密室、せき・会話のリスクは こまめな換気・マスク、政府推奨
微粒子 10分近く漂う可能性
新型コロナウイルスは、患者のせきや会話などで飛び散り、空気中を漂う微粒子「エーロゾル(エアロゾル)」によって、感染が広がる可能性がある。密閉された場所で大声を出すと、微粒子が10分近くにわたって空気中を舞う可能性があることもわかってきた。
■ すぐ落下せず
政府は5月、新型コロナ対策として「新しい生活様式」を公表した。
その中でこまめな換気のほか、外出時に屋内にいるときや、会話をするときは、症状がなくてもマスクを着けるよう勧めている。
ウイルスを含む微粒子を、無意識に吸い込んだり、まき散らしたりするのを防ぐためだ。
病原体の感染経路には、咳や会話で飛び散る唾液などのしぶき(飛沫)による「飛沫感染」、しぶきの水分が蒸発して小さくなり、空気中をふわふわと漂う「飛沫核」による「空気感染」などがある。
こうした感染経路の定義とは別に、空気中の微粒子に含まれるウイルスを吸い込んで感染することを「エアロゾル感染」と呼ぶことがある。
小さな微粒子は軽く、すぐには落下しない。
米国の研究チームは会話によって生じる微粒子が、密閉された場所では、10分近くにわたって空気中を舞う可能性があることを実験でつきとめた。
論文を5月、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。
チームは、穴が空いた箱を用意し、実験参加者に、箱の中に向かって25秒間、大声で繰り返し「Stay healthy(健康でいてね)」と言わせた。
セリフは、「th」の発音のときに多くのしぶきが飛ぶことから選んだ。
その後、どれくらい空気中に微粒子があるか、レーザー光をあてて調べた。その結果から、1分間の大声の会話で、少なくとも1千個のウイルスを含む微粒子が8分間以上舞うと推定。
「密閉空間では、通常の会話が感染の原因になる」としている。
実際に、ウイルスを含む微粒子が空気中にあるのか調べた研究もある。
中国の研究チームは武漢の病院や百貨店の入り口付近の空気にウイルスの遺伝子が含まれているかどうかを調べ、英科学誌ネイチャーに4月に発表した。
ウイルスの遺伝子が比較的多かったのが、病院の臨時トイレ。
広さは1平方メートルほどで換気設備がなく、密閉された空間だ。
感染者の息や、排泄物に含まれるウイルスが空気中に漂うことを示すデータだという。
■ 歯医者も細心
ほかにも微粒子が舞いやすい場所がある。
京都市のY歯科医院は3月、歯科医師らの顔を覆うフェースシールドを使い始めた。
微粒子を口の外で吸い取る機械(口腔外バキューム)も、全席に備えることにした。
歯科治療はしぶきが飛び散りやすい治療も多い。
ただ、口の中の環境のケアが適切でなければ、かえって誤嚥性肺炎や感染症のリスクを高めてしまうこともある。
京都工芸繊維大や、理化学研究所などのチームは、スーパーコンピューター「富岳」を使って、微粒子が様々な条件のもとで、どのように広がるのかのシミュレーションをしている。
人が多く乗った列車の乗車率や教室の窓の開閉によって、ウイルスが含まれた微粒子の広がり方がどうなるか計算中だ。
研究チームは「換気の仕方など、大がかりな設備を導入しなくても感染を防ぎやすくする方法を提案したい」と話す。
■ 常に窓開けて
家や学校、会社ではどう換気すればよいのか。
一番良いのは常時、離れた複数の窓を開けておくことが。
窓は全開する必要は無く、4分の1程度など少しでも良いが、室内の空気が入れ替わるようにアドバイスする。
離れた窓を2カ所以上開けて、空気の入り口と出口を作ると良い。
<コメント>
当院では、玄関と中扉(自動ドア)と待合室に面する中庭の窓の一部を開けて常時通気を心がけ
ています。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.6.4
<関連サイト>
エアゾルによる感染
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1132