妊産婦の高血圧  「妊娠高血圧症候群」

妊産婦の高血圧 自覚しにくく、母子の命に直結

妊婦検診で必ず調べる血圧。
妊娠にともなう高血圧は、お母さんや赤ちゃんに重大な影響を与える可能性がある。
一昔前は「妊娠中毒症」とも呼ばれていたが、いまは「妊娠高血圧症候群」という病名で知られる。
妊産婦の20人に1人がなるとされ、妊娠中や出産後に気をつけないといけない病気だ。
 
妊娠高血圧症候群は妊娠20週から出産後12週までに高血圧になることや高血圧とたんぱく尿になること。
妊娠中に別の原因の高血圧が見つかった場合や、妊娠前から別の原因で高血圧だった場合は含まない。
 
母体と胎児の命に直結する病気だ。
母体には、脳出血のほか、けいれん発作を起こす「子癇」や肝臓の機能が悪くなって血小板が減る病気「HELLP症候群」、赤ちゃんが産まれる前に胎盤がはがれてしまう病気などになる危険がある。
胎児も低体重になったり、体の発育が悪かったり、最悪の場合はおなかの中で亡くなってしまうこともあるという。
 
国内の妊産婦の死亡率は10万人あたり3~4人ほどで、先進国でも低い方だが、その何倍もの妊産婦が亡くなっている途上国では、妊娠高血圧症候群が妊産婦の死亡原因の上位になっている。
 
自覚症状がほとんどないのがこの病気を治療する上での難点だ。
そのため、血圧や尿たんぱくを調べる妊婦検診が重要。
検診でしっかり調べ、高血圧を早期発見することがとても大切となる。
 
病気の詳しい原因ははっきりしていない。
根本的な治療は赤ちゃんを産んで妊娠を終わらせること。血圧が高すぎたり、急に上昇したりした場合は降圧剤を使うこともある。
重症だと入院して血圧を厳重に管理しながら出産のタイミングを見計らっていく。
症状が悪くなりすぎると、妊娠を中断するしか治療法がなくなることもある。
 
普通の高血圧だと減塩が予防や対策の一つになるが、妊娠高血圧症候群の場合は極端な塩分制限は逆に症状を悪化させるという。
妊婦は栄養のバランスがとれた食事が基本だ。
妊娠前から痩せすぎたり、太りすぎたりせず、妊娠に備えることが大切となる。
 
妊娠高血圧症候群は将来の生活習慣病とも関係すると言われる。
病気になった妊婦とそうでない妊婦119人を10年以上追跡調査した研究では、病気になった妊婦の約半数に高血圧の症状がみられた。
病気を発症した人は将来的なリスクも知り、定期的な検査を是非受けたい。


妊婦高血圧症候群に要注意
① ⬜︎ 妊娠したが、妊婦検診を受けていない
② ⬜︎ 35歳以上、または15歳以下
③ ⬜︎ 妊娠前から太りすぎている
④ ⬜︎ 過去に妊娠高血圧症候群になったことがある
⑤ ⬜︎ 初産である
⑥ ⬜︎ 双子を妊娠している
⑦ ⬜︎ 妊娠前から高血圧や腎臓の病気などがある
⑧ ⬜︎ 家族に高血圧や妊娠高血圧症候群になった人がいる


① 血圧の上昇などを把握できず、早期発見できない場合があります。
② 35歳以上は発症率が高くなり、40歳以上になるとさらに危険度が高くなります。
③ 妊娠前の体格指数(BMI)が25以上だと発症しやすい傾向といえます。
④ 初産のときに発症した妊婦はその後の妊娠でも半数ほどが発症するとされています。
⑤~⑧ の場合、リスクが高まることが研究で分かっています

<関連サイト>
日本産科婦人科学会のサイト
http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/kouketsuatsu.html
(病気の簡潔な説明がある)

日本妊娠高血圧学会のサイト
http://jsshp.umin.jp/i_9.html
(発症しやすくなる要因などについてQ&Aで詳しく説明)

妊娠高血圧症候群とは?原因と症状、予防法、治療法まとめ
http://192abc.com/16769

当てはまるかをまずはチェック!妊娠高血圧症候群の原因や症状
http://maternity-march.jp/kouketuatu54281/

出典
朝日新聞・夕刊 2016.2.15(一部改変)