貧乏ゆすり

実は健康にプラス エコノミークラス症候群予防にも

長く椅子に座っていると、つい無意識のうちにやってしまう「貧乏ゆすり」。
行儀が悪いと、親や他人から注意されるクセだが、メリットも多いことがわかってきた。
女性に多い手足の冷えやむくみの解消に役立つほか、関節が痛んで介護が必要になることも多い股関節症の治療に活用している病院もある。
専門家が「意識してやるように」と薦める貧乏ゆすりの“効能”とは。

■生まれたときから備わっているクセ
「会議のときに隣でやられるとイライラして気が散る」――。
貧乏ゆすりは周囲から評判の悪いクセだが、医師たちの見方は違う。
「健康面ではよいことが多い」。
脳神経の働きと貧乏ゆすりを調べた国立長寿医療研究センターの中村昭範・脳機能診断研究室長はこう言い切る。

貧乏ゆすりは何かに集中したりイライラしたりすると、足の動きをとめている大脳の働きが抑えられるため表れる。
日本人だけではなくあらゆる人種に見られるクセで、生まれたときから備わっているという。

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冷え・むくみ解消
その効能としてまず挙げられるのが、手足の冷えの改善だ。
中村室長は20~40歳代の女性4人に貧乏ゆすりをしてもらい、ふくらはぎをサーモグラフィーという温度観測装置で観察した。
その結果、皮膚の温度が5分後に平均で約2度上昇した。
最も上がった人は3.3度もあった。
中村室長は「運動の代わりとはならないが、対策にはなる」と話す。

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エコノミークラス症候群の予防も
なぜ、ふくらはぎの皮膚の温度が上昇するのか。
これは血流が改善するからだ。
貧乏ゆすりはふくらはぎの筋肉が伸び縮みする反応。
ふくらはぎは足腰に滞りやすい血液をポンプのように心臓へ送り返す働きがある。
この筋肉が動くと、全身の血行がよくなる。

具体的には、深部静脈と呼ぶ血管がふくらはぎの筋肉の伸縮によって、圧迫されたり開放されたりする。静脈には逆流を防ぐ弁がついており、井戸のポンプと同じ仕組みで心臓に血液を送り込みやすくなる。

女性に多いむくみの解消にもつながる。
むくみは皮膚の下に血管から漏れ出た余分な水分がたまる状態だ。
女性は筋肉量が少なく皮下脂肪が多いため、起こりやすい。
血流が改善すると、余分な水分が血管に取り込まれて解消する。
ふくらはぎを締め付けるストッキングをはけば、効果が高まる。

エコノミークラス症候群の予防にも役立つ。
同症候群は飛行機の座席で長時間過ごしたため、静脈にできた血の塊(血栓)が肺の血管などに詰まって起こる。
貧乏ゆすりで血流が良くなれば、血栓ができにくくなる理屈だ。

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■「貧乏ゆすり」ではなく「健康ゆすり」
中高年以上に多く、加齢や運動不足、肥満などが原因で起こる変形性股関節症
股関節に隙間ができた結果、軟骨がすり減って炎症を起こし激痛が生じる。
この病気の治療に貧乏ゆすりを積極的に取り入れている病院もある。
副作用もなくお金もかからないのでお薦めだ。

変形性股関節症の人はとにかく暇を見つけて実行するとよい。
クセになるほど動かすことが大切だ。
手術を望まない60代の女性患者に勧めたところ、5年後には痛みが和らぎ、関節の動きもよくなったというケースもある。

詳しいメカニズムはわかっていないが、軟骨を培養するときに外から刺激を与えると成長しやすいという報告がある。
貧乏ゆすりだけでも、軟骨を再生する効果が期待できる。

貧乏ゆすりをしすぎることで関節痛を引き起こしたりしないのか。
こうした心配について、どの専門家も否定する。
諸説あるが、膝を揺すっている姿が貧しくて空腹や寒さにふるえている様子に似ていると嫌われた貧乏ゆすり。
後ろ向きのイメージを返上できる日が来るかもしれない。  (新井重徳)

《ホームページ》
変形性股関節症の治療をしているのは
 「柳川リハビリテーション病院」
http://www.kouhoukai.org/yanagawa/
◆深部静脈について分かりやすく解説しているのは
 「血管外科(さいたま市立病院)」
http://www.asamikekkan.jp/sinnbujyoumyakukessennshou.html

出典 日経新聞・朝刊 2012.4.8(一部改変)
版権 日経新聞


<自遊時間 その1>
デッドゾーンに突入した。
巨人は今季2度目の5連敗で、球団史上では優勝例のない借金7。
■開幕前から“緩い”空気は不安視されていた。
チーム内からは「若手が失敗しても怒るコーチがいない」と声が上がり、キャンプで早々と練習を切り上げる選手を見た他球団のスコアラーは「こんなチームに負けたくない」とささやいた。
http://www.daily.co.jp/baseball/2012/04/23/0004995501.shtml

<自遊時間 その2>
昨年7月に東大で学際的な討論会「震災、原発、そして倫理」が開かれた。
討論者の一人で医師の中川恵一はこう語る。
「(患者さんと向き合う中で)心配する必要がないときは、安心してよいと伝えたいのです」
原発事故発生当初、政府が繰り返した「ただちに健康に害を与えるものではない」という言葉と通底するものが感じられる。
これに対し、内科学、分子生物学を専門とする児玉龍彦は次のように言う。
「線量の問題というよりも、(放射線によって)遺伝子の切れる場所がどこかということです」
線量が低くても、DNAのどこが切れるかによって深刻な健康障害が発生するというのだ。
低線量被曝の問題は「政治、産業、軍事、歴史、法学、哲学、倫理、社会心理、情報学など」へと広がっている。
放射線の影響をどう語るか。
今こそ、人知と人倫(モラル)が試されている。
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012042300005.html(一部改変)


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