の販売競争が過熱している。
タミフルリレンザなど輸入薬が主流だった国内市場に今年、塩野義製薬第一三共の日本勢が参入したためだ。
4社の競合で、全体の供給計画は最大で2700万人分を超える規模まで拡大。
業界では供給過剰を懸念する声も出始めている。

「小児科医や内科医に第一に選ばれる治療薬を目指す」

第一三共の木伏良一・常務執行役員は25日の会見で、10月から販売を始めたインフルエンザ治療薬「イナビル」にかける意気込みを強調した。
原料調達から製造・販売までを自前で行う「純国産」の治療薬は、日本で初めてだ。

リレンザタミフルは1日2回、ともに5日間服用する必要がある。
一方、イナビルは専用の器具で1日1回、粉末を吸い込むだけで効果が長持ちする。

第一三共は今季、約2400人の専門職を投入し、病院になじみの薄いイナビルの売り込み攻勢をかける。
来年3月末までに最大400万人分を供給できる生産計画をたてており、初年度だけで64億円の売り上げを見込む。
また、豪州の製薬メーカー・バイオタとも提携、世界市場にも乗り出す計画だ。

塩野義製薬が今年1月から販売している「ラピアクタ」は、有効成分を輸入し、国内で薬として製造している。
注射や点滴に使う薬で、10月からは子どもにも使えるようになった。
担当者は「飲み薬や吸入薬が使いにくい重症患者や高齢者も使いやすいのが特徴。
医師が管理するので飲み忘れもない」と話す。

各社が国産にこだわるのは、昨年の新型インフルエンザの大流行で治療薬が不足した苦い経験がある。
国産であれば、製薬会社は大流行で急な増産が必要になった場合でも素早く対応できる。
国内では中堅メーカーの富山化学工業も国産薬の開発中だ。

ただ、相次ぐ参入で、今季の4社の供給量は最大2730万人分に達している。
今季のインフルエンザの流行が小規模に終われば、供給過剰となり、各社の在庫が積み上がる恐れもある。 (杉本崇、福山崇)

出典 asahi.com 2010.11.27
版権 朝日新聞社




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橋本八百二 『岩手山』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/hashimotoyaoji/1748.html
「政治は集約すると調和です。絵画も色と形の調和だし、人間社会だって調和の世界ですよ」は氏の言葉。



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