日本のコロナ死者なぜ少ない

日本のコロナ死者なぜ少ない BCG接種? 交差免疫? 遺伝子?・・・

新型コロナウイルス感染症が世界に広がる中、日本を含むアジア地域(中東を除く)の人口当たり死者数は欧米に比べ非常に少なく、驚きを持って受け止められている。

世界中の研究者が原因を注目しているが、生活習慣や文化、医療体制の差だけでは最大100倍の差は説明しにくく、獲得した免疫の強さなど、根本的な違いがあるという見方が強くなっている。

 

「世界の研究者が困惑」

人口100万人当たりの死者数は、800人を超すベルギーを筆頭に欧米の先進国が上位に並び、中南米も100人を超す。

一方、日本の7・7人などアジアは10人以下が多い。

 

5月28日付の米紙ワシントン・ポストはこの現象を「新型コロナのミステリーの一つ」と紹介。

特に世界有数の高齢社会で、検査数が少なく、外出自粛という欧米に比べて緩やかな対策で死者数を抑え込んだ日本に「世界の研究者が困惑している」と伝えた。

 

背景に何があるのか。

まず指摘されるのは生活習慣や文化の違いだ。

花粉症が広がり、感染拡大前からマスクを着用する習慣は根付いていた。

感染防止に効果がある手洗いをする習慣も身についている。

室内で靴を脱ぐ文化が感染拡大を抑えたという見方もある。

 

ハグやキスなど体の接触を伴うあいさつが少ないのも、接触感染、飛沫感染を抑えた。

またロックダウン(都市封鎖)など強権的な対策を採らなくても、補償なしの自粛要請だけで休業し外出を控える「従順な国民性」がプラスに働いたという指摘もある。

  

「きれい好き」「衛生、栄養状態が全般的によい」だけでは答えにはならない。

過密都市を抱え衛生状態が良くないバングラデシュやインドと日本は人口比死者数はほぼ同じだ。

 

最大で100倍の差 解明へ研究進む

2けたの差はもっと根本的な違いがなければ説明できない、という研究者も多い。

ポイントはヒトが持つ遺伝子ではないか、という。

ある国内の研究者達は遺伝子によって免疫反応に違いが生じているとの仮説を立て、7大学が共同研究中だ。

重症、中軽症、無症状各200人の感染者の血液を集め、全ゲノムを解析して9月までに報告をまとめる。

 

特に注目されているのが、免疫反応をつかさどるHLA(ヒト白血球抗原)で、重症患者と無症状患者とで比べ、重症患者特有の遺伝子を見つける。

欧米でも同種の解析が進んでおり、照合すれば、東アジアで死者が少ない原因の解明につながる可能性がある。

 

にわかに注目を集めたのが結核の予防ワクチンBCGだ。

世界で比較すると接種している国はしていない国より死者数が少ない傾向がある。

藤田医科大学の宮川 剛教授はBCGと結核に注目。

結核蔓延国は接種国より一段と死指数が少ない。

さらに平均寿命や高齢化率、人口密度、肥満率、病床数、喫煙率など結果に影響を与える恐れがある因子を除いて解析しても、接種国の死亡率が低い傾向は変わらなかった。

宮川教授は「強い相関関係があることを示すだけで、因果関係があることを示すデータではない」と語る。

 

交差免疫説も注目の的だ。

過去に似たウイルスに感染して出来た免疫が、新型コロナも排除する仕組みのこと。

東京大学児玉龍彦名誉教授か都内の感染着の血液を調べたところ、すでに部分的な免疫も持っているとみられる人が多数確認された。

「風邪を引き起こす一般的なコロナウイルスと新型コロナは、塩基配列のほぼ半分が同じ。コロナウイルスは絶えず進化し、日本にも流入している。そのため新型コロナヘの抵抗力を持っている人が一定数いて、重症化率の抑制につながっているのではないか」という。

 

米ラホイヤ免疫研究所が、感染拡大前に採取した血液を調べた研究で、約半数から新型コロナを認識する免疫細胞が検出された。

これも、新型コロナに似たウイルスがすでに存在し、交差免疫を起こしたことを示している。

コメント

新型コロナ感染症が流行が始まる以前の検体を使って抗体検査を行った結果、抗体陽性者が出たことがわかり話題となりました。

その際は新型コロナウイルス以外の従来のコロナウイルスでも陽性になってしまうという感度(真陽性率)の低さが指摘されました。

これは「約半数から新型コロナを認識する免疫細胞が検出された」という話とは別のことなのでしょう。

 

想定される因子 「相互補完的に」

免疫学の第一人者である大阪大学の宮坂昌之招聘教授はこう分析する

①BCGは「訓練免疫」という仕組みで人体に備わっている自然免疫を活性化

させ、重症化抑制に寄与している可能性がある

②交差免疫も働いているが、重症化を抑える貢献度の大きさは正確には分かっていない

③遺伝子の差異も因子の一つだが、同じアジア人でも住む場所によって重症化する割合は異なり、決定要因とは思えない

④アジアの方が肥満や生活習慣病の程度が欧米より低く、これも重症者の数を抑え込む因子の一つだろう。

 

「一つが決定的に重要というより、交差免疫、BCG、遺伝子などの因子が相互補完的に働き、重症化率を大きく押し下げている」  

コメント

宮坂先生はウイルス研究の第一人者です。

午後の某バライティー番組にもしばしば登場され、難しいウイルス感染の内容をわかりやすくかつ切れ味鋭く解説されていました。

今回の新聞記事の内容は山中先生が唱えられた「ファクターX」そのものです。

ところで、新たな専門家会議に山中伸弥先生がメンバー入りしました。

山中教授はご自身で“感染症の素人ですが”とおっしゃっています。

一般の人から見るとノーベル賞を受賞した科学者。

一般の人にとっては専門家らしく見え、実際には感染症対策の専門家ではない人がメンバーに据えられ、新型コロナ対策が政治利用されかねない状況が想定されます。

宮坂先生みたいな方に是非メンバーに入っていただきたかったところです。

いつも思うことではありますが、こういった会議の構成者を「誰がどのように」選考し決定するのか、実に不明瞭です。

 

朝日新聞・朝刊 2020.6.27

 

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