「腎臓がん」のロボット支援手術

ロボット支援手術、腎臓がんにも保険適用

ロボットを用いた腎臓がんの腹腔鏡手術に、4月から公的医療保険が使えるようになった。
前立腺がんに続く適用だ。
腹腔鏡手術は、おなかを切り開く開腹手術と比べて患者の体の負担が少ない一方、技術面の難易度は高いとされるが、ロボットを使うことで繊細な作業もしやすくなるという。

より細かな作業が可能に
使われるのは医療機器として国内で唯一承認されている手術支援ロボット「ダビンチ」。
アームと呼ばれる3本の「腕」にカメラや、臓器をつかんだり切ったりする器具を装着し、腹部に開けた直径約1~2センチの穴から体内に入れる。
 
手術台から数メートル離れた操作台で、執刀医が3次元画像を見ながら両手と両足でコントローラーやペダルを操作すると、アームが動く仕組みだ。
一般的には、ほかに助手2人が吸引などをするためのものも含め、腹部の穴は計6カ所。
 
患者は傷口の痛みを少し我慢すれば、退院の翌日からでも働ける。

今までは全額自己負担で手術費は140万円程度かかった。
保険適用となった4月からは手術費は70万7300円で、自己負担はその1~3割で済む。
高額療養費制度を使えば所得に応じて負担はさらに抑えられる。
 
14~15年に全国の14病院で、検査費や入院費などには保険が使える「先進医療」として、ロボット支援による腎臓がんの手術(部分切除)を受けた患者103人のデータによると、手術中に腎臓の血流を遮断した時間は中央値で19分。
ロボットを使わない腹腔鏡手術では20~30分程度というデータがある。
 
手術支援ロボットは、より精密で自由度の高い動きができる。
腎臓の中に埋まった腫瘍など腹腔鏡では難しい場合でも、開腹せずに治療できるようになる。
 
今年度は全国30~40病院で計1千件ほどの実施が見込まれている。

医師の訓練が必須
ロボット支援手術は米国を中心に広がってきた。
 
ダビンチを製造販売する米国のインテュイティブサージカル社の日本法人によると、昨年末までに世界で3597台(米国2399台、日本211台)が導入された。
]価格は日本に多い機種で1台約2億5千万円。
昨年1年間にダビンチを使った手術は世界で約65万件あり、うち4割が婦人科系、3割が泌尿器科系だった。
 
日本では、12年4月に保険適用となった前立腺がんと今回の腎臓がんのほか、胃がんと咽喉頭がん、子宮頸がんが先進医療に認められている。
 
操作は「腹腔鏡手術に比べて習得しやすい」とされる。
ただ、患者の臓器に触れる感覚がない点に医師は慣れる必要があるという。
 
10年に名古屋大病院で、ダビンチを使った胃がんの手術で死亡事故が起きた。
報告書では、執刀医は胃がんの腹腔鏡手術を500例以上経験していたが、この手術では器具で膵臓を強く圧迫していたことに気付いていなかったとしている。
 
医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、昨年11月末までに、画像の消失やカメラケーブルの接続不良といった装置の不具合が疑われるケースが約40件報告されている。
不具合との関連は不明だが、手術時間が延びたり手術法を変更したりした例もあった。
 
同社は、ダビンチを操作する医師に対し、インターネットでの講習や、認定施設での1~2日間の訓練などを義務づけている。
 
日本泌尿器内視鏡学会理事長は「新しい手術を安全に進めるため、講習会など教育を充実させていきたい」と語る。

ロボット支援手術の主な利点
① 執刀医は患部を高画質の三次元画像で見られる
② 精密な動きが可能で、執刀医の手ぶれが補正される
③ 開腹手術よりも傷が小さく、出血が少ない

参考
朝日新聞・2016.4.13


<私的コメント>
当院の患者さんも先月、腎臓がんの手術を「ロボット支援手術」で行っていただきました。
医療機関で5例までは患者負担なしということで、窓口負担はなかったようです。
この方は、他の部位のがんの手術をされ、術後の腹部CT検査で偶然に腎臓がんが発見されました。
重ね重ね幸運な方です。(Every cloud has a silver lining. 分厚い雲のふちから一筋の光が見える. 不幸中の幸い)