血管が硬くなる

血管が硬くなる 心血管病 高まる発症リスク

若い時にはしなやかな血管が、年齢を重ねるとともに硬くなる。
同じ年齢の人でも、血管の硬さに個人差は出てくる。
硬くなった人は脳卒中などのリスクが大幅に増えるという調査結果がある。

調べたのは、心臓の拍動で血液が全身に送られる時に起きる脈の波(脈波)。
やわらかい血管では血管の壁を伸縮させながらゆっくり伝わり、硬くなってくると脈波は速く伝わるため、血管の硬さがわかるという。
 
検査する装置では、ベッドに横になった患者の両上腕と両足首の計4カ所にセンサーをつける。
脈波は心臓に近い上腕には速く、遠い足首には少し遅れて伝わるので、それぞれに到達する時間の差を測ることで、脈波の速度がわかる「PWV検査」という方法。
速ければ血管が硬いことを示す。

測った速度を年齢別でみると、20~30代では個人差が小さいが、60代、70代などになると差が大きくなる。
40歳以上の約3千人を調べた日本の研究では、最も速度が遅い(血管がやわらかい)グループに比べ、最も速い(血管が硬い)グループは脳卒中などの心血管病発症リスクが約12倍になっていたという。
 
血管が硬くても、必ずしも自覚症状が出るわけではない。
この検査は、音もなく忍び寄る体の危険を知らせてくれる。

<私的コメント>
最近では診療所レベルでも多くの医療機関で採用されています。
主だった2つのメーカー(PWVとCAVI)から発売されていますが、一般的にはCAVIの方が正確といわれています。
PWVでは血圧の影響が十分排除されていません。
当院ではCAVIを採用しています。

血管を守るために、
①血圧を毎朝測る
②体重を毎朝測る
③食事は野菜から先にたくさん食べる
という「三つの習慣」が大切となる。

血管が硬くなる要因として高血圧や糖尿病、LDLコレステロールが高い脂質異常症、ストレスなどがかかわっているとされる。
硬くなった血管を若返らせることは難しくても、健康に気をつけて努力すれば血管が硬くなることを遅らせることができる。
 
動脈硬化には動脈が狭くなって詰まる側面と、動脈壁が硬くなる側面がある。
かつては詰まりばかりが注目されたが、近年は硬さの問題がわかってきたる。
 
さらに動脈硬化が進むと、足への血流が悪くなる「閉塞性動脈硬化症」になることがある。
一定距離を歩くとふくらはぎなどが痛くなり、少し休むとまた歩けるという症状が出たらこの疑いがある。
<私的コメント>
専門用語で「間欠性跛行(はこう)」といいます。

閉塞性動脈硬化症は命にかかわる病気として受け止めたい。
若いうちから運動、栄養、禁煙などの生活習慣を見直し、しなやかな血管を保っておくことが大切だ。

もしかして血管が硬くなっているかも?
① ⬜︎ 高血圧と診断されている
② ⬜︎ 最高血圧最低血圧の差が55mmHg以上ある
③ ⬜︎ 左腕と右腕の最高血圧の左右差が15mmHg以上ある
④ ⬜︎ 糖尿病か、その予備群と言われている
⑤ ⬜︎ 脂賛異常症と言われている
⑥ ⬜︎ たばこを吸っている
⑦ ⬜︎ 65歳以上である
⑧ ⬜︎ しばらく歩くと太ももやふくらはぎが痛くなり、少し休むとまた歩ける

①②動脈が硬くなると、最高血圧(上の血圧)が高くなり、最低血圧(下の血圧)が低くなり、その差(脈圧)が大きくなります。
③左右差が大きいと上肢の動脈硬化が進んでいる可能性があります。
ただし、1回目は高めになることがあるので、左・右・左と測って、あとの2回を比べます。
④⑤⑥⑦動脈硬化のリスクを高める要因と考えられています。
⑧足の動脈硬化が進み、血管が詰まり始めている可能性のあるな症状です。

出典 
朝日新聞・夕刊 2016.2.29(一部改変)