かかりつけ医

かかりつけ医、根づくか   日医が研修制度 税制など後押し

身近な診療所などで、どんな病気にかかってもまずは診てくれる「かかりつけ医」。
時に往診もして患者の健康を管理し、自宅での療養を支える。
国は普及に注力。
4月に紹介状無しで大病院に行くと追加負担が必要になり、かかりつけ医がいる診療所の税制上の優遇も検討されている。
ただ肝心の医師の育成という課題は大きい。
欧州のように広く定着するだろうか。

症状を診て必要なら大病院を紹介。
衣服の乱れなどから認知症が疑われれば家族や地域包括ケアセンターに連絡、対応を相談することも仕事の一つだ。
医療が高度化する中で交通整理するのが役割を担う。
 
かかりつけ医は様々な病気の診断や初期症状への対応が第一の役割だ。
症状に応じ高度な病院に橋渡しするほか、介護が必要な患者のため日ごろから関連施設との連携も欠かせない。
 
日本医師会四病院団体協議会
(1)何でも相談できる
(2)必要なときは専門医を紹介
(3)地域医療・保健、福祉を担う能力を持つ医師
・・・と定義する。

高齢化社会では入院から自宅療養へのシフトが必要で、在宅医療の担い手としてより重要になる。

医療費抑制狙う
普及が急がれる理由はそれだけではない。
大病院は多くの診療科や高度な機器がそろうが、症状が軽い患者が集中すれば待ち時間が長くなるなど重症患者にしわ寄せがいく。
医師や看護師などの負担も大きい。
 
これらの緩和に加えて医療費抑制も期待される。
多くの疾病を的確に診断できる医師がいれば、1つの病気で医療機関にいくつも通って似たような薬が処方されたり、同じ検査を受けたりするのを防げるためだ。
 
「まずは診療所で受診」を促すため、4月の診療報酬改定で紹介状のない患者が大病院を受診すると、5000円以上の追加料金を取られるようになった。
さらに厚生労働省は8月にまとめた2017年度の税制改正要望で、かかりつけ体制がある診療所の不動産取得税や固定資産税を軽くするよう盛りこんだ。
 
かかりつけ医は英国やフランスなどが制度化。
1948年開始と歴史ある英国では、居住地域の診療所からかかりつけ医を選ぶのが義務だ。
そこを受診せずに大病院にはかかれない。
かかりつけ医は完全予約制で待ち時間がなく、必要なら次にどの病院を受診すればいいか選んでくれるという。

欧州に後れ
経済協力開発機構OECD)によると、日本人は1人あたり年12.9回、医師の診察を受ける。
かかりつけ医が定着する英国の5.0回、ドイツの9.9回に比べ多い。
 
通院や検査の無駄を省くには、幅広い症状を診る「総合力」を持つ医師の育成が不可欠だ。
日本ではこれまで専門医養成が重視され、こうした医師は限られた。
日本医師会総合政策研究機構の14年8月の調査では、「かかりつけ医がいる」のは全体の53.7%にとどまっている。
 
このため日医は4月、「かかりつけ医機能研修制度」をスタート。
3年間で生活習慣病認知症緩和医療、リハビリなど様々な分野の研修会で計10単位を取得し、訪問診療や介護認定審査会への参加など実地研修も必要だ。
要件を満たせば都道府県医師会から修了書などが発行される。
 
ただ施策がうまく機能するとは限らない。
複数の生活習慣病を持つ患者のかかりつけ医になれば収入が手厚くなる「地域包括診療料」。
14年度に導入されたが、同年7月時点の届け出は全国122施設と医療機関の0.1%だった。
18府県でゼロだ。
診療所でも常勤医を3人置く必要があるなど条件が厳しいためで、今年4月の診療報酬改定で常勤医は「2人」に緩めた。
 
誰もがいつでも自由に医療機関を選び受診できる「フリーアクセス」は国民皆保険制度の根幹で、英国のような義務化はハードルが高い。
診療所へのインセンティブなどで体制が整うかは不透明だ。

 
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参考
日経新聞・朝刊 2016.9.11




 
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               「中秋の名月」    2016.9.15 20:48 撮影
                           (本当の満月は9月17日)