骨粗しょう症(2)注射薬で骨密度高める

骨粗しょう症の治療薬は、骨の組織が壊されるのを抑える薬が中心だが、骨を作る働きを促す新しいタイプが、近年登場している。

長野県小海町の主婦、B子さん(70)は15年前、骨粗しょう症と診断され、これまで腰や背中の痛みに悩まされてきた。

骨粗しょう症になると、背骨の継ぎ目がつぶれて圧迫骨折を起こし、痛みに襲われることが多い。

B子さんは、骨の強度の低下を防ぐため、骨が壊されるのを抑える「ビスホスホネート製剤」などを服用していた。
だが、なかなか治療の効果は表れず、次々と背骨に圧迫骨折が見つかった。
152センチあった身長は5センチ縮んだ。

2010年10月、受診している主治医に、同月、発売されたばかりの新薬に切り替えてみてはどうかと提案された。

この薬はテリパラチド(商品名フォルテオ)という注射薬。
骨を作る「骨芽細胞」の活動を促進させる、今までになかったタイプの薬だ。
「注射薬であることに抵抗はありました」とB子さん。
だが、骨が強くなるのであれば、との思いから、使うことにした。

フォルテオは毎日1回、自分でおなかなどに注射する。
B子さんは診療所で注射の仕方を教わり、朝食後に注射をすることにした。

いすに座って片足を上げたり、「片足立ち」をしたりといった軽い運動も、毎日欠かさず行っている。

薬や運動の効果が出たのか、骨密度は少し高くなり、今のところ、新たな骨折は見つかっていない。

B子さんは「もう少し暖かくなったら散歩もしたい」と意欲を見せる。

テリパラチドは、骨粗しょう症が原因で骨折したり、骨密度が著しく低下したりと、症状が進んだ患者が対象の治療薬だ。

様々な治療薬を使っても骨が強くならなかった重症患者への治療効果が期待できる。

昨年11月には、週1回注射する新しいテリパラチド「テリボン」(商品名)も登場。
治療の選択肢が広がっている。

ただ、テリパラチドは薬代が月約1万5000円(3割負担の場合)かかる。

また、ラットによる試験で、骨肉腫の発症率が高まるという結果が出ている。
こうした面での安全性も考慮し、フォルテオは24か月、テリボンは18か月しか使用できない。

使用期間が終わって別の治療薬に切り替えた後、骨の強度がどう変化するかはまだ、わかっていない。
強度を低下させないよう、治療をどう続けるかが、今後の課題だ。

出典 読売新聞 2012.4.18
版権 読売新聞社



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