骨粗しょう症(1)月1回の新薬で改善

注射薬で骨密度高める

大分県豊後大野市の主婦A子さん(80)は昨年3月、腰などに痛みを感じ、市内にある、みえ記念病院を受診した。

「農作業などで腰をかがめると、じりじりするような痛みがありました」

エックス線検査を行うと、骨がもろくなって背骨の継ぎ目がつぶれる圧迫骨折が見つかった。
背骨と太ももの骨の骨密度を測ると、若年成人(20~44歳)の平均値の60%しかなく、骨粗しょう症と診断された。

骨は、内部で古い組織を壊すとともに、新しい組織を作ることで強度を保っている。
骨粗しょう症は、加齢によって、このバランスが崩れるなどして骨の量が減り、骨折しやすくなる状態だ。
骨密度が70%未満であったり、骨の量が減ったことによる骨折があったりすると診断される。

A子さんは、骨の組織が壊されるのを強力に抑える働きがある「ビスホスホネート製剤」を毎日、飲むことになった。
骨粗しょう症の代表的な治療薬だが、食道や胃などの荒れや、胸やけといった副作用が出ることが少なくない。

A子さんも服用後2、3日してから、胃がキリキリと痛むようになった。

「飲むとしばらく胃の痛みが続くのがつらくて、あまり飲まなくなりました」

そのためか、9月に測った骨密度は治療前とほとんど変わっていなかった。

ちょうどこの月に、月1回だけ飲むタイプのビスホスホネート製剤が発売された。
主治医で同病院副院長の下田順一さん(整形外科)から、この薬に替えることを提案され、早速、使ってみることにした。

毎日、胃の痛みに苦しめられることはなくなり、「今はきちんと薬を飲むことができ、骨密度を測るのが楽しみになりました」とA子さん。
今月、骨密度を測ると、64%に上がった。

下田さんは「ビスホスホネート製剤の服用者の中には、胸やけや胃痛を訴え、服薬をやめてしまう人が少なくない。新タイプの登場で治療を中断せずにすむ患者さんが増えると思います」と期待を寄せる。

骨粗しょう症の治療薬は、ビスホスホネート製剤のほか、同じような働きがある別の薬や、骨の主成分のカルシウムの吸収を助ける薬など、様々な種類がある。

国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)臨床研究推進部長の細井孝之さん(内科)は「骨の組織を作ったり壊したりするメカニズムがこの10年間で解明されつつあります。新薬も続々登場し、患者さんの病状などに合わせた治療ができるようになってきています」と話す。

骨粗しょう症の患者は推計1280万人。
高齢化の進展により今後も増えると予想される。

出典 読売新聞 2012.4.17
版権 読売新聞社


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オアフ島・コオリナ 2012.3.18 11:41 撮影


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