窓開け・エアコン 車内の飛沫に効果

窓開け・エアコン 車内の飛沫に効果   富岳で計算 マスクも推奨

車内の新型コロナウイルス対策をどうするか。

理化学研究所などのチームはバスやタクシー、救急車内で、しぶき(飛沫)がどう広がるか、スーパーコンピューター「富岳」で計算した。

エアコンや窓開け、換気扇はどう使えば効果的なのか。

イカーでのドライブにも参考になりそうだ。

 

チームは、前後に乗降口がある路線バスが、乗車率80%にあたる63人乗車の状態で、時速20キロで走る場合を考えた。

前後2ヵ所で換気扇を動かし、エアコンは車内の空気を循環させる設定とした。

 

運転席と乗客席との間に仕切り板があると、運転手、乗客が咳をしても、大きな飛沫は板の内側にとどまると計算された。

小さな飛沫は車内に広がる結果になった。

 

窓を閉めても、換気扇をつければ、3分半で車内の容積と同じ量の新鮮な空気を取り入れられた。

5ヵ所の窓を5センチずつ開けるとそれが2分半になった。

エアコンに飛沫を捕らえるフィルターをつけると、窓を閉めても、開けているのと同じくらいの飛沫を取り除く効果があると計算された。

 

研究に参加した自動車メーカーの担当者によると、シミュレーションのもとにしたフィルターは実験用のもので、現在のバスではもう少し目の粗い、ほこりを防ぐためのフィルターが使われている。

小さな飛沫を捕らえることのできるフィルターは目が細かいため、エアコンの吸い込み性能を損なわないよう目の粗さのバランスを考慮した上で、商品化に向け準備中という。

 

タクシーも調べた。街中を想定して時速40キロ、運転手と客2人の計3人が乗った条件で計算した。

外気を取り入れる「外気導入モード」でエアコンの風量を最大値の半分にした場合、窓

を閉めたままでも85秒に1回、車内の空気が入れ替わるペースで換気が進んだ。

 

運転席と後部左の窓を5センチずつ開けた場合は68秒で、換気の上乗せ効果はそれほど高くなかった。

窓を閉めてエアコンを最大値にすると、45秒だった。

速度を時速20キロに落とした場合、窓開けの効果はほとんどなかった。

 

運転手がマスクをつけずにせきをすると、細かい飛沫はエアコンの風に乗って車内に広がる。

後部座席との間に仕切り板をつけた状態で、運転席と後部左の窓を開けると飛沫は効果的に車外に出た。

20秒後には半分になり、後部座席に飛ぶ量も減った。

 

乗客がマスクをつけずに咳をした時は、窓開けの効果は限定的だった。

仕切り板も漂う細かい飛沫を防ぐには限界があり、チームはマスクをつけることで飛沫の量を減らすのがよいと結論づけた。

 

この結果は、自家用車などにも応用できる。

家族など身近な人以外が同乗する場合は、マスクをつけるのがおすすめだ。

 

患者と救急隊員が狭い空間に同席する、救急車についてはどうか。

救急隊員は感染者の搬送には、性能が高い「N95マスク」などの装備で臨む。

ただ他の病気や事故での搬送後に患者の感染がわかるケースもあり、どうしたら同乗者の感染リスクを下げられるのかを検討した。

 

患者が咳をした場合、換気扇のみだと、後部座席全体に広がり、1分後でも3分の1程度の飛沫が漂っていた。

運転席のエアコンを加えると5分の1、さらに後部座席のエアコンを加えると9分の1にまで減った。

患者の周りにビニールカーテンをつけ、内側で換気扇を動かすと、車内の他の部分にはほとんど漏れ出さなかった。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.4.11