かかりつけ医 どう選ぶ?

自宅・職場から楽に通院 かかりつけ医、どう選ぶ?

施設が整い、専門医も多くいる大病院には大きな安心感がある。
一方で、診療までの待ち時間が長く、自宅や職場からすぐに通えるとは限らない。
不便さの一部は、自分が住んでいる町の医療機関の医師を「かかりつけ医」にすることで解決できるかもしれない。
かかりつけ医を持つメリットと、その上手な見つけ方とは・・・

かかりつけ医の長所は、まず体質や病歴など自分の体全体についてよく知っているということだ。
変調を早めに把握できて、病気も見つけやすくなる。
 
納得できる診断が得られないからといって、大病院などの専門科を次々に渡り歩く人もいるが、好ましいことではない。
様々な医療機関で診療を受けている間に病状が悪化する可能性もある。
 
高齢になるほど、複数の病気や慢性疾患を患うケースが増えてくる。
そうした場合には「病状を見ながら持病を悪化させず、上手につき合うための手だてを講じることが大切。薬や検査の重複も避けられるので、一人の医師が診るのが望ましい。
 
家族全員で一人のかかりつけ医を持っているなら、全員の病歴や家庭環境、嗜好なども把握したうえでの診察が期待できる。
他の家族の病気について、気軽に相談できるのも、継続的な付き合いのある医師が相手だからこそだろう。

待ち時間短く
小さな病院、医院のいいところは、診療を受けるにあたって待ち時間が比較的短く、手続きも簡単に済むところが多いことだ。
 
では、どのようにかかりつけ医を見つければよいのか。
 
まず大切なのは、地の利だ。
家や職場から近いと、生活習慣病などで定期的に通院が必要なときや急病の際に便利。
また、予防接種や介護関連では、居住地により受けられる行政サービスが異なることがある。
そうしたときに、家に近い医療機関であれば地域の情報に精通しており、近くの大病院とも連携もしやすい(病診連携)。
また、疾病の流行の様子についても把握できている。

患者の訴えをじっくり聞いてくれて、それに対してわかりやすい説明ができるかという点も重要だ。
しっかりと話を聞くのは、患者の情報を集めて適切な対応をしたいという思いの表れでもある。
短時間でも訴えのポイントを聞き逃さず、質問に対して素早く論理的に説明してくれる医師が望ましい。
「たぶん大丈夫でしょう」などとあいまいな対応をしないかもチェックしたい。

すぐにはっきりした診断が下せず、様子をみることになっても、あらかじめ重篤な病気が隠れている場合の具体的な症状を説明し、症状があれば受診を促してくれることも大切だ。
そのような医師は、多様な病気を疑って鑑別できているということでもある。
 
また、より専門的な治療が必要だと判断したとき、適切な医療機関を速やかに紹介してもらえるかも、おさえておきたい。
単に近い大病院だからということでなく、その人の症状、医師との相性なども見極めた上で紹介してくれるのが理想だ。
 
私的コメント;
紹介する側も、ただ「◯◯病院へ紹介します」と言って紹介状を書くのではなく、「この先生が『みたて』がいいから何曜日の第◯診察室の◯◯先生に診察を受けてください」といった書き方が大切です。
「よく知っている先生だから」とか「大学の同級生(先輩、後輩)だから」といった紹介先は少し心配です。
私は紹介状を渡す際には「第◯診察室の◯◯先生が混んでいても診察まで我慢して待っていること。優秀なナースが『他の診察室が空いているからそちらにしませんか』と声をかけてくることがあるけど、その手には乗らないように」と患者さんに声掛けします。

子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者を診ていればなお、好ましい。
家庭の全員の診断を任せようと考えるならば軽視できない点となる。
生活習慣を改善していくうえで、禁煙指導など予防的な指導を積極的にしてくれるかどうかも、かかりつけ医を選ぶ際の判断材料となるだろう。

相性にも注意
それから忘れてならないのは医師との相性だ。
もちろん技量も大切だが、正直にいえば患者が医師の技量を量るのは難しい。
どういう人を信頼できると思うかは人それぞれ。
口コミで評判が良い医師が自分には合わないケースもある。
まずは第一印象で好感が持てるかで判断するのも一つの方法だ。
 
ある調査によれば、40~44歳でかかりつけ医がいる人の割合は約34%にとどまる。
若い世代でもかかりつけ医が必要だ。

私的コメント;
最近「かかりつけ薬剤師」「かかりつけ薬局」という言葉を耳にします。
政府の方針で、患者さんが薬局を「かかりつけ」に指名(認定)した場合には、薬局側に調剤時に加算をつけることになっています。
しかし、「かかりつけ医」についてはあまり積極的な動きはありません。
不思議なことです。
医師も薬剤師もフリーアクセスが好ましいはずで、加算がつけば「かかりつけ」の「囲い込み」が必ず起きます。
いずれにしろ、患者さんは「よい医療機関」を選択する選球眼を養っていただきたいものです。
また、病気知らずの方や若い方に「かかりつけ医」がいることの方が不思議です。
風邪にかかった際などに近所の医療機関を受診し「品定め」をしておくことも決して無駄な投資にはなりません。

現代生活で増えているメンタル関連の疾患や、アルコールや喫煙といった嗜好に関わることや出産、育児などについても適切なアドバイスを受け、健康な生活を維持するのに役立つ。

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「紹介状なし」は費用負担増へ
厚生労働省は、紹介状を持たずに大病院に来る人の負担を増やす方針を打ち出した。
初診、再診にかかわらず追加の定額負担が必要になる案を今月、社会保障審議会に示した。
設備が整い専門医が多くいる大病院が、救急や重症者の診療に力をいれることができるようにするためだ。
 
紹介状なしに大病院を受診する人で、専門医の治療が必要なのは一部だ。
軽症の人への対応で医師が疲弊すれば、本当に治療しなければならない人に医療を提供できなくなりかねない。
国の施策とあいまって、かかりつけ医の重要性は、今後一段と大きくなりそうだ。

参考・引用
日経プラスワン 2014.10.25