免疫の新常識 新型コロナ

第一人者に聞く免疫の新常識 新型コロナ、自然免疫で撃退も

「抗体だけが免疫ではない。自然免疫だけでウイルスを排除できる人もいる」。

以下は免疫学の第一人者、大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授の

「免疫学の新しい常識」についての解説です。

 

――「抗体だけが免疫ではない」とは、どういう意味ですか。

「免疫イコール抗体という考えは20年前までの古い常識。新型コロナウイルスでは抗体は免疫の中であまり大きな役割を担っていないでしょう。回復した人の3分の1は抗体をほとんど持っていないとの研究結果もあります」

コメント;

最近、新型コロナウイルスに感染した方で抗体がつかない場合があることが話題になっています。

また抗体検査を、今までに新型コロナウイルスにかかっていないことや現時点の非感染の証明に利用する動きがあります。

しかし、これらはまちがっていることが理解できます。

 

「人間の免疫はもっと重層的です。人体の免疫機構は、自然免疫と獲得免疫の二段構え。自然免疫は生まれた時から備わっていて、まず皮膚や粘膜の物理的、化学的バリアーが病原体の侵入を防ぎます。そこが突破されても、白血球の一種である食細胞が病原体を食べてくれます。ここまでが自然免疫です。食細胞は全身に分布し、異物が侵入すると数分から数時間で発動します。城のいたる所を足軽が見回り敵をその場で撃退してくれるようなもの。だから、自然免疫が強ければ、それだけで新型コロナを撃退できる人もいます。私は我々全体の1割程度は自然免疫だけで新型コロナを排除できるのではないかと推測しています」

 

「自然免疫で排除できなければ、獲得免疫の出番です。獲得免疫は発動までに数日かかります。最初に刺激されるのはヘルパーTリンパ球で、獲得免疫の司令塔です。これがBリンパ球に指令を出すと、Bリンパ球は抗体を作ってウイルスを殺し、ヘルパーTリンパ球がキラーTリンパ球に指示すればキラーTリンパ球はウイルスに感染した細胞を殺します。獲得免疫はいわば本丸を守る役目の高級将校で、キラーTリンパ球は抗体と同様に重要です」

 

「つまり、抗体がなくても、自然免疫が強いか、キラーTリンパ球が活躍すれば回復できます。だから、抗体の保持率イコール既に感染して治った割合、ではありません」

 

■ 抗体には悪玉も

――それでも、抗体が重要なことに変わりはないのでは?

「抗体の振る舞いにも大きな誤解があります。全ての抗体がウイルスを撃退すると考えられがちですが、違います。3種の抗体があり、一つはウイルスを攻撃し排除する『善玉抗体』です。逆にウイルスを活性化させる『悪玉抗体』と、攻撃もしないし活性化もさせない『役なし抗体』もあります」

 

武漢医科大で感染者の血液を調べたところ、無症状感染者は抗体量が少なく、重症者は無症状、軽症者より常に抗体が多い傾向がはっきりと示されました。善玉抗体がたくさんできてウイルスを撃退すれば軽症で済むはず。重症者に抗体が多い新型コロナは悪玉抗体を多く生み出し、抗体がウイルスの増殖を助けていると考えられます」

*コメント;

こういった発想は目からウロコでした。

重症者は、結果として抗体が増加しているというふうに単純に考えていましたが、増加した抗体の一部である「悪玉抗体」が重症化に拍車をかけているという考え方なんですね。

 

■ 集団免疫は困難

――一定割合以上の人が感染すれば、それ以上感染が拡大しない「集団免疫」については?

「一度獲得した免疫が長期間にわたって続くことが集団免疫の前提です。すぐに免疫が消えたら、多くの人が免疫を持っている期間がなくなってしまうから。でも、新型コロナの免疫が続く期間はとても短く、私は半年程度ではないかと考えています。免疫が半年しか続かなければ、集団免疫はいつまでたっても獲得できません」

コメント;

これは新型コロナの終焉に重要な意味を持ちます。

流行が収束するにはウイルス自体の弱毒化、つまり今までに存在する4つの風邪ウイルスとしてのコロナウイルスに5つ目のコロナウイルスになってくれるのを待つということになります。

かつての新型インフルエンザウイルスも最終的には(普通の)インフルエンザウイルスとなり、今やインフルエンザワクチンにも成分として含有されるようになりました。

今回の新型コロナ流行の際に、英国などでは「集団免疫」を国民全員でつけるという政策をとり、見事に失敗しました。

 

武漢医科大で8週間後に抗体量を再測定したら、軽症者で4割近く、重症者も2割で抗体が検出不可能なほど減りました。こんなに早く抗体量が減るのは、ほかのウイルスではあまり考えられません」

 

破傷風やポリオなど、ワクチンを一度打てば免疫が数十年も続く病気もあれば、インフルエンザウイルスのように3カ月程度しか続かないものもあります。私は新型コロナはワクチンが出来ても、インフルエンザと同じように有効期間は極めて短いものになるのではないかと考えています」

コメント;

現総理は「来年のオリンピックまでには新型コロナワクチンを導入し・・・」と公言しています。

この短い言葉の中には二つのウソが隠されています。

まず来年のオリンピックは無理です。

今年秋までに開催の有無を決定するように、IOCがタイムリミットをつきつけています。

そもそも「フクシマは・・・」というウソで誘致した東京オリンピックですが、今もウソを言い続けています。

このウソでどれだけの国家や東京都の予算が使われ。そして使われ続けるのでしょうか。

そして、「新型コロナワクチンを導入」についてはウソでないかも知れませんが、過大な期待を抱かせるという点ではウソということになります。

 

■ 体内時計が大切

――免疫を強くするためには?

「強くするという言い方は不適切です。強すぎると健全な細胞を攻撃します。強くするのではなく、自分が持つ免疫をフル活用できる状態に保持することが大切。それにはまずストレスの少ない生活をする。リンパ球は血液の流れに乗って全身をパトロールしているので、有酸素運動をしたり、毎晩お風呂に入って体温を上げたりして、血流をよくする。免疫は体内時計がつかさどり、昼は免疫が強くなり、夜は弱くなります。体内時計を毎朝きちんとリセットする。朝日を浴び、軽い体操や散歩をして、体内時計が狂わないようにするのは大きな意味があります」

 

――食事はどうですか。

「これ一つを食べれば免疫を強くする、なんていう食品はありません。バランスのよい食事を心がけましょう」

 

「免疫は加齢が非常に大きな要素です。50代を過ぎると免疫力は半分になると言われます。新型コロナの重症者の95%が60代以上というのはうなずける数字です。高齢者は免疫の経験値は高いがそれぞれの免疫が弱体化する。いわば免疫も老兵化し、数も減ります。元には戻せません」

 

――新型コロナは変異が速い?

「変異の速さはRNA(リボ核酸)ウイルスの特徴です。でも他のRNAウイルスに比べ変異の幅は大きくない。遺伝子をコピーするときに起きるエラーを修復するメカニズムを持っているのです。同じRNAウイルスであるインフルエンザウイルスは変異幅が大きく、動物からヒト、ヒトから動物へ感染する、とんでもない変異を起こす。でも新型コロナで明らかに病原性が高まった変異は今のところありません」

 

接触8割減、不要

――私たちの取るべき対策は?

全日本剣道連盟に頼まれ、実験しました。(1)多くの飛沫は2メートル以内で地面に落ち、1.5メートル離れれば飛沫を浴びる可能性は極めて小さい(2)マスクを着ければ9割の飛沫は防げる(3)微小飛沫は残るが換気すれば飛散することが確認できました。つまり他人と1.5メートルの距離を保つ、マスクを着ける、空気感染を防ぐために換気する、手洗いするなどの緩やかな接触制限と行動変容で対応できます。一時期言われた、人々の全体の接触率を8割減らすといったマスの対策は必要ないと思います」

 

「ワクチンが出来れば、新型コロナはインフルエンザと同程度の病原体となりますが、安くて良いワクチンが出来るのには2年以上かかるでしょう。重症化を止める薬ができれば普通の感染症になりますが、まだ時間が必要です。しばらくの間、人類は、新型コロナウイルスと共生していかなくてはなりません」

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.7.18

 

コメント;

この記事で解説された宮坂昌之先生は少し前から民放のバラエティー番組で切れ味鋭い解説をされ、深い感銘を覚えていました。

奇しくも今月号(2020.8)の文藝春秋ノーベル賞受賞者本庶佑先生が同様の冴え渡った記事を投稿されています。

その中で、本庶先生は「ウイルスの変異やワクチンの副作用の問題」「ワクチンより治療薬の必要性」「国産のPCR試薬の必要性」を訴えています。

両方の先生は、実にやんわりと新型コロナウイルス対策の問題点を指摘しています。

はっきりいって現在の専門家会議のメンバーの座長は御用学者化しています

他の構成委員もいささか心配なメンバーです。

「8割おじさん」の考えも間違っていることがわかりました。

英国の集団免疫論も、ある学者の考え方を取り入れたことが発端でした。

学者は「人を殺す」こともするのです。

もちろん、その考えを採用し実行する為政者も同様です。

かつて、フクシマの原発事故の際、東大放射線科の先生が被曝について「心配の及ばず」という持論をずっと展開していました。

御用学者と揶揄する人達もいました。

一方、宮坂先生も本庶先生も東大の対極といわれる京大出身です。

偶然かも知れませんが、そんなことをフト感じました。

 

<関連サイト>

免疫の仕組み

https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1221