起立性調節障害

朝起きられない・・・病気かも 自律神経の不調で症状様々 思春期に多く

体調が悪くて朝起きられず、学校に行けない――。
そんな子どもは「起立性調節障害」(OD)という病気かもしれない。
一般的には思春期に発症し、春から夏にかけて症状が強まる傾向がある。
怠け癖や夜更かしのせいだと決めつけず、病気を理解することが大切だ。
 
高校2年生の女子生徒(16)の体に異変が現れたのは、中学3年の春ごろだった。
朝、ベッドの中で目が覚めても体がだるくて起き上がるのがつらい。
やっと起き上がっても動悸がして息苦しく、登校中に坂道で座り込んでしまいたいほどだった。
 
「インフルエンザで高熱が出た時みたいにだるい。気持ちは、部活にも学校にも行きたいのに、体はずっと寝込んでいたいぐらいつらい」
 
バレー部に所属していたが、午後から登校する日や欠席する日が増えた。
近所の小児科を受診すると、ODの疑いがあるという。
その年の冬、大学病院の小児科で最終的にODと診断された。

「このままでは全日制高校に行っても留年することになるだろう」と考え、午後からでも通える定時制に進学。
今も体調は安定しないが、以前よりは改善しており、「体調の様子を見ながら、自分の夢を追っていきたい」と話す。

立ち上がった時に重力で血液が下半身に移動して脳への血流が低下するのを自律神経の働きで戻すことで、血圧は保たれている。
ODは自律神経がうまく働かず、さまざまな症状が出る。
 
春から夏にかけて気温が上がると血管が拡張しやすく、症状が強くなる一因とみられる。
起立後に下がった血圧が元に戻るまでの時間を測るなどして診断する。
 
適切な治療を受ければ、軽症なら数カ月以内に改善するが、重症なら症状は年単位にわたって続き、成人になっても残る人がいるという。

周囲の理解が必要
ODの特徴は、症状が変動することだ。
午前中に体調が悪くても午後には改善することが多い。
このため、家族など周囲から「怠けている」と思われがちで、適切な治療につながらないケースもある。
 
まずは体の病気として理解することが大切。
「気持ちの問題」と言われて、適切な治療が遅れかねない。
水分や塩分を適切に摂取するといった生活療法のほか、血圧を下げないようにする薬などが効く人もいるという。
 
症状は個人差が大きく、周囲にはわかりづらい。
精神的なストレスで悪化することもあるため、保護者や学校関係者など周囲の理解も必要だ。
親子関係や進路に悩む場合も多く、各地で患者や保護者らが参加する交流会も開かれている。
 
OD患者を支援するNPO法人起立性調節障害の会」が3月に千葉県内で開いた交流会では、患者の母親たちから「初めは『ふざけているの?』と思い、無理をさせてしまった」「『みんなできるんだから、あなたもできるでしょう』と言ってしまったことがある」といった経験が明かされた。
 
「あの声かけはよくなかったのでは、と後悔している親は多い。
ODと早くわかり、患者も家族も正しく病を知れば、親子の間の誤解も防げる。

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起立性調節障害 
循環に関する自律神経の働きが悪く、起立時に体や脳への血流が低下して立ちくらみやめまい、倦怠感などの症状が出る。
小学校高学年から増え、中学生で急増する。小学生の5%、中学生の10%程度が該当するとみられ、思春期に体が急成長する影響と考えられている。
不登校の子どもの3~4割がODを伴っているという調査結果もある。


起立性調節障害(OD)の主な症状
三つ以上当てはまるとODの可能性がある

◻︎ 立ちくらみやめまいを起こしやすい
◻︎ 立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
◻︎ 入浴時や嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
◻︎ 少し動くと動悸や息切れがする
◻︎ 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
◻︎ 顔色が青白い
◻︎ 食欲不振  
◻︎ おへその周囲の痛みが時々ある
◻︎ 倦怠感がある、疲れやすい
◻︎ 頭痛 
◻︎ 乗り物に酔いやすい

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.5.24