抗生物質、本当に必要?

抗生物質、本当に必要? 「風邪なら投与」はダメ

医療界や厚労省、不適切処方を是正
風邪の患者に必ず抗生物質(抗菌薬)を処方するといった不適切な医療をなくそうと、医療界や厚生労働省が対策に動き出した。
副作用のリスクがあり、抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」を生み出す原因にもなるためだ。
医師を対象とするセミナーが始まったほか、厚労省は2018年度から患者への適切な説明を診療報酬を加算する際の要件にする。

抗生物質は細菌の増殖などを抑える薬。
風邪の大半はウイルスが原因で抗生物質は効かないが、中には細菌感染症の患者もいる。
医師は「とりあえず処方しておこう」となりがちだ。
 
しかし、抗生物質は下痢、嘔吐といった副作用を伴うことがある。
薬剤への耐性(AMR)を持ち、薬が効かない薬剤耐性菌が生き残り広がってしまう恐れもある。
必要な患者にだけ処方するよう医師の考え方を変えることが求められており、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター(東京)は2017年1月、初めて医師向けのセミナーを開いた。
 
風邪の患者が「抗生物質をいただけませんか」と訴える。
医師は「ウイルスが原因のため効きません」と首を横に振る。患者は「以前は処方してくれた」と不満げだが、医師は「勉強して考え方が変わりました」と断る・・・。
セミナーでは参加した診療所の医師ら45人の前で、こんな場面が演じられた。
 
抗生物質が効かないことを患者にどう説明するかを学ぶことが目的だ。
60代の医師は「抗生物質を求める患者は多く、しっかりと説明していきたい」と話した。
 
抗生物質の適正使用を進めるには、患者側の根強い誤解を取り除く必要もある。
同センターが17年9~10月に行った調査では、男女710人の44%が風邪に抗生物質が有効だと答えた。
 
そこで、厚労省は18年度の診療報酬改定で、医師が患者に抗生物質について正しく説明すれば診療報酬が増える仕組みを導入する。
同省は17年6月、医師向けに抗生物質の適正使用を促す手引をつくっており、手引に沿って適切な治療が行われるよう促す。
 
抗生物質が必要なケースもある。
感染症専門医である京都大病院のY特定助教は「患者からみていつもと同じ症状の風邪なら抗生物質は不要だが、怖い病気が隠れている恐れもある。過去の風邪より症状が重かったり、違う症状があったりしないか医師、患者とも注意する必要がある」と話している。

私的コメント
今や多くの報道が「風邪には抗生剤は不要」とヒステリックとも思えるほどに書き立てています。
メディアが書き立てるのはしょうがないことですが、医師までもが同じ論調なのにはただただ驚くばかりです。
何故なら、「風邪には抗生剤は不要」ということは一面真実ではありますが、一番重要な部分が欠落しています。
それは「風邪」とは何かという定義付けがしっかりとされていないことです。
こういった論調から察するに、一般的には「ウイルス感染による感冒症状」を「風邪」と定義付けているようです。
それでは、逆にこちらこら問いたいと思います。
抗生剤が不要と叫ばれる医師は、きちんと溶連菌感染症や細菌性扁桃炎や細菌性咽頭炎、細菌性気管支炎、マイコプラズマ感染症、そして「ウイルス性」から「細菌性」に移行した状態などを鑑別して初めて「風邪」と診断していますか。
答えは否です。
もし実行してみえるなら、こんな恥ずかしいことは書かないはずです。
私も恥ずかしながら、勤務医の時代は「風邪」には興味がなくまたあまり臨床経験もありませんでした。
しかし、現在は胸を張って言えます。
「開業して◯十年、ほとんど毎日朝夕『風邪』の患者さんを診てきました。そして白血球の検査や溶連菌のやマイコプラズマの検査などを行い半分くらいは『風邪ではない』。つまり抗生剤が必要である。他の医療機関で『胃腸かぜ』と診断される中に『細菌性胃腸炎(食中毒)』はゴマンといる」と。

いずれにしろ、現在の(医師を含めた)「風邪には抗生剤は不要」という論調は異様です。まるで魔女狩りのようです。
私も(細菌感染の除外診断の結果)「風邪」と診断がつけば、抗生剤を使用しないのはもちろんのことです。

抗生物質、本当に必要? 『風邪なら投与』はダメ」
   ↓
抗生物質、本当に不要? きちんと検査もせずに『風邪なら投与しない』はダメ」

参考・引用
日経新聞 2018.2.6


<関連サイト>
治る病気が治らない!? ~抗生物質クライシス~
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3734/1.html

風邪に抗生物質は必要? 「賢明な選択」を
https://www.asahi.com/articles/SDI201802223557.html
普通の風邪に抗生物質(抗菌薬)は効かない。
「いいや、私の風邪には抗生物質が効いた」という体験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれないが、おそらくそれは、たまたま風邪が治るタイミングで抗生物質を使ったか、もしくは、風邪ではなく抗生物質が効く別の病気であったと思われる。
 
4月から、3歳未満の乳幼児の風邪や下痢に抗生物質を使わずに適切な説明をすることで診療報酬が発生することになる。

成人の患者さんに対して「風邪には抗生物質は効きません。副作用もあるし、耐性菌を増やしてしまう」と説明することはよくある。
その説明で納得される患者さんもいれば、それでも抗生物質を処方して欲しいという患者さんもいる。
 
風邪に抗生物質は効かないことがニュースで取り上げられ周知されることで、不必要な抗生物質の使用が少しは減るだろう。
小児科の先生方も、今回の診療報酬改定が報道されることで、風邪の診療がやりやすくなるのではないだろうか。
 
風邪に抗生物質を処方するのは日本ぐらいだと以前は思っていたが、必ずしもそうではないようだ。
Choosing Wisely(賢明な選択)という、不要な医療を避けるための活動が主に米国であるのだが、その中に抗生物質の適正使用の情報がある。
わざわざ適正使用を呼び掛けるということは、適正使用されていないという現実があるわけだ。
 
風邪については「風邪、インフルエンザ、その他のほとんどの呼吸器感染症はウイルスによって起こります。抗生物質はウイルスを殺しません」との記載がある。
その他にも、副鼻腔炎や中耳炎などで抗生物質が必要な状況が書かれている。

私的コメント
逆に「副鼻腔炎や中耳炎には抗生剤は無効」という論文もあります。

日本にもこうした情報提供がある。
「抗菌薬が必要なときと、必要ではないとき」
https://choosingwisely.jp/resources/koukinyaku/
 
内容は海外のChoosing Wiselyを日本語訳だ。
治療費について言及されているところなんかは米国らしい。
 
抗菌薬以外にも必要性に乏しい医療は行われています。

過不足なく必要十分な医療のみが行われることが理想だ。
正しい情報が広まり、医療において「賢明な選択」がなされることで、副作用の害や無駄な医療費が減ることが理想だ。

参考・引用
日経新聞 2018.2.6

抗生物質、気軽に飲むと危険!重篤な副作用の恐れ 大腸炎、腎障害、けいれん
http://biz-journal.jp/2015/03/post_9416.html

抗生物質を飲むな!!フランスでは「抗生剤の乱用」を戒めるCMも流されている!
http://kanshoku.org/2015/09/14/antibiotic/

世界が警告する耐性菌。実は、私たちの間違った抗生物質の服用に原因が。風邪や感染性胃腸炎にすぐ使用している人は危険信号。最後の頼りは免疫力のみ・・・?
http://macrobiotic-daisuki.jp/tiaseikin-93502.html