卵巣がん

卵巣がんの実力病院 手術と抗がん剤併用

http://style.nikkei.com/article/DGXMZO98597160Y6A310C1970M00
卵巣がんは自覚症状が出にくく、発見時には転移していることが大半だ。
抗がん剤が効きやすい一方、再発率は高い。
進行がんはまず抗がん剤で腫瘍を小さくし、手術で摘出するなど患者の体の負担を減らそうとする取り組みが目立つ。
がん細胞を狙い撃ちし、再発までの時間を延ばすとされる分子標的薬も普及しつつある。
 
国立がん研究センターによると、2015年に新たに卵巣がんと診断されたのは推定1万400人だった。
乳がんや子宮がんに比べ発症者は少ない。
ただ同年で卵巣がんで死亡したのは推定4800人。
完治が難しく、死亡率が高いがんの一つだ。
40代から増え、50~60代が最も多い。

初期の発見難しく
卵巣がんは初期の自覚症状がなく、腹部が腫れるなどして受診する人が多い。
6割以上はがんが広範に転移した状態で見つかる。
手術で取り切るのは難しく、抗がん剤など化学療法を併用する。
4つの組織型に分けられ、進行が早い「漿液(しょうえき)性腺がん」が4割以上を占める。
 
調査で「手術あり」、「手術なし」ともに最多だったのはがん研究会有明病院。
患者の負担を抑えるため、腹腔鏡でがん細胞を採取して組織型を調べる「審査腹腔鏡」を取り入れている。
 
腹水を針で採取しがんを調べる方法もあるが、正確な診断は難しいという。
開腹して調べると体調が戻るのに1~2週間かかる。
腹腔鏡を使えば翌日に歩けるようになるほど負担が軽く、抗がん剤治療にも早く移れる。
 
同病院は進行がんではまず抗がん剤を投与し、がんを小さくしてから開腹手術で切除するケースが多い。
先に手術しても転移がんまで全て取り除くのは難しいという。
卵巣がん抗がん剤が効きやすく、術後はパクリタキセルとカルボプラチンを併用する「TC療法」が基本だ。
症状などに合わせ3週間に1回、あるいは毎週投与する。

外来でも治療できるが、「手術なし」が全国有数だった三重大病院は通院時間が長い患者も多く、9割以上が入院を選ぶ。
アレルギーが出やすい抗がん剤があり、呼吸が止まる恐れもあり、入院治療の方が安全な場合もある。
 
手術でがんを取り切れなかった患者の8割は、抗がん剤で腫瘍がいったん縮むという。
このため再手術でおおむね切除できる。
ただ再発が多いのも卵巣がんの特徴で、病期が3期以上では6~7割は再発する。

分子標的薬も活用
再発時は初回治療の終了後6カ月以内か、それ以降かで抗がん剤を使い分ける。
6カ月以内の再発で腫瘍が縮むのは一部だ。田畑准教授は「完治を目指すのではなく、病気とうまく付き合うことも大切」と指摘。抗がん剤を使って長く充実した生活を送るという考え方で臨むよう助言する。
 
がん細胞への栄養供給を絶つ効果があるとされる分子標的薬「ベバシズマブ」も積極的に使われている。
卵巣がんでは13年に承認され、再発までの期間を延長させる効果がある。「手術あり」の症例数が上位の東北大病院は抗がん剤と併用。
高血圧などの副作用に注意して血圧や尿たんぱくの数値を確認しながら投与する。
 
昨年からがん細胞が持つ免疫抑制機能を解除する治療薬「抗PD―1抗体」の臨床試験に参加。
若い患者が手術後に妊娠機能を温存できる方法の研究などにも加わっている。
患者の生活の質も重視しつつ、化学療法と手術をうまく組み合わせて長期生存を目指す。

他のがんより高い遺伝的リスク、予防切除も選択肢に
卵巣がんは近親者にかかった人がいる場合、発症確率が高くなる。
遺伝子検査などについて説明する専用窓口を置く病院があり、予防摘出手術も行われている。
 
卵巣がんは5~10%が遺伝的要素で発症するとされる。
遺伝性のものには特定の遺伝子が変異し、発症リスクが高まる「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」がある。
米人気女優が乳房や卵巣を切除し、関心が高まった。
 
東北大病院は昨年、遺伝子診療部を開設。
臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが婦人科医と連携し、検査の精度や家族への心理的な影響などを説明する。
「正しい知識を伝え不安を軽くする」のが狙いで、遺伝子検査の希望があれば実施病院を紹介する。
 
がん研究会有明病院は2011年に卵巣の予防的切除を全国に先駆けて始め、2月末までに29例実施した。
ただ保険適用外で費用は遺伝子検査が約30万円。
さらに入院手術に約75万円かかり、子宮も切除すると100万円になる。
「異常がある」と判断しきれないケースもある。

 
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卵巣がん、腫瘍切除と化学療法併用で粘り強く治療

http://style.nikkei.com/article/DGXDZO66080780Z20C14A1NNSP01
卵巣がんは年間約8千人が発症、約4千人が死亡する。
自覚症状がなく検診での発見も難しいため、進行した状態で見つかるケースが多い。
一方で、抗がん剤が比較的効きやすいという特徴もあり、症例数が多い病院は腫瘍部分の切除と化学療法を組み合わせて粘り強く治療に当たっている。
抗がん剤の新薬が増え、治療の選択肢も広がっている。

卵巣がんは主に4つ組織型があり、約4割は進行の早い「漿液(しょうえき)性腺がん」だ。
出血や痛みなど症状が出にくく、発見時には1~4期に分かれる進行期のうち、転移が広範囲に広がっている3、4期のがんが多い。
手術だけで完治することは極めてまれで、術後に抗がん剤の治療を追加するのが一般的だ

初回は試験開腹
「初回の手術では多くの臓器を摘出するのは望ましくない」と専門医は話す。
3、4期のがんは転移が広範囲にわたるため、手術範囲が広い。
初回手術で腸や肝臓など多くの臓器を摘出すると、腹膜炎や腸閉塞などの合併症で抗がん剤治療を始められなくなるリスクが高まるという。

そのため手術後の抗がん剤治療の途中で再手術し、初回の手術で残った腫瘍を取り除く「腫瘍減量手術」(IDS)を積極的に採用する医療機関もある。
1回目の手術は数ミリメートルの卵巣の上皮にあるがん細胞の組織を採取する試験開腹にとどめる。
組織を分析し、卵巣がんのパターンに合わせて薬物治療を開始。
がんを小さくした上で再手術するため、患者への負担が和らぐ。
 
患者の約半数はがんが卵巣にとどまっている1期と、転移が卵管や子宮など周辺に限られる2期。
腫瘍の完全切除も可能だが、残りの半数はがんが進行し、手術だけでは根治が難しい。
このため、化学療法として抗がん剤のパクリタキセルとカルボプラチンを併用する「TC療法」を採用。
7~8割の患者はいったん、がんが消えたように思われるが、半年間や1年後に再発することが多い。
 
ある病院では初回治療の終了後6カ月以上を経て、再発した場合、初回治療と同様にカルボプラチンなどプラチナ製剤を採用。
6~12カ月以内の再発には主にドセタキセルとカルボプラチンを併用する。
副作用などを考慮し、他の抗がん剤とプラチナ製剤の併用療法を行うことも可能だ。

5年生存率を改善
手術で目に見える腫瘍の完全切除を目指すのが治療の基本的なスタンスだ。
抗がん剤の効果やがんの広がりを適切に診断した上で、IDSに取り組む。
卵巣がんでは初回治療でがんが小さくなったり消滅したりする割合は70%以上。
進行卵巣がんの症例でも、IDSで残りの腫瘍をすべて切除できた場合、5年生存率の大幅な改善が期待できる。
根治が難しい症例でも手術と化学療法の組み合わせで、がんの進行を抑え、長期生存を目指す。






卵巣がん検診
http://www.ms-sophia.net/support/cancer/ovarian.html
・「卵巣がんは沈黙のがん(Silent Cancer)」といわれ、ほとんど症状がなく、腹部膨満などで病院を受診した時には、既に相当進行しているのが特徴。
卵巣がんの多くは卵巣表面の上皮細胞から発生する。
排卵により上皮が破れ、そして修復されることを毎回繰り返している間に「がん」が発生すると考えられている。
卵巣がんは、突然に発生し急激に増殖する「漿液性腺がん」と比較的ゆっくりと発症する「非漿液性腺がん(明細胞腺がん、類内膜腺がん)」に分けられる。
急激に増殖するタイプは、腫瘍が卵巣内であまり大きくならないうちに、簡単におなかの中に広がり(腹膜播種)、大量の腹水を伴なった「がん性腹膜炎」になる。
しかし、抗がん剤が効く症例が多いのも特色。
・欧米では1994年に「無症状女性の卵巣がん検診は意味を持たない」とのガイドラインを発表した。
・もし「骨盤痛、腹部膨満感、不快感、疲労感、頻尿」などの症状が3週間以上続いたら、可能性の一つとして卵巣がんも考慮される。

卵巣がんになりやすい女性
卵巣がん家系の人
卵巣がんには遺伝的なリスクがあります。
母親や姉妹が卵巣がんである場合は、そうでない場合に比べリスクが 3倍位高いとされています。

未婚・未妊・未産、初潮が早かった人、閉経が遅かった人
多産であった戦前の日本人女性の一生の排卵回数に比較しますと、少子化した現在に生きる女性の平均排卵回数は明らかに多く、排卵に伴って卵巣表面が傷つきやすく、卵巣がんのリスクが高くなっています。
また不妊治療婦人も要注意です。

動物性脂肪を多量摂取する人
子宮内膜症多嚢胞性卵巣症候群、肥満、糖尿病、喫煙(夫の喫煙も)、乳がん・大腸がんの既往歴・家族歴を持つ人も注意してください。

遺伝性乳がん卵巣がん、患者や親族データ登録
http://www.yomiuri.co.jp/science/20160722-OYT1T50142.html
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の発症状況を把握するため、患者や親族に関するデータを登録する制度を日本乳癌学会などが作った研究団体が始めた。
約40の医療機関で登録を進める。
集めたデータは患者の治療や情報提供のほか、医療体制の整備に役立てる。
 
HBOCはBRCA1、2という遺伝子の変異が原因で発症するがん。
乳がんの場合、毎年約9万人の新規患者の5~10%がHBOCに該当するといわれているが、国内の詳しい実態は分かっていない。
患者に遺伝子変異があるのが分かると親族にも影響が及ぶため、検査や遺伝カウンセリングの体制整備が始まっている。


家族も乳がん卵巣がんの患者、20%で遺伝子変異あり
親族が乳がん卵巣がんにかかり、自身も発症した患者ら827人を調べたところ、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を示す遺伝子変異が約20%で見つかった。
診断・治療に携わる医師らでつくる日本HBOCコンソーシアムが調査した。
変異発見率は米国の十数%より高く、検査を受けるか相談できる遺伝カウンセリングの態勢充実が求められる。
 
BRCA1、BRCA2という遺伝子に変異があると、乳がん卵巣がんのリスクが高まる。
昭和大病院、聖路加国際病院、がん研有明病院(いずれも東京都)と星総合病院(福島県)の4施設で、2012~14年の3年間に、親族に乳がんなどの経験があり自身も発症した患者らで、親族関係のない827人が遺伝子検査をした。
 
その結果、165人で遺伝子変異が確認され、発見率は約20%だった。
血縁者らも加えた986人では約250人(約25%)で変異が見つかった。発見率が増えたのは、変異があった患者の血縁者が多く検査したためとみられる。
1千人規模のHBOC遺伝子検査の集計は日本では初めて。
 
変異が見つかれば、発症していない方の乳房や卵巣を切除する選択肢もある。
今回検査を受けた人のうち、60人超が卵巣を、20人超が乳房を予防的に切除していた。
 
コンソーシアムは今年度、30施設超で本格調査をする。
HBOCへの関心は高まっており、再発や別の臓器での発症の有無、詳しい病態など日本人の精度の高いデータベース作りが期待される。
 
《遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)》 
BRCA1、BRCA2という遺伝子の変異が原因で、かかりやすい体質が遺伝する。
変異がある女性は生涯で40~90%が乳がんに、10~60%が卵巣がんにかかるという報告がある。
男性は前立腺がんや膵がんのリスクが高まり、乳がんになる場合もある。
この変異が見つかったある米女優は、がんになる前に両方の乳房と卵巣を切除した。
参考
朝日新聞 2016.6.28

遺伝性のがん 乳房、大腸… 予防や治療の選択肢広がる
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/42865592.html

 
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2016.7.17 撮影