腸閉塞、広がる腹腔鏡手術

腸閉塞、広がる腹腔鏡手術 少ない再発・医師の熟練必要

腸の中がふさがるなどして食べたものが通りにくくなる腸閉塞。
近年、腹腔鏡を使った治療が広がってきている。
おなかを切り開く開腹手術と比べ、傷口が小さく済み、再発も少ないとされる。
ただ、高度な技術が医師に求められるなど、課題もある。

再癒着しにくさ、利点
腸閉塞は腹痛や嘔吐、発熱、腹部の張り、便秘などの症状が出て、ひどいと命にかかわる。
 
原因で多いのが、小腸と腹壁や、小腸同士がくっつく「癒着性」。
過去に開腹手術を受けた人はなりやすく、経験者の1割程度に起こるとみられている。
切った傷口の修復を促すたんぱく質が分泌されるためだ。
 
治療は絶食や点滴が基本で、鼻からチューブを入れて詰まった食べ物を取り除くこともある。
これらの内科的な治療で改善しない場合や、腸がねじれて血液の流れが滞っている場合などは、開腹手術で癒着した部分を切ることになる。
ただ、開腹手術は新たな癒着を起こす恐れがあるため、おなかに開けた小さな穴から切除器具やカメラを入れて行う腹腔鏡手術を選択する動きが出ている。
 
腹腔鏡での腸閉塞の治療には、公的医療保険が使える。
傷口が小さいため、身体的な負担が軽く、患者は手術後に早く動ける利点がある。
腸の働きが回復するのも早く、再癒着が起こる可能性が開腹手術よりも低いとされる。
 
日本内視鏡外科学会の学術集会ではここ数年、腹腔鏡による腸閉塞治療の報告が増えており、実施する病院も広がりつつある。
 
たとえば患者約120人の分析では、再癒着を起こした人の割合は腹腔鏡手術が開腹手術の5分の1以下だったという。
 
また、05~10年に米国外科学会に登録された癒着性腸閉塞の患者約4600人でみると、死亡率や合併症発生率は腹腔鏡手術のほうが開腹手術の半分以下だった。
分析したトロント大のチームは、傷口の悪化や感染症が少ないからだろうとみている。

適さぬ例、見極め大切
腹腔鏡による治療は、すべての腸閉塞に対応できるわけではない。
手術する場合、腹腔鏡と開腹のどちらが向くのか適切に判断することが最も大切となる。
 
細い管の先のカメラでおなかの内部を見る腹腔鏡手術では、開腹手術に比べて視野が狭い。
手で直接ふれる触覚も使えない。
このため、癒着が強固で境界が不明瞭な場合や、癒着が広範囲にわたる場合には、適していない。
切除なども器具を操作して行うので、場所によっては困難になる。
 
また、腹腔鏡手術では、おなかを膨らませるために二酸化炭素を腹部に入れる。
腸の血流が滞っている腸閉塞で血圧も下がっている患者は、さらに血圧が下がる危険性がある。
 
腹腔鏡で癒着を上手にはがすには高度な技術が必要となる。
腸の腹腔鏡手術の指導医レベルの技術を持つ医師は、日本内視鏡外科学会のサイト(http://www.jses.or.jp/)の技術認定取得医のうち、「消化器・一般外科」の一覧に載っている。
腸以外の消化器の専門医も入っているので、受診時に確かめる必要がある。
 
患者にとっては、手術後に腸閉塞が起きないことが望ましい。
腸が動かない時間が長いほど、癒着は起きやすいとされる。
術後はなるべく早く体を動かし、水分や食べ物をとることが重要。
ふだんは暴飲暴食を避け、ゆっくり適量を心がけたい。

 
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参考
朝日新聞・朝刊 2016.7.13


<私的コメント>
腸閉塞の内科的治療の一つに漢方薬の「大建中湯」があります。

大腸がんの悩み Q&A 腸閉塞の症状がつらく、困っています
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/daicho/column/201304/529673.html
・頻繁に腸閉塞を起こす人には、予防効果のある「大建中湯」という漢方薬が勧められます。大建中湯には、腹痛や腹部の冷えや張りを和らげ、体を温めて胃腸の調子を整える働きがあります。
(保険適応のため医療機関で処方してもらうことが出来ます)

大建中湯の効能:腹部の冷え、腹痛、腸閉塞(イレウス
http://kusuri-jouhou.com/crude/daiken.html
(「大建中湯」について詳しく解説)


 
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長野・蓼科湖 湖畔にて 2016.7.17撮影