病理外来 じわり拡大

病理外来 じわり拡大 見て病状納得「治療前向きに」

細胞や組織を顕微鏡で観察して診断をする病理医と患者が直接、話をする「病理外来」が少しずつ広がっている。
病理医は「医師のための医師」とも呼ばれ、従来は患者と接する機会はほとんどなかった。
だが、自分の目でがん細胞の写真などを確認しながら病理医による診断結果の説明を聞くことで、患者が納得し、治療に前向きになるなどの効果が期待されている。

日本病理学会が病理外来に関して全国調査を実施したところ、3月現在で、病理外来が「ある」または「開設予定」と答えた病院は25カ所。
近年、病理外来がある病院について学会に問い合わせが入るようになり、実施された。
 
その一つ、東京逓信病院(東京都千代田区)は2007年に設置した。
「患者が納得して医療を受けるために少しでも役に立てば」という考えからだ。
 
約5年前、他の病院で良性の前立腺肥大と診断され、薬物治療中の男性が病理外来を訪れた。
前立腺がんの腫瘍マーカーPSAの値は基準以内だったが、前立腺にしこりが見つかり、組織を採取して調べる針生検で、「腺がんの可能性がある」と診断されていた。,
 
担当医(病理)は、顕微鏡やモニター画面を持ち込んだ個室で男性とその妻と面談。
前立腺がんの特徴や、生検でどのくらいの範囲から組織を採取できるかを説明した。
そのうえで、「病巣は非常に小さいので、早急に何らかの治療が必要な状態ではないと思われます。治療や経過観察の方法は泌尿器科医と相談して下さい」と話した。
 
男性は受診後、「(最初の病院の)担当医の説明と病理診断書では理解できなかったが、病理の先生に説明してもらい理解できた」とアンケートに答えた。
 
この担当医(病理)によると、受診理由は、「自分を苦しめているがんをこの目で見たい」「病巣が取りきれているのかなど、標本を見ながら説明してほしい」などが多いという。
 
診療にかかる時間は30分 ~1時間。
同病院の場合、院内の患者が受診する場合は追加費用はかからない。
セカンドオピニオンの場合は自由診療のため1時間で2万円だ。
 
外科や内科とは違う立場の病理医が患者さんに標本などを見せながら説明することで診断に納得し治療に前向きになってもらうのが目的だ。

都道府県ごとにあれば」
病理外来は03年に初めて、日本医大病院で始まった。
 
呉医療センターでは2006年に病理外来を開設し、年約60~80人のがん患者が受診する。
病理医との面談で病気の理解や気持ちの整理ができた患者に対し、その効果を高め、不安を和らげる目的で、緩和ケア認定看護師がカウンセリングをするのも特徴だ。
 
全国で病理専門医は約2300人いる。
ただ、院内に病理医がおらず、外部に診断を委託する医療機関も珍しくない。
病理医の不足を指摘する声もある。
 
病理外来は病理医が3人くらいいる病院でないと実現が難しく、全ての病院にある必要はない。
せめて都道府県ごとに1ヵ所欲しい。
病理医は前面に出るのではなく、患者に寄り添い、主治医をサポートする姿勢でいることが重要だ。
 
病理外来がある病院のリストは近く、日本病理学会がホーームページ(http://pathology.or.jp/)で公開する予定となっている。  

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.5.24

 
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