がん 全体の5%が遺伝性

がん 全体の5%が遺伝性

がんは、遺伝子が主に加齢によって傷つくことでできる病気だ。
基本的に遺伝しない。
ただし、遺伝性のがんも全体の5%あり、「家族性腫瘍」と呼ばれる。
 
かつて米国の有名な女優が、家族性腫瘍の予防のために両方の乳腺組織を切除したニュースがあった。
彼女は実際に乳がんを発症したわけではない。
 
BRCA1と呼ばれる「がん抑制遺伝子」に生まれつき異常があることが分かったため、健康な乳腺組織を予防的に取り除いてシリコーンで置き換えたのだ。
彼女のようにBRCA1に変異がある場合、発がんリスクは非常に高くなり、とくに、乳がん卵巣がんの発生確率はそれぞれ約65%、40%に上る。
 
がん抑制遺伝子には細胞のがん化を防ぐ働きがある。
遺伝子は両親から1つずつ受け継ぐが、家族性腫瘍の患者では、片方のがん抑制遺伝子に生まれつき異常があるのだ。
この女優の場合、母親も若くして卵巣がん乳がんを発症しているから、母方の家系から異常な
BRCA1遺伝子を受け継いだと思われる。
 
なお、彼女にはパートナーとの間に3人の実子がいるが、異常な遺伝子は子供にも50%の確率で遺伝することになる。
男性に変異型のBRCA1遺伝子が受け継がれると、若年性前立腺がんや男性乳がんを発症しやすくなるため、欧米では予防的な前立腺全摘まで実施されている。
 
がん抑制遺伝子の片方が生まれつき働かなくなっていると、残るもう一方の遺伝子に傷がつくだけでがんが発生しやすくなる。
これは、坂道を下る自転車の前輪のブレーキが最初から壊れているようなものだ。
後輪のブレーキが利いているうちは何の問題もないように見えるが、もし、後輪のブレーキも壊れれば大けがにつながる。
 
両方のブレーキが壊れるまでには時間がかかるが、この女優のように片方がもともと壊れているケースでは発症までの時間が短くなる。
家族性腫瘍が若い人に多いのはこのためだ。
 
ただし、遺伝はがんの原因の5%だから、家族性腫瘍はあくまで例外的だ。
生活習慣の方がずっと大事なのだ。

参考・引用
日経新聞・2014.9.7


<私的コメント>
今回の記事の3つのキーワードについて調べてみました。

キーワード① BRCA1遺伝子
BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
https://www.cancerit.jp/33638.html
・BRCA1/2変異の可能性が高い家族歴要因
  50歳までの乳がん診断
  同一女性で両乳房にがんを発症
  同一女性または同一家族のいずれかで乳がん卵巣がんの両方を発症
  多発性乳がん
  家族のうち1人にBRCA1またはBRCA2に関連した原発性がんを2つ以上発症
  男性で乳がんを発症
  アシュケナージユダヤ

[PDF]
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)を ご理解いただくために(ver.3)
http://hboc.jp/downloads/pamphlet_ver3.pdf

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の情報サイト
http://www.falco-genetics.com/brca/




キーワード② がん抑制遺伝子
がん抑制遺伝子
http://mh.rgr.jp/memo/mz0151.htm
・細胞のがん化は、アクセル役であるがん遺伝子と、ブレーキ役であるがん抑制遺伝子の変異により説明されます。遺伝子に複数回の変異が生じた結果、アクセルが入り放しになり、ブレーキが壊れ、細胞が暴走しがんになると考えられます。


キーワード③ 家族性腫瘍
遺伝性腫瘍・家族性腫瘍
http://st4b.info/2012/11/21/333/
・遺伝性腫瘍の患者さんの場合、生まれつき、体中の細胞のそれぞれが持つ2個のがん抑制遺伝子のうち、片方に変異があります。ブレーキ1個だけで人生をスタートしているので、一般の人よりもがんになりやすいのです。