「喫煙=肺がん」の落とし穴

毎年5月31􏰀日は、世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」だ。
厚生労働省は 5月􏰀31日~6月6日を「禁煙週間」と定めて、普及啓発をしている。
子どもの喫煙は特に問題で、中学生から吸えば、肺が んによる死亡率は􏰂倍になる。
がん対策推進基本計画でも「未成年者の喫煙をなくす」ことを目標としている。
たばこの問題は受動喫煙だ。
たとえば家族に喫煙者がいれば、たばこを吸わない人でも煙にさらされる。
同じ家で暮らす夫婦では、夫が1 日で1箱以上吸えば、たばこを吸わない妻も肺腺がんの危険は約2倍になるとの研究がある。
子どもがいれば、がん以外にもぜんそくや中耳炎 などのリスクを増やす。
たばこのパッケージには、 喫煙がもたらす健康被害に関 する表示が義務付けられているが、がんについては「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります」という文言があるだけだ。
しかし、たばこの煙に含まれる数十種類もの発がん物質は血液に溶けて全身に運ばれる。大腸がんや、乳がん、子宮体がんなどを除くほぼすべての部位のがんを増やすと考えられる。
日本人男性の場合、喫煙によって肺がんにかかるリスクは4.8倍になるが、喉頭がんでは5.5倍、膀胱などの尿路系のがんでも5.4倍になる。
パッケージの表示でも、肺がんに特定せずに「喫煙はがんの原因となる」に改めるべきだ
ヘビースモーカーの人が、肺がん検診ばかり受けて、他のがんで命を落とす悲劇も珍しくない。
世界禁煙デーをきっかけに、みんなで禁煙に挑戦しよう。
東京大学病院・中川恵一 准教授)

参考・引用
日経新聞 2016.5.26


 
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