尊厳か延命か

尊厳か延命か 迷う家族

医師が延命医療を開始しなかったり中止したりすることで、刑事事件につながる可能性があるが、患者の家族はどうだろうか。
親が炎天下で車内に小さな子供を置いたままパチンコや買い物をしていた結果、死亡事故につながった場合、親は刑法の「保護責任者遺棄致死罪」に問われる。

しかし、自宅で介護していた高齢者の状態が急変した際、家族が病院に連れて行かなかった場合は、保護責任者遺棄致死罪が成立するかどうかは微妙だ。
 
本人が「救急車を呼ばないでくれ」と言ったのかもしれないが、病院に駆け込めば少なくとも延命できるかもしれないときの行動が問われることになる。
実際に、パーキンソン病脳梗塞などを発症した夫を、医療費がかかるなどの理由で受診させなかったとして、保護責任者遺棄致死容疑で妻が逮捕され、執行猶予付きの有罪判決
が出た例がある。
 
家族は、本人の尊厳を大切にしたい気持ちと助けたいという気持ちの間で葛藤がおきる。本人や家族の問題でもあると同時に、刑法上の問題でもあるのだ。
高齢者による救急車の利用が増え続け、病院で亡くなる割合が減らない背景には、こうした問題があることも忘れてはならない。
だからこそ、本人に代わって意思表示をする「代弁者」制度を、早期に規定する必要がある

参考・引用
日経新聞・朝刊 2014.9.7