血管年齢を知ろう

ご存知のように、人体には酸素や栄養を運搬するために全身に血管が張り巡らされています。
この血管も老化は避けられません。
その原因のまず一番は当然加齢ですが、遺伝や食生活や日常生活の過ごし方も大いに関係しています。
「血管が詰まる」病気の代表には脳梗塞心筋梗塞や、主として下肢の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症などがあります。
一方、「血管が切れる」病気の代表は脳出血や大動脈瘤破裂があります。
ただし、動脈硬化といっても脳動脈や冠動脈や大動脈のような「大血管」と眼底動脈や腎臓の中にある動脈のような細小血管と区別する必要があります。
「血管が詰まらない、切れない」ようにするには、まず自分の血管はどんな状態かを知る必要があります。


血管年齢を知ろう、心筋・脳梗塞防止を

「まさか、あの人が……」。
昨日まで元気だった人が、突然、心筋梗塞脳梗塞で倒れることがある。
その原因となるのが血管の硬さ。
自分の血管はどのくらい硬くなっているのか。
それを知る目安として血管年齢が注目されている。血管年齢を知って心筋梗塞などの予防に役立てる方法とは……。

都内在住の会社員Aさん(32)は、都内の病院で健康診断を受けた際、血管年齢の検査を受けてみた。
ベッドに横たわり、指先を検査装置のセンサーに入れると、20秒もしないで結果が出てきた。
「46歳」

動脈硬化の目安に
これといって具合が悪いこともなかっただけに、Aさんは不安になってしまった。
しかし、医師から「これまでは血管の老化は進むだけで改善されないといわれてきたが、最近、血管年齢が若返ることがわかってきた」と聞き、胸をなで下ろした。

心臓から血液を送り出す拍動は指先の血管に脈拍という形で伝わる。
その脈拍を加速度脈波計という検査装置で波形としてとらえ、コンピューターで処理して血管年齢は割り出される。
血管年齢の検査には足と上腕に脈波計をつけて調べる方法もある。
ただ、18歳未満の人は身長の影響で血管年齢が高めに出るので、血管年齢を血管の硬さの目安として使えるのは18歳以上に限られる。
最近は病院のほか、自治体で血管年齢検査を実施しているところもある。

血管年齢は血管の硬さを表し、動脈硬化の進み具合をみる目安の一つになる。
血管は若い時には柔軟性があるが、年をとるにつれて硬くなる。
年相応の硬さであれば問題ないが、実年齢より10歳も20歳も硬いとなると病気が隠れている恐れがある。

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東京医科大学八王子医療センターの高沢謙二センター長は「10歳以上老けている場合は糖尿病や高脂血症など生活習慣病の疑いがある。20歳以上、年をとっていると生活習慣病があると思ってよい」と指摘。「健康そうに見える人でも、血管年齢が高いことは珍しくない」と話す。
元気だった人が突然、心筋梗塞脳梗塞で倒れるような場合には、血管年齢が高かった可能性もあるという。

血管年齢が高くなる原因としては、食生活の乱れや喫煙、運動不足などが挙げられる。

せんぽ東京高輪病院栄養管理室の足立香代子室長らは、40歳代の主婦86人の中から生活習慣病がないのに血管年齢が高い14人を選び、食事指導で血管年齢が若返るか試験をした。

食事指導を受けた主婦の平均年齢は約43歳。
血管年齢は約64歳で実年齢より約21歳高かった。
対象者の食事内容を調べてみると、同年代の人が1日に摂取している量に比べて野菜類が28%、魚類が32%、豆類が5%少なく、肉類は28%多いことがわかった。

ストレスもためず
そこで、野菜類を1日450グラムか現在より増やし、肉類は週3日に抑え、大豆類と魚類を毎日食べるように食事指導した。

1カ月後の食事内容は魚類と肉類、野菜類が同年代の人の1日摂取量とほぼ同じで豆類は77%増えていた。
血管年齢は7歳近く若返ったことがわかった。

足立室長は「肉類を減らし、野菜、魚、豆類をよく食べるようにした方がよい。野菜はホウレンソウや小松菜、パプリカ、ブロッコリーのように色の濃いものを積極的に食べると効果的」と言う。
高沢センター長は「食事の最初にたくさん野菜を食べるのがポイント」とアドバイス。食事内容を改善できない人は、たんぱく質カゼインから得られるラクトトリペプチドを摂取しても血管年齢を下げられるという。

できるだけ歩くようにしたり、休日には好きなことをしたりしてストレスをためないようにし、年相応の血管年齢を保つことが心筋梗塞などの予防につながる。 (編集委員 西山彰彦)

出典 日経新聞・朝刊 2011.9.11
版権 日経新聞



<番外編>
動脈硬化を防ぐ食事として「おさかなすきやね 」という言葉をご存知ですか。
ちょっと関西風味ですが。

食事の基本の 「おさかなすきやね 」 

「お」・・・お茶
「さ」・・・背の青いさかな
「か」・・・海藻
「な」・・・納豆 
「す」・・・酢(黒酢)    
「き」・・・きのこ
「や」・・・野菜  
「ね」・・・ねぎ



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