多剤耐性菌 2010.9.14

帝京大院内感染】多剤耐性緑膿菌でも1人死亡 公表せず

多剤耐性アシネトバクターの院内感染が起きた帝京大病院(東京都板橋区)で、入院患者3人が「多剤耐性緑膿菌」に院内感染し、うち1人が死亡していたことが4日、東京都への取材で分かった。
 
緑膿菌は6月初めから8月初めにかけて、入院患者3人から検出。
うち心臓の病気で入院していた1人が8月24日に死亡した。
死因は細菌による敗血症だった。
都は感染が死亡の原因になった可能性は否定できないとしている。いずれも同じ病棟に入院しており、都や病院は院内感染とみている。
 
都によると、病院は2日にアシネトバクターの院内感染を都に報告。
同時に緑膿菌についても報告があった。
公表しなかった理由について、都の担当者は「アシネトバクターとは違い、緑膿菌の感染事例は都内でもほかにある。感染規模も小さい」と説明している。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100904/crm1009041153011-n1.htm
出典 産経ニュース 2010.9.4
版権 産経新聞


薬剤耐性腸球菌に46人が集団感染…日医大病院

日本医科大付属病院(東京都文京区)で昨年12月以降、抗生物質がほとんど効かないバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に入院患者が集団感染していたことがわかった。

46人が感染し、うち14人が死亡したが、文京保健所は死亡と感染との因果関係はないとしている。
同病院は感染症法に基づき、今年1月、同保健所に届け出、感染者の隔離などの拡大防止策を取っていた。

同保健所によると、VREは昨年12月~今年6月の間に入院患者から検出され、感染者が同じ病棟に集中していることから、院内感染の疑いがあるが、14人は死亡前、いずれもVREが陰性だった。
国立感染症研究所によると、VRE感染の届け出は昨年117件、今年は8月29日までで69件あった。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100910-OYT1T00597.htm?from=nwla
出典 読売新聞 2010.9.11
版権 読売新聞社



多剤耐性菌、全病院の5%で検出

帝京大学病院などで院内感染が問題になった複数の抗生物質が効かない細菌「多剤耐性アシネトバクター」は毎年、全国の約5%の病院で見つかっていることが10日、厚生労働省研究班(主任研究者=荒川宜親・国立感染症研究所細菌第2部長)の調査でわかった。

海外で広がっている同菌が既に国内に定着した可能性がある。

200床以上の全病院を対象に、2007~09年度の同菌の検出状況をアンケート。
771施設(回答率28%)のうち、07年度に39(5.1%)、08年度に37(4.8%)、09年度に49(6.4%)の施設で同菌が検出された。
検出された患者はそれぞれ51人、81人、97人(無症状の保菌者を含む)だった。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100911-OYT1T00104.htm?from=nwla
出典 読売新聞 2010.9.11
版権 読売新聞社

<私的コメント>
「多剤耐性のアシネトバクターが国内でも広く薄く出現していることを認識し、医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ」と、荒川部長は話しています。
この調査は、全国の200床以上の全医療機関約2700カ所に調査用紙を送って実施。
4月末までに回答のあった771施設(回答率28.4%)の状況をまとめたということで、回収率の低さが問題となります。
回答のなかった医療機関ほど院内感染対策の意識が低いことは容易に想像されます。
多耐耐性については検出された検体の話はあまり出ていません。
この記事に関連しては、検体の種類別として、痰(たん)が67%で最も多く、尿9.9%・血液5.6%・便3.9%・その他13.5%ということでした。
やはり呼吸器感染の関連が一番多いことがわかります。



帝京大病院の多剤耐性菌、さらに患者1人死亡

複数の抗生物質が効かない細菌「多剤耐性アシネトバクター」の感染問題で、帝京大病院(東京都板橋区)は11日、これまでに判明している58人の感染者のうち、60歳代の男性患者1人が10日に亡くなったと発表した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100911-OYT1T00805.htm
出典 読売新聞 2010.9.11
版権 読売新聞社



<関連サイト>
薬剤耐性菌感染症
http://idsc.nih.go.jp/disease/resist.html
国立感染症研究所 感染症情報センターのHPです。
専門的になりますが
 多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症
 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE感染症
 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA感染症
について詳述されています。


耐性菌
http://www.tcat.ne.jp/~eden/Hst/dic/taiseikin.html
(比較的分かりやすく書かれています)

忍び寄る怖い耐性菌 難しいコントロール
http://www.47news.jp/feature/medical/news/1005kin.html
(2004年とちょっと古い記事ですが、分かりやすくまとめられています)



<番外編>
帝京大病院:院内感染 警察捜査に日本医師会が抗議声明
帝京大病院(東京都板橋区)で発生した多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染を巡り、日本医師会は10日、警視庁の捜査に抗議する声明を発表した。

声明は「医療行為に関しては、行政、医療界の連携による事実関係の究明と、これにもとづく安心・安全な医療を提供するシステムの構築が重要」と指摘。その上で「専門家による調査結果が出される前に、犯罪の成否を前提とする捜査が行われることは極めて問題」としている。【佐々木洋】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100911k0000m040086000c.html
出典 読売新聞 2010.9.10
版権 読売新聞社

<私的コメント>
当事者の帝京大病院が抗犠声明を出すのならわかります。
しかし日本医師会がこういった声明を出すのは唐突な印象があります。
この行動は決してわれわれ医師会員の総意ではありません。
国民感情からしたら賛同が得られる声明かどうか疑問です。

福島県立大野病院の一件以来、医師会も過敏になっていることはわかるのですが、こういった行動が日本医師会が国民から解離しているように感じるのは私だけでしょうか。


いずれにしろ、医療界も厚労省日本医師会、国民保険・社会保険診療報酬支払基金側と診療報酬請求側、日本医師会と会員、医師と患者。
以前と比べて、お互いの関係がどんどんギクシャクとして来ています。

昔の良き時代を知っているだけに、ぼちぼち開業医を辞めようかと思ってしまうことさえあります。




<きょうの一曲> 秋の気配
オフコース / 秋の気配
http://www.youtube.com/watch?v=JtttrcLCoPY


朝日新聞・朝刊2010.9.11の「うたの旅人」で「秋の気配」が特集されていました。
横浜を唱った曲ということもあり、横浜出身の小田和正氏にとっても思い入れのある曲のようです。
私にとっても、横浜は思い入れと思い出が一杯詰まっています。



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三塩清己 『ソーリオ』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/mishiokiyomi/444.html




他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
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(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
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(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。