長く残る痛みに新薬

神経をしずめ脳への伝達抑える

帯状疱疹の後や腰痛で、痛みが長く続くことがある。
神経の異常などが原因のようだ。
そんな症状に効く薬が増えてきた。
過敏になった神経をしずめるタイプのほか、脊髄や脳への痛みの伝達を遮断するタイプも登場し、あきらめかけた痛みがやわらぐと期待を集めている。

 
■悩む人は推定500万人
東京都のIさん(76)は2003年4月、都内の病院で脊柱管狭窄症の手術を受けた。
老化などが原因で神経が通っている背骨の一部が狭くなり、足腰に痛みやしびれが出る病気だ。
だが、術後も痛みなどは消えなかった。

痛みの治療で一般的な治療薬の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを試したが、効果がなかった。
11年10月、某大学病院ペインクリニックの教授(麻酔科)から薦められ、プレガバリン(商品名・リリカ)を飲み始めた。
2010年に発売され、神経の痛みに効くという新薬だった。

1日に25ミリグラム2錠から始め、少しずつ増量したところ、ひざから下と、ひじから手首までのしびれが少しずつ薄らいだ。
<私的コメント>
実際はカプセルですので「2カプセル」と書くべきです。
現場の知識がないかぎり、書いた記者にも編集部の校正でもチェックは無理です。
インタビューした先生の校正は受けたのでしょうか。

現在は75ミリグラムを朝1錠、夜2錠ずつ服用。
腰の痛みで以前は猫背だったが、今は胸を張って歩くことができる。
「1日の歩数は、約5倍にのびた」と笑顔で話す。

傷や炎症は治ったのに、神経が傷ついて続く痛みは、「神経障害性疼痛」といわれる。
<私的コメント>
便利な病名です。
専門医の間でも結構使われるようになっていますがその実体や定義が曖昧な気がします。

原因不明の腰痛や座骨神経痛、糖尿病の神経障害などが含まれる。
しびれる、焼けるようにひりひりする、衣類がすれるだけで痛いなどが特徴だ。
川さんによると、神経の痛みに悩む人は国内に推定で500万人いるという。

治療薬として、NSAIDsが処方されることが多かったが、炎症がない神経の痛みには効きにくかった。
リリカは、痛みを伝える物質が過剰に放出されるのを抑え、過敏になった神経をしずめ、痛みをやわらげる新しい作用がある。
帯状疱疹後神経痛、腰痛などを含む「末梢性神経障害性疼痛」に効果がある。
<私的コメント>
神経障害性疼痛」と「末梢性神経障害性疼痛」との対比は読者を混乱させます。
「末梢性神経障害性疼痛」は「中枢性神経障害性疼痛」に対する言葉ですが、「神経障害性疼痛」はどういった分類の中にあるのでしょうか。
あるサイトでは「神経障害性疼痛は神経が傷つくことで発症する痛みですが、傷ついた神経の場所によって、『末梢性神経障害性疼痛』と『中枢性神経障害性疼痛』に分けることができます」と書かれています。



ただし、めまいや眠気などの副作用が報告されている。
のみ始めに出やすく、転倒に注意が必要だ。
また、腎機能に障害がある人には減量する必要がある。

痛みが続くと血行が悪くなり、痛みが増すという悪循環が起きる。
我慢しすぎず、ペインクリニックなどで専門医に相談するとよい。

 
■服用量調節しやすく
神経の痛みと、炎症による痛みが混在する慢性の痛みには、痛みの伝達を抑える薬も登場している。
オピオイド系鎮痛薬と呼ばれる薬で錠剤の他、貼り薬もある。
中でも、11年7月に発売された錠剤のトラマドール/アセトアミノフェン配合剤(商品名トラムセット)が注目されている。

鎮痛作用のあるアセトアミノフェンと、がんの痛みを抑えるために使われてきた弱オピオイド・トラマドールを混ぜたものだ。

ある医師は「初めに吐き気の副作用があるが、多くは痛みがやわらぎ、8割以上が継続して使っている」という。

他のオピオイドに比べて、便秘の副作用が少ない、痛みの強さに合わせて8錠を上限に薬の量を調節しやすい、麻薬指定されておらず依存性はほとんどみられず使いやすい、などを長所にあげる。
<私的コメント>
私の経験では、少量でも吐気は必発といっていいぐらいに見られます。
吐気止めの胃薬を最初から併用する先生がほとんどです。

痛みの原因は複雑で、この薬を使えばすぐに治るというものではない。
ただ、治療薬の選択肢は増えているし、麻酔薬を使う神経ブロックや抗うつ薬などの手段もある。
あきらめず根気よく治療を続けることが必要。

治療によって痛みが軽減すれば、日常生活の工夫や努力でさらにやわらげることができる。
体を動かせば筋肉が柔らかくなり、血流も良くなるので痛みも減る。
「医師や薬に頼るだけでなく、家で運動やストレッチをしてセルフコントロールすることも大事だ」と話す専門医もいる。(辻外記子)

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出典  朝日新聞・朝刊 2012.2.7(一部改変)
版権  朝日新聞社



<関連記事>より
久しぶりの運動で、忘れたころにやってくる筋肉痛。
こういった筋肉痛を「遅発性筋肉痛」という。
筋肉を包む組織が炎症を超こし、痛みを伝える神経が過敏になるためだと考えられている。
痛みが1~3日後になって出てくるというのは、年齢とはなんの関係もないらしい。
大学生と中高年を同じ運動で筋肉痛にさせたところ、年齢による時間差はなかったという研究がある。
それよりも、個人差や運動内容の違いが大きいという。

年齢を重ねるとともに、それまで、簡単に出来ていた運動が、きつく感じるようになり、しかも、体力が、長くは続かない。
強い運動から遠ざかるため、運動中や運動直後の痛みが出ずに、遅れて筋肉痛が出たと感じるらしい。

同じような運動をしておけば、その後、筋肉痛は起きにくくなる。
継続的に体を動かして予防するという事が大切なようだ。

出典  朝日新聞・朝刊 2012.2.7(一部改変)
版権  朝日新聞社


<自遊時間>
昨日の朝のNHK教育TVで「セザンヌ」を特集していました。
天才画家のピカソも敬愛するというセザンヌ
私もセザンヌは大好きです。
現在、国立新美術館(東京、乃木坂)で開催中の「セザンヌ ー パリとプロバンス」(2012.3.28 - 6.11)に桜満開の中、行って来ました。
画集も購入して、後から見比べたのですが画集では本当の色彩は表現されません。
絵は光の具合によって色彩が変わります。
カタログの写真はどのように撮影するのでしょうか。

しかし、何より残念なことは、私のような凡庸な鑑賞力では本物の色彩が頭の中に焼き付けることが出来ないことです。




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