夏マスク、どう選ぶ? 「密リスクが高い日は不織布を」
新型コロナウイルスの流行後、初めての夏を迎える。感染拡大の防止策として国が示した「新しい生活様式」では、熱中症に注意しながら、人に会う際はマスクを着けることが勧められている。
「夏マスク」は、どのように選んだらよいのか。
一般的な使い捨てマスクは繊維を熱などで結合させた不織布でできており、暑い日に着けていると蒸れることもある。
そこで、最近では布製マスクが「夏用」として人気だ。繊維を織ったガーゼや水着生地などで作られ、通気性や冷感をうたう製品も多い。
ただし、ウイルスを含む小さな飛沫を通さない効果がどれほど期待できるかは、マスクの素材によって異なる。
PM2.5(微小粒子状物質)などを研究するグループの実験がある。
大きさ0・3~1.0マイクロメートル、1~10マイクロメートルの粒子を実験装置の中で飛ばし、マスクが粒子を捕らえる効率を調べたところ、いずれの大きさの粒子でも不織布マスクは90%以上を捕集できたが、布マスクは30%以下だった。
実験に使った布マスクは、政府が配布したもの。
この研究グループが5月、実験データを公表したところ、各メーカーから自社製品の布マスクの測定依頼が殺到したという。
「布はどれでも、捕集効率において政府配布のマスクと差はあまりない」というのが結論だ。
マスクの性能については、「99%カット」のように示した製品が売られている。
業界団体の自主基準で、カットする粒子の捕集効率を示したものだ。
4段階あり、大きい順に花粉、細菌を含む粒子(BFE)、ウイルスを含む粒子(VFE)、0.1マイクロメートル以下のごく小さな粒子(PFE)だ。
いろんな会社がマスクの製造販売に乗り出している中、表記の信頼性に疑問がある製品もある。
数値だけでなく、性能を調べた試験機関の名前や全国マスク工業会の会員マークが表記されているかどうかがポイントだ。
また、着用時にマスクと顔をすき間なくフィットさせないと、十分な性能は得られない。
不織布、洗うだけでも性能低下
布マスクの中には、不織布製のフィルターを入れて交換できる製品もあるが、こうしたマスクや自作マスクに、市販の不織布をそのまま使っても、使い捨ての不織布マスクほどの性能は得られない可能性がある。
不織布マスクは、製造過程の加工で静電気を蓄えさせ、その力で粒子を捕集しているからだ。
静電気加工されていない市販の不織布を自作マスクに使う場合は、ナイロン製のハブラシやストッキングで100回程度こすれば、簡単に静電気を帯びさせられる。
不織布の多くはポリプロピレン製で、素材の性質から、この組み合わせで効率よく静電気を蓄えさせることができる。
また、布マスクは、不織布を挟んでいるものでも、洗って繰り返し着けるのが通常の使い方。
だが、1回洗うだけでも、フィルター性能は大幅に低下する。
水流の物理的な力などで網目構造が壊れ、水や洗剤で静電気も失うからだ。
高性能のマスク、体に負担も
フィルター性能だけを考えれば、夏でも使い捨ての不織布マスクが有用といえそうだが、熱中症には注意が必要だ。
日本救急医学会や日本感染症学会などは、不織布マスクを着けて運動すると、心拍数や呼吸数が着けない場合よりも上がったという論文を紹介し、「体に負担がかかると考えられる」として、注意喚起している。
また、性能が高い「N95」マスクは体への負担がさらに高いとして、感染した人の飛沫を吸い込むような特殊な状況以外では使わないよう呼びかけている。
厚生労働省も、温度や湿度が高い環境でマスクを着けると、皮膚からの熱が逃げにくくなったり、気づかないうちに脱水になったりするおそれがあるとして注意を呼びかける。
屋外で人と少なくとも2メートル以上の十分な距離が確保できる場合には、マスクを外すよう勧めている。
大前提として、どんなマスクでも、せきやくしゃみによる大きな飛沫を周りに広げない効果はある。そのうえで、それぞれのマスクの特性を理解、納得した上で、「密」のリスクが高い日は不織布マスク、外や自宅での時間が多い日は快適さを優先して布マスク、と使い分けるのがいい。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.7.10
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夏のマスク、どう選ぶ?