ダ・ヴィンチ

手術患者死亡 外部調査委を設置へ 名大病院

医療ミスの疑いも
内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」で早期胃がんの手術を受けた70代の男性患者が5日後に死亡した問題で、名古屋大病院(名古屋市昭和区)の松尾清一院長らが22日午後に会見し、「遺族に耐え難い結果となり、心よりおわびする」と謝罪した。
医療ミスの疑いがあり、早急に外部調査委員会を設ける。

病院によると、男性医師が9月上旬に胃の下部を切除する手術をした際、何らかの原因で膵臓に亀裂が発生。
膵臓を縫合したが、手術後に患者が腹痛を訴え、動脈血流の障害で腸管壊死が起きたことが判明した。
2日後に腸管を切除する手術をしたが、その後に壊死性筋膜炎も併発し、3日後に多臓器不全で死亡した。

病院側は「膵臓の損傷はミスなのか、手術の合併症の範囲なのかは分からない」と説明。
一般的に早期胃がんの手術で、患者が死亡することはほとんどないという。
ロボットの不具合はなかったという。

同病院は5月以降、ダ・ヴィンチで14例の手術をしたが、患者の死亡は初めて。
男性医師による手術は4例目。
専門のトレーニングを受け、体内にカメラを挿入して行う腹腔鏡手術の件数も豊富だったという。
日本医療安全調査機構の死因調査モデル事業にも調査を申請した。

ダ・ヴィンチは、患者の体内に挿入した小型カメラから送られる立体映像を見ながら4本のアームを遠隔操作し、先端のメスや鉗子を動かして手術する機器。
通常の手術より手術の精度が上がり、患者の負担が少ないとされる。


<私的コメント>
ある別の記事で「病院は今年3月にダ・ヴィンチを導入。このロボットを使った胃がん手術は4例目で、すべてこの医師が行っていた。」とのことです。
他の10例の手術は胃以外の手術となるわけですが、どのような臓器に使用されているかも知りたいところです。
「名大病院は今後、胃がんの手術についてはダ・ヴィンチの使用を停止するが、前立腺がんについては過去10例で問題なかったため、他大学の経験ある医師が立ち会うなどして手術を続ける方針。」という記事もありました。
胃以外では前立腺手術に多く使用されているのかも知れません。



ダ・ヴィンチは米国の医療機器会社インテューティブ・サージカル社が開発。
執刀医は、数メートル離れた場所にある「コンソール」と呼ぶ装置を操作し、患者の体内に挿入した小型カメラから送られる立体映像を見ながら、カメラ用を含む4本のロボットアームを操作し、先端のメスや鉗子を動かして手術する。
人間の関節では不可能な動きもでき、手ぶれも補正。
手術の精度アップにつながり、国内では今年3月までに大学病院などで13台を導入している。
1台約3億円。
手術は保険適用外で、通常は自費で200万円ほどかかる。

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医療系学会の会場に展示された手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」。執刀医は、右奥のモニター画面をのぞいてアームを操作する


<私的コメント>
この記事を読む限り、脳外科領域などのマイクロサージェリー(手の震えも許されないような細かい手術)に向いているのではないでしょうか。
今回のような「早期胃がん」の場合には、従来から行われている開腹術の方がいいのではないでしょうか。
アクシデントにも迅速に対応出来ます。

昨今は、「傷口が小さくてすむ」「入院期間が短縮できる」「侵襲が少ない」といった理由で腹腔鏡手術が隆盛をきわめています。

先日来院された患者さんの話でも、ある大学病院で「腹腔鏡手術で脾臓摘出(脾摘)に8時間かかった」ということをお聞きしました。

脾臓が従来の3倍も大きかった(脾腫)ための手術だったそうですが、当然腹腔から取り出すのには時間がかかるわけです。

大学病院では、こういった最先端の手術が行われます。
従来の術式の方がいい場合もあるわけですから、大学病院も含めた大病院を受診される方は十分な知識をもつ必要があります(自分の身体は自分で守る)。