足だって動脈硬化になる!

足だって動脈硬化になる! 閉塞性動脈硬化

高血糖、高LDLコレステロール、高血圧の三重苦を抱えているMさん、55歳。
最近、足先が冷えて歩行時にふくらはぎがつるようになった──。

生活習慣病心筋梗塞脳卒中の原因になるのはもはや一般常識だが、もう一つ閉塞性動脈硬化症(PAD)という病気をご存知だろうか。
要は足の動脈硬化で、下肢の血流が滞り、足のしびれや冷え、痛みが起こる。
病状が進むにつれ、一定の距離を歩くと、ふくらはぎや太もも、おしりの痛みや「足がつった感じ」が出て、しばらく休むと症状が消える「間欠性跛行」が生じる。
さらに進行すると血流が完全に滞り、足指やかかとに潰瘍ができ、壊死してしまう。

PADの有病率は推定3~10%。
間欠性跛行まで進行した患者は30~40代で1%前後だが、70歳以上では6~7%に及ぶ。
下肢に異変が集中するとはいえ全身の動脈硬化の一症状なので、PADと心筋梗塞脳卒中が合併する危険性はきわめて高い。
特に潰瘍、壊死まで進むと生命予後が非常に悪く、1年後に25%の患者が亡くなるというデータがあるほどだ。

PAD発症の危険因子は、糖尿病、喫煙、脂質異常症、高血圧、血管年齢、実年齢、そして男性である。
特に糖尿病では、PADの跛行患者が潰瘍や壊疽になる危険度が4倍に、喫煙者は2倍に跳ね上がる。
糖尿病の方は禁煙したうえで日々、足の状態を観察してほしい。
一つ注意が必要なのは、PADの主症状の間欠性跛行は脊柱管狭窄症という整形外科領域の疾患でも起こりうること。
初診時に内科、整形外科のどちらを受診するにせよ、問診時に説明がない場合ははっきり質問しよう。

PADと確定した後は、生活習慣病の改善とともに、ジョギングなどの運動療法と動脈にできやすい血栓を予防する薬物療法を行う。
間欠性跛行の段階なら7~8割はこの2本立てでコントロールできる。
それ以上進行してしまった場合は詰まった血管を迂回し、血行を再建するバイパス手術が必要だ。

最近は全身麻酔によるバイパス手術に替わり、血管内に金属網製のチューブ(ステント)を入れ、血管を再開通させる方法が広がりつつある。
局所麻酔であり、手術創が数センチと小さく回復が早いため、身体の負担が少ない利点がある。
骨盤内から膝上までの太い動脈がよい適応で、成功率はバイパス手術に匹敵する。
最前線では細胞移植や遺伝子治療による血管新生療法の治験も進行中だ。数年後には臨床応用も期待できる。

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監修 古森公浩(名古屋大学大学院医学研究科血管外科分野教授)


出典 週刊ダイヤモンド 2010.10.18
版権 ダイヤモンド社




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