遺伝子変異、長期間かけ蓄積

遺伝子変異、長期間かけ蓄積

人体は、約􏰀37兆個の細胞からできており、毎日1兆個もの細胞が死んでいるといわれる。
その分の細胞を細胞分裂によって新たに生み出すことで、私たちの体は安定した姿を保っている。
細胞が分裂するときにはDNAが複製されるが、ここでコピーミスが起こることがある。
これが細胞のがん化の主因だ。
このほかタバコなどの発がん物質も、遺伝子変異の原因となる。

ここで英語にたとえながら、人間の遺伝情報について おさらいしておこう。
英語の文章は􏰁文字のアルファベットで書かれるが、それは単なる文字の集合ではない。
いくつかの文字からなる単語が組み合わされて、文章が出来上がっているのだ。
人間の遺伝情報も同じ構造をしている。
文字の集合に相当するのがDNAだ。
ア ルファベットとちがって、ア デニン(A)、グアニン(G)、 シトシン(C)、チミン(T) という4つの文字で表される塩基が線状に並んで、DNAが構成される。
文字数は全部で􏰂60億個になる。
情報量としては1. 5ギガ(ギガは􏰃億)􏰄くらいで、 最近のスマートフォンの容量の方がずっと大きいといえる。
単語に相当するのが遺伝子で、人間の場合、約2万種類あることがわかっているこの2万語の単語によっ て、その人を表現する文章が 出来上がっているわけだ。
遺伝子変異とは、単語を構成する文字(塩基)が変わることで、単語の意味も違ってくることに相当する。
たとえば、STEPとSTOPは1文字違いだが、意味は反対だ。
これと同じように、 塩基に起こった変異が遺伝情報を別のものにしてしまうのだ。
膨大な数の遺伝子のうち、 発がんの原因となる「がん関連遺伝子」の数は140個程度といわれている。
2万個の遺伝子の中に、発がんの急所となるポイントが140個あるということだ。
また、 がん関連遺伝子の一つでも傷つけば、すぐがんができるわけではない。
がんが発症するには通常、2~10􏰃個のがん関連遺伝子に変異が蓄積する必要があることがわかっており、これには通常20􏰅~30􏰆年の時間がかかると考えられ ている。

参考・引用
日経新聞・朝刊 2016.12.15