インフルエンザ 飛沫でない「空気感染」リスク

インフルエンザ 飛沫でない「空気感染」リスクも

インフルエンザは主に、感染者のくしゃみや咳(せき)と共に飛び散った、ウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染する「飛沫感染」か、ウイルスが付着したものを触った手指を介して感染する「接触感染」のいずれかによって広まると考えられていた。
 
しかし、このほど米国の研究者たちが行った研究で、インフルエンザの感染者が咳やくしゃみをしていなくても、その患者の吐く息を吸い込んだだけで「空気感染」が起こる可能性が指摘された。
感染者の呼気に含まれる微細な粒子にも感染性のあるウイルスが含まれており、そのために、直接患者の咳やくしゃみを浴びなくても、同じ室内にいるだけでも、感染が起こり得るというのだ。

インフルエンザの患者が吐く息にはウイルスが含まれている
研究者たちは今回、インフルエンザが疑われる若者355人を選び出し、呼気の中に排出されるインフルエンザウイルスの量と感染力を調べた。
 
355人のうち、インフルエンザと診断され、発症から3日以内に鼻の粘膜から標本(鼻咽頭スワブ)が採取されていて、同時に30分間の呼気も提出していた142人を分析対象にした。
142人の年齢の中央値は20歳、男性が49%で、89人がA型、50人はB型、3人は両方の型に感染していた。
これらの患者は、発症から3日以内に計218回受診して、標本の提出に協力していた。

218回の受診のうち、195回(89%)の受診では1回以上の咳が観察されていたが、くしゃみが観察されたのは11回(5%)のみだった。
多くの患者は、咳、鼻水などの「上気道症状」は軽症から中等症で、全身症状は中等症から重症、痰、気管支炎などの「下気道症状」は軽症だと報告していた。
 
呼気の採取は、自由に話したり、咳やくしゃみをしたりする中で30分間行った。
呼気標本は、空気感染の原因となる「飛沫核」と同じ大きさの直径5μm以下の微細粒子が含まれる標本と、飛沫感染の原因となる「飛沫」と同じ大きさの直径5μm超の粗大粒子を含む標本に分けた。
 
標本中にインフルエンザのウイルスRNAが存在するかどうかを調べたところ、微細粒子の標本の76%、粗大粒子の標本の40%、鼻咽頭スワブ標本の97%が陽性だった。
さらに、感染性を持つインフルエンザウイルスの存在を調べたところ、微細粒子標本の39%と鼻咽頭スワブ標本の89%が陽性だった(粗大粒子の標本についてはこの検査は行えなかった)。
 
微細粒子の標本中にウイルスRNAが存在することと関係していた要因は、「呼気採取中の30分間に出た咳の回数」「上気道症状あり」「症状発現から経過した日数が少ないこと」などだった。
つまり、咳や鼻水などの上気道症状が出ている、発症早期のインフルエンザ患者ほど、呼気中にウイルスが含まれていて空気感染を起こす可能性が高いということが考えられます。
 
なお、呼気採取中に、くしゃみはまれにしか見られておらず、感染性のある微細粒子の産生にくしゃみは必須ではないと考えられました。
 
この研究で得られた結果は、インフルエンザ感染者が普通に呼吸しているだけで、ウイルスが吐き出され、それが感染を広げる可能性があることを示した。
狭い空間での感染を防ぐには、こまめな換気を心がけ、インフルエンザに感染した可能性がある人は、できるだけ自宅で静養して人との接触を避けた方がよさそうだ。

飛沫感染と空気感染の違い>
飛沫感染
ウイルスなどの病原体を含む水分の粒子(飛沫;直径5μm超)を吸い込むことで起こる感染。
飛沫は水分を多く含むため、1~2m飛ぶと落下してしまう。

空気感染
飛沫の水分が蒸発した小さな粒子(飛沫核;直径5μm以下)を吸い込むことで起こる感染。
飛沫核は飛沫よりも小さく、長時間空気中を漂うため、より広範囲の人々に感染を広げる危険がある。
空気感染でうつる感染症の代表例は、はしか(麻疹)、水ぼうそう(水痘)、結核など。

参考・引用
日経Gooday 2018.2.26


<私的コメント>
長年にわたって開業医をしていますが、A型とB型の同時感染は今シーズン1例経験しただけです。
症状のごく軽い方で高感度の検査器で微量のウイルスがやっと検出された症例です。
この記事では142人中3人と約2パーセントにみられたんですね。