虫垂炎

急なズキズキ 虫垂炎かも

早期発見なら手術いらず 体力低下する夏場注意 / 食生活 気をつけて
「盲腸」の呼び名で知られる虫垂炎
幅広い年代で見られる身近な病気だが、実は10代前半を中心に子供に多い。
夏休みの終盤にかけて発症が増える傾向もあるという。
症状の特徴や対処法は・・・。

虫垂は盲腸の先端から突き出た直径4~5ミリ、長さ5~7ミリほどの細長い管状の組織。
虫垂炎とは、虫垂が細菌感染を起こし、中が詰まってしまった状態を指す。
 
約15人に1人がなるといわれるほど身近な病気で男性のほうが多い。
小学校高学年から中学生の発症が多く、国内の1万人当たりの虫垂切除数(年平均、日本小児救急医学会)をみると、10~14歳の男性で13.2人、女性で8.5人。
これは50代の発症と比べ約3倍と、他の年齢層より突出している。
 
夏に増えるという報告もある。
夏休みが終わる頃に、病院へ救急搬送される例が多い。
夏の疲れによる体力低下が一因になっているのかも知れない。
 
虫垂炎になると危な腹痛に襲われる。
みぞおちやへその周りがズキズキと痛み出し、続いて食欲不振や吐き気、嘔吐が起こる。
数時聞から半日ほどで、痛みは腹部の石下に移るのが典型的な症状だ。
 
心当たりがあれば、単なる腹痛と思い込んで我慢せず、すぐに受診しよう。
手でおなかを押して離すときに激痛が走る、37~38度の発熱を伴うといった特徴もある。

私的コメント
「手でおなかを押して離すときの激痛」や「37~38度の発熱」が見られる場合はかなりの重症で腹膜炎を合併している可能性があります。
したがって、普通に見られるものではありません。

虫垂内には石のように硬くなった「糞石」ができることが多く、これがあると重症化しやす」。
まれに魚の骨や歯、義歯、金属類などが詰まりの原因になるケースもある。
 
虫垂炎の治療は早いほどいい。
高齢者の場合は症状を感じにくく、来院時にはすでに重症という例もあるという。
治療が遅れると、虫垂が破れて腹膜炎に至るおそれがあるので、注意が必要だ。
 
以前は虫垂を切除する外科手術が主流だった。
今は「取らずにすむなら、なるべく手術はしない」という。
かつて虫垂は切除しても特に影響がないと見られていたが、近年の研究で免疫や場内細菌のバランスを保つ役割があるとわかってきたからだ。
  
早期なら抗菌薬の治療で治る場合も多い。
ただ、薬の治療では約1~3割は再発するため、最終的に手術を受ける人もいる。
 
子供の虫垂炎の診断には、超音波検査を優先する。
ただし
・虫垂に穴が開いているおそれがある
・太っていて超音波が届きにくいという場合
は、コンピューター断層撮影装置(CT)による検査も必要となる。
 
手術は開腹と腹腔鏡によるものがある。
傷が小さく、術後の痛みも軽い腹腔鏡手術が半数を超えている。
へそから内視鏡を入れ、下腹部に開けた2か所の約5ミリの穴から器具を出し入れして、虫垂を切除する。
へその穴だけを便う「単孔式手術」も徐々に増えてきた。
 
虫垂が破れてうみがお腹にたまる重症例の場合、最近は抗菌薬で炎症を鎮めて、数カ月後に手術する「待機的虫垂切除術」が増えている。
手術時の傷が小さくてすみ、合併症も減る。

虫垂炎の予防は可能だろうか。
虫垂炎の人は、「そうでない人より食物繊維の摂取量が少ない」「便秘の人は再発しやすい」といった報告がある。
日ごろから食事に気をつけ、腸内環境を整えておこう。
免疫力の低下を防ぐため、疲れやストレスをためないことも大切だ。
 
<まとめ>
虫垂炎の症状はこんなふうに現れる
 みぞおちやへその周りが突然ズキズキ痛む

 食欲不振や吐き気、嘔吐が起こる
 ↓ 数時間~半日ほどで 
 痛みがおなかの右下に移動
 ↓
 37~38度の発熱
 ↓
 我慢せず受診を

現在の治療法は
 薬物療法
  抗菌薬で炎症を抑える
   取らずに済むなら、なるべく手術はしまい
 外科手術
  虫垂を切除する
   開腹手術
   腹腔鏡手術


参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.8.11


<関連サイト>
強い痛み・血圧急低下… 大人の盲腸、重症化に注意
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO80493430U4A201C1EL1P01


虫垂むやみに取らないで 腸内細菌のバランス保つ
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO69714510R10C14A4CR8000/
大阪大のチームは虫垂を切除したマウスと、していないマウスを比較。切除したマウスの大腸内では、腸内細菌のバランス維持を担う抗体を作る免疫細胞が半分になっており、バランスも崩れていた。虫垂でできた免疫細胞が大腸と小腸に移動していることも確かめており、虫垂が腸内細菌のバランスを保つのに役立っていることが分かった。
(2014.4.11)

「急性虫垂炎に対するInterval appendectomyと抗菌薬選択」
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-180221.pdf
・基本的治療方針は入院後に抗菌薬静脈内投与 48 時間、6-12 時間の間隔で患者を評価し改善し痛みが制御されれば食事開始、7 日分の経口抗菌薬投与で退院、48 時間以内に 改善しないか悪化で手術を検討とされている。
・糞石を伴う症例が、有意に 保存的治療に抵抗性。
虫垂炎の起炎菌 となりうる Gram 陰性桿菌や嫌気性菌をターゲットに選択しますので、第二~三世代セフェム系(一日 一回投与ですむセフェム系のセフト リアキソンなど)を中心にし,これにアミノグリコシド系やクリンダマイシンを中心としたリンコマイシン系を併用する施設の報告が多い。