新型コロナ、再拡大を防ぐには

新型コロナ、再拡大を防ぐには マスクの着用 引き続き  飛沫拡散や接触感染を抑制 

緊急事態宣言が解除されるなか、新型コロナウイルス感染症の再拡大を防ぐにはどうすればいいのか。

キーワードは「飛沫」だ。

ウイルスが水分などにくっついた小さな粒子で、感染者の鼻や口からしぶきとして飛び出し空中を漂う。

マスクを着用すれば飛沫を広げたり吸い込んだりするのを防げる。

また他人と2メートル以上離れて過ごす社会的距離(ソーシャルディスタンス)も保てば、飛沫が届きにくく効果的だ。

 

飛沫はウイルスの周りに水分やたんぱく質が付いたしぶきで、大きさは5マイクロ(マイクロは100万分の1)~100マイクロメートルと小さく目には見えない。

この飛沫が鼻や口、目に入って感染するのが「飛沫感染」だ。

また飛沫がくっついたドアノブなどに手が触れると、手を介して鼻や口に付いて「接触感染」も起きる。

 

ただ新型コロナウイルスは、麻疹のようにウイルス自体が空気中を漂って感染する「空気感染」はしないとされている。

飛沫による感染を防ぐのに効果的なのはマスクだ。

香港大学などは4月、通常のコロナウイルスに感染した患者がマスクをすると、ウイルスが広がるのを抑えられるとの実験結果を発表した。

患者の呼気を集めて飛沫に付いたウイルスを分析。

マスクをしない患者では10人中3人からウイルスが検出されたが、マスクをした11人からは検出されなかった。

新型コロナウイルスでも同様の効果があるとみられる。

 

新規感染者が減

感染者数の抑制にもつながるとの報告がある。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、米国ではニューヨーク州ハワイ州などマスクの着用率が高い州ほど新規感染者が減った。

一方、着用率が低かったサウスダコタ州などは感染者が増えたという。

 

マスクの役割は主に2つだ。

1つはくしゃみやせきを含む飛沫が鼻や口に直接かかるのを防ぐ。

1回くしゃみすると4万個、せきをすると3千個の飛沫がそれぞれ飛ぶ。

近距離で5分間会話しても3千個の飛沫を浴びる。

屋内だけでなく屋外でも他人に近づくときはマスクをするのが大切だ。

 

もう1つは接触感染も防げる。

人は通常、1時間に10回以上、自分の鼻や口、目の付近を無意識に手で触る。マスクで鼻や口を覆えば、接触感染も避けられる。

 

完全には防げず

マスクは医療従事者用でなくても不織布を使う市販のマスクでも効果はある。ただマスクだけでは鼻や口から飛び出す飛沫を完全には防げない。

ウイルスの大きさは約0.1マイクロメートルでマスクの穴は5マイクロメートル。

飛沫になれば穴に引っかかるが、マスクと顔の隙間などから漏れて外へ出る。

政府は再拡大を防ぐため、他人との距離を2メートル以上とるよう呼びかける。

飛沫は風が無ければ毎秒30~80センチメートルの速度で床や地面へ落ち、漂う時間は5秒以内で距離に換算すれば2メートルだ。

飛沫感染は約2メートル以上なら起きにくい。

ただ最近の研究から飛沫でも大きさが10マイクロメートル以下と極めて小さい「マイクロ飛沫」は感染力が高いとの指摘がある。

遠くまで飛ぶうえ長い時間室内などにとどまるからだ。

 

中国・人民解放軍の軍事医学科学院などは武漢市の病院でマイクロ飛沫を調査した。

集中治療室では40サンプルのうち14件(35%)で、一般の隔離病棟では16サンプルのうち2件(12.5%)でウイルスが見つかった。

隔離病棟はマイクロ飛沫が最大4メートル飛ぶ可能性があった。

米国立アレルギー・感染症研究所なども3月にマイクロ飛沫は感染力が高いと指摘。

ウイルスが付着して室内を漂うと、3時間にわたり感染力を持ち続けた。

 

ある大学でシミュレーション(模擬実験)したところマイクロ飛沫は室内で20分以上にわたり漂った。

換気が不十分な小学校の教室で教師がせきをすると生徒が飛沫を吸い込む恐れがある。

室内では窓を開けて換気しマイクロ飛沫を屋外へ追い出すようにしたい。

感染症の予防としては飛沫感染につながる「3密」(密閉、密集、密接)を避けるのが大切だ。

その上で熱中症に注意しながらマスクを付けたり、一定の距離を保って行動するなどが欠かせない。

 

マイクロ飛沫

くしゃみやせきなどでロや鼻から出る飛沫のうち、極めて小さなしぶき。明確な定義は無いが、大きさは10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下を指す。

海外では「エアロゾル」とも呼ばれる。

新型コロナウイルスやインフルエンザなど細い気管支や肺胞に感染するウイルスでは、患者の呼気からマイクロ飛沫が出るとされる。

 

通常の飛沫に比べて軽いため遠くまで飛ぶうえ、換気が十分ではない室内では数十分にわたって空気中を漂う。

多数の肺炎患者が入院する病院では、集団感染(クラスター)の原因になる可能性もある。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2020.5.29

 

<関連サイト>

新型コロナ 感染の仕方

https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1084