足の血行不良

全身の動脈硬化ひそむ恐れ

整形外科で骨や関節、神経を調べても異常がないのに、足が痛くて歩けない。
こんなときは足の動脈が詰まり、血液がちゃんと巡っていないことが多い。
ひどくなる前に「足の血圧」をチェックするよう、専門医は呼びかけている。

喫煙や良くない生活習慣、加齢などで足の動脈硬化が進むと血管が狭くなり、血液が流れにくくなる。
そうすると、太ももやふくらはぎの筋肉に十分な酸素や栄養が届かず、しびれや痛みを感じる。

これが「閉塞性動脈硬化症」という病気で「ある距離を歩くと太ももやふくらはぎが痛くなり、休むと痛みがなくなる」という症状が出るのが特徴だ。
運動時の筋肉は安静時の30倍もの血液が必要になるため、血液不足の影響が一気に現れる。

同じような足の痛みは、背骨の中の神経が通る部分が狭くなって神経を圧迫する「脊柱管狭窄症」でも起きる。
しかし、その痛みは前かがみになると消え、気圧変化やその日の体調で痛みの程度も変わるので、区別できる。

動脈硬化は全身の血管に及ぶ。
足の血管が詰まっている人は、脳梗塞心筋梗塞の危険も高まっている。

    ◇

最近、足首の血圧を腕の血圧と比較して足の血行を判定する「ABI検査」が普及してきた。
足首の血圧は本来、腕より30%ほど高い。
この場合ABI値は「1.30」となるが、足の血管が詰まると血圧が下がり、腕と同等(ABI値は1.00)未満になる。

しびれや痛みを感じる患者を調べると「足首の血圧が腕の90%(同0.90)以下」で、これが「閉塞の可能性あり」という目安だった。
ところが、しびれや痛みの症状が出ない「ABIが0.99~0.91」の境界域の人でも閉塞があり、全身の動脈硬化が進んでいる恐れがはっきりした。
境界域の「患者」は、症状が出ている患者の2~3倍いるとみられる。

昨年9月、米国のガイドラインが改定され、境界域も再検査・要観察となった。

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「足は全身の血管を診る窓」という見方が確立しつつあり、血管外科などの専門医らは「日本心・血管病予防会」を組織。
高齢者や喫煙者を対象に、敬老の日に無料のABI検査を続けている。
今年は全国20カ所以上の大学や病院が参加する予定という。

一方、ABIで端緒をつかんでも、患者を詳しく診断し、治療法を決めるための検査は難しいものが多い。
このため血管の病気に関する3学会が6年前、「血管診療技師認定機構」をつくり、専門知識をもつ検査技師や看護師を養成している。 (斎藤義浩)


■相談ナビ
日本心・血管病予防会のサイトに、会の活動や血管病の専門医のリストが載っている。
http://shinkekkan.com

出典 朝日新聞・朝刊 2012.5.31(一部改変)
版権 朝日新聞社


<私的コメント>
私は本来循環器専門医です。
当院でも「ABI検査」は以前から行っていますが、現在普及している検査機器は大体2社メーカーのいずれかです。
血圧補正がきちんとされている機器でないと、検査をする度にばらつきが出る(専門的には「再現性の良否」といいます)場合があります。
何回も検査した場合、値が随分異なる場合には、体に問題があるのではなく器械に問題がある場合もあるのです。


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