風邪に抗生物質を使わない病院に報酬

風邪に抗生物質、使わない病院に報酬 耐性菌の抑止策

厚生労働省は誤った使い方によって薬が効かなくなる「耐性菌」の広がりを抑えるため、医師が乳幼児の風邪や下痢に抗生物質を使わずに適切な説明をすれば、医療機関に報酬を支払う新たな仕組みを設ける。
4月からの診療報酬改定に盛り込む。
 
国内でよく使われている抗生物質には、セファロスポリン系のフロモックスやフルオロキノロン系のクラビットマクロライド系のクラリスなどがある。
肺炎などを引き起こす細菌を壊したり増えるのを抑えたりするが、ウイルス性の風邪やインフルエンザには効かない。
耐性菌は人の体内や環境中に一定数存在する。
抗生物質を使って他の菌を死滅させても、耐性菌は生き残り増えてしまう。
 
厚労省によると、2015年に全国の病院で見つかった黄色ブドウ球菌の48.5%が耐性菌だった。
厚労省はこの割合を20年に20%以下とする目標を掲げ、17年には抗生物質適正使用の手引を作った。軽症の風邪や下痢に使わず、細菌感染が疑われる重症例に限るよう勧めている。
 
4月以降、風邪や下痢で初診の3歳未満に、手引に基づき抗生物質が不要と医師が判断した場合に病院や診療所側に800円が支払われる。
幼いと副作用が出やすいため、この年齢層から始めるという。
患者側は2割(未就学児)を支払う。
保護者らが薬を求めれば、「ウイルスに効かない。副作用が出たり長引いたりする場合がある」「大部分は自然に良くなる」といった説明で理解を促す。
 
病院内で抗生物質を適正に使うよう教育したり、耐性菌の発生率を調べたりする医師、薬剤師らのチームを設置した場合の報酬も新たに設ける。厚労省の担当者は「抗生物質の使用を最小限に近づけていきたい」と話す。

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2018.2.18

私的コメント
まったくもって馬鹿げたことを真顔で考えるものです。
開いた口が塞がりません。
そもそも、抗生剤を使用しないと未就学児の場合は800円。
そのうち2割の160円を患者家族が負担。
中学生以下、無料化(自己負担なし)の流れに反するものです。
医療側もそんな自己負担分を請求することは出来ません。
なんでも、お金(鼻先の人参)で医療側を誘導しようとする政策は大いに問題です。
私は、無料(つまり800円の請求なし)で従来通り診療します。

「軽症の風邪」と最初思われても白血球を調べると増加していて溶連菌などの細菌感染であることはいくらでもあります。
診療側の診断能力の質が担保されていればいいのですが、実際はそうではありません。
「風邪」つまり「普通感冒」の診断は、インフルエンザや溶連菌感染症マイコプラズマ感染症などを除外して初めて診断がつくのです。
他に(ウイルス感染症ではありますが)伝染性単球症やサイトメガロウイルスアデノウイルスエンテロウイルス、HHV6,7つまり突発性発疹などの感染症との鑑別も重要です。
(後者は「かぜ症候群」ですが「普通感冒」とは厳然と鑑別する必要があります)

抗生剤の乱用は厳に慎むべきであり、私自身も抗生剤の繁用は支持しません。
しかし、抗生剤の普及で溶連菌感染症からリウマチ熱に移行する症例が激減してリウマチ性心臓弁膜症が国内ではほとんど見かけなくなった事実があります。
今後、(使用しなければいけないケースで抗生剤を投与しないことによる)リウマチ熱発症が増加する心配もしなければなりません。

いずれにしろ財務省主導の臭(にお)いがプンプンします。

追加しますが、3歳未満は包括医療(いわゆる「マルメ」)のため(高価な)抗生剤処方にはブレーキがかかっています。



<関連サイト>
乱用される抗生物質、耐性菌で2050年には1000万人が死亡?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11976


風邪に抗生剤を出さないことで加算! 医師達ちゃんとしなさい
http://blogos.com/article/276645/