遠隔診療

遠隔診療、普及に向け実験加速 生活習慣病を指導

スマートフォンスマホ)などを使い、医師がインターネットなどを介して患者を診察する遠隔診療の実証試験が相次ぐ。
医師紹介のMRTや健康管理支援のウェルビー(東京・中央)がそれぞれ、患者の行動への影響を調べる試験を始めた。
2015年に厚生労働省が方針を明確にして遠隔診療は広まり、18年度の診療報酬改定では増額が決まった。
実験で治療効果や医療費抑制につながる成果を示せば、さらなる普及につながる。

ウェルビーは17年12月から糖尿病患者を対象に遠隔での食事指導を始めた。
通常は毎月1回、3カ月間継続する指導のうち、2カ月目をスマホを通じたやり取りに置き換える。
 
患者は同社の健康管理アプリ「ウェルビー マイカルテ」を利用する。
スマホのカメラで撮影した食事内容をもとに、埼玉メディカルセンター(さいたま市)の栄養士が指導する。
参加したさいたま市在住の40代女性は「食事前にスマホで写真を撮るだけで手軽。対面ではメモを取れないような内容をメッセージで教えてもらえる」と話す。

通院の負担軽減
患者の行動変容を促せれば、定期通院による患者の負担を軽減し、治療の継続率を高める効果などを期待出来る。
 
糖尿病などの生活習慣病は自覚症状がなく、治療の継続率が低い。
遠隔診療で治療を中断しそうな患者をつなぎ留められれば、人工透析に至る患者を減らして医療費の削減にもつながる。

遠隔診療が役に立たない場合は、ある程度はっきりしているようだ。
患者の行動変容の段階には5つの段階がある。
6カ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思のある「第2ステージ」以上の患者は改善を促しやすい。
 
だがそもそも行動変容の意思がない「第1ステージ」の患者の生活習慣を改善させるのは難しい。
これは遠隔診療でも変わらないわけだ。
 
ウェルビーなどは実証試験の結果を踏まえ、今後さらなる臨床研究も検討する。
患者に医療行為にあたる指導をする介入群と、指導をしない非介入群とに分け、厳密に治療効果を測る。

MRTは北海道のある病院と組み、18年2月から実証試験を始める。
高血圧や糖尿病の患者約10人の再診を対象に、約半年実施する予定だ。
 
患者は同社の提供するアプリ「ポケットドクター」を使い、テレビ通話で医師とやり取りする。
患部の拡大写真を医師に見せたり、医師が画面上に赤線を描いて指示を与えたりできる機能がある。
このアプリはすでに全国で400件以上の導入実績があるという。

「オンライン」新設
実証試験の対象地域には病院が少なく、冬場は積雪で通院しにくい。
実証試験では、遠隔診療で患者が定期的な診察を受けやすくなるかを検証する。
 
従来の制度では遠隔診療の診療報酬は低く、対象範囲も限られた。
病院は1回720円の電話再診料と呼ばれる分しかもらえず、専門医が勤務するような200床以上の大病院は制度の対象外だった。
 
このほど決まった18年度の改定では「オンライン診療料」などが新設され、病院側は計1700円を受け取れるようになる。
ただ定義し直された電話再診料と新設のオンライン診療料とのすみ分けが不明瞭だという指摘もある。
 
「難病や希少疾患など専門医が近くにいないような疾患こそ、通院の困難を遠隔診療で支援する必要がある」と強調する専門家もいる。

各社は実証実験などを通して実績を作り、遠隔診療の普及や、さらなる診療報酬改定などに向けた後押しをする狙いだ。
遠隔診療が広まれば、各社のシステムの普及にもつながる。
利便性を訴えるだけではなく、医療費抑制につながる効果を示そうとしている。
 
ある調査会社によると、遠隔診療と関連システムなどを含む国内市場は、19年度に199億円になると見込まれる
診療報酬の改定によって市場がさらに拡大する可能性もありそうだ。

「離島など限定」→次第に範囲拡大 SNSも利用可能に
遠隔診療の対象範囲は従来、厚生労働省の通知の中で例示した特定の疾患や、離島やへき地などに限られると解釈されていた。
転機は2015年8月で、厚労省は通知で示した疾患、離島やへき地は例示にすぎないという事務連絡を出した。
これが事実上の解禁と受け止められ、遠隔診療関連のスタートアップが相次ぎ参入した。
 
厚労省は17年7月には患者の心身の状態について有用な情報が得られることを条件に、テレビ通話や交流サイト(SNS)も利用できると範囲を明確にした。
ただ、現行制度では対象患者は実質的には再診以降に限られ、外来患者の対面診療に比べて診療報酬は低くなっている。
 
例えば、テレビ通話などを駆使した遠隔診療サービスの利用料は病院側が企業に支払う。
月額3万円程度のサービスが多い。
遠隔診療の診療報酬から利用料以上の収入を得るには1日1~2人の患者を診る必要がある。
医師の人件費を考慮すると、さらに多くいる。
 
18年度の診療報酬改定では、オンライン診療料などが新設された。
例えば、生活習慣病で毎月外来を受診する場合、ある月は対面、別の月は遠隔と組み合わせて受診できるようになる。

参考・引用
日経新聞・2018.2.12


私的コメント
医療もついにここまで来たかという感じがします。
一見結構なようなお話ですが、気をつけなければ点があります。
おそらく最初は、離島などの「僻地診療」から思いつかれたアイデアだと思われます。
「遠隔診療」という言葉がそれを表していると思われます。
しかし、国側は途中から医療費節約になるということに気づいたのではないでしょうか。
表向きは患者さんの利便性を鑑みての制度の見えますが、結局は医療内容の「安直化」です。
内科でいえば、聴診や触診や検査なしで診断はその結果としての投薬を行えということになります。
ここにこそ(現場を知らな医療については門外漢の)官僚の発想の大きな落とし穴があります。
「風邪の場合には医療機関にかからずに、かかりつけ薬局で風邪薬を購入するように」という発想の延長線上に、この発想があるのです。
風邪の診断はいろんな病気の除外診断が必要なのです。
溶連菌感染症マイコプラズマ肺炎や、感染力の強いインフルエンザや麻疹・水痘・流行性耳下腺炎や夏風邪(プール熱など)などを除外して初めて診断されるものなのです。

投薬も、宅急便で自宅まで配送するぐらいでないと便利な制度とはいえません・

「遠隔診療」という言葉は今後の普及を狙って、やわらかい名前に変わることが予想されます。
医療機関側は安易に飛びつくのではなく、本来の患者さんとの血の通った地域医療を基本とすべきものではないでしょうか。
今回の記事でもわかる通り、この制度に真っ先に飛びついたのは民間の(ベンチャー)企業です。
医療を実施する医療機関側こそ慎重に対応するべきです。
院外処方」の制度も同様で、患者さんにとって利便性や医療経済性においてもデメリットが多いことに多くの医療機関は「頬被り」を決め込んでいます。


最後に、下世話な話になりますが医療機関への患者さんの支払いはどのようにするのでしょうか。