(新型コロナ)ウイルス感染力、いつまで
新型コロナウイルスがプラスチックや金属などの表面にくっついた場合、しばらくの間は感染力を持っていることが、研究者から報告されている。
国内で感染が広がり、感染した人がせきやくしゃみ、会話でつばなどを飛ばしたり、口をおさえた手でさわったりして、身のまわりにウイルスが存在している可能性がある。
■空気中は3時間 プラスチックの上では最大3日
米国立アレルギー感染症研究所の研究者らが3月17日、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに出した論文で、新型コロナウイルスが感染力を保ち続ける「寿命」を報告した。
最も長かったのはプラスチックの上で、最大で3日間、感染力を持っていた。銅の上では4時間、ボール紙の上では24時間で、感染力を持ったウイルスは見つからなくなった。
どの環境でも、ウイルスは時間がたつほど減っていた。
プラスチック上で、ウイルスの量が半分になる時間は、6.8時間程度だという。
患者のせきやくしゃみなどによって飛び、密閉された空間で、空気中をしばらく漂う細かい微粒子「エアロゾル(エーロゾル)」中では、3時間感染力を保つことも確かめられた。
さらに長い可能性も報告されている。
ドイツの研究者が2月6日、医学誌ジャーナル・オブ・ホスピタル・インフェクションに、別のコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などについての論文22本を調べた結果を報告した。
報告によると、コロナウイルスが環境中で感染力を保つ期間は「最大9日」だった。
SARSウイルスは木材上では4日、プラスチック上では最大で9日間。
MERSウイルスは鉄、プラスチックの上で最大2日だった。
コロナウイルスの中には、いわゆる「風邪」の原因のひとつになるウイルスがあり、こうしたタイプのウイルスは、鉄の上で5日、手術手袋の上で8時間だった。
ウイルスは唾液や排泄物などの液体が残った状態の方が長期間感染力が維持されると考えられる。
ぬれていない場所でも数時間から数日間感染力を保つことが報告されている。
■季節変わっても消えない可能性
季節が変われば、流行は収まるのだろうか。
風邪をひきおこすコロナウイルスは通常、冬に流行のピークを迎えるが、新型コロナウイルスの感染者は常夏のシンガポールなどでも増えている。
世界保健機構(WHO)は3月6日の会見で、気候によってウイルスの活動がどう変化するのかはわかっていないとして、インフルエンザのように夏になれば消える、と考えるのは間違いだ、と警戒を促した。
■主要な感染経路、「飛沫」と「接触」
新型コロナウイルスは、どうやって感染を広げるのか。主な感染経路は感染者のせきやくしゃみ、会話で生じる、しぶき(飛沫)をあびることによる「飛沫感染」と、ウイルスがついた場所をさわった手で、目や口、鼻をさわることによる「接触感染」とされる。
接触感染を防ぐには、外出して、会社や店舗のドアノブや電車のつり革など、誰がさわったかわからない場所にふれた後に、よく手洗いすることが大切だ。
WHOはウイルスをさわった可能性がある場合、その手で目や口などをさわらず、手洗いをするよう呼びかける。
手洗いは手にせっけんをつけて手の甲や指先、爪の間、指の間などをよくこすって洗う。
流水で洗い流した後、清潔なタオルやペーパータオルでふき取って乾かす。手のアルコール消毒も、感染予防策として勧めている。
日本環境感染学会は、家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいて、トイレや洗面所、浴室などを共用する場合、手すりやドアノブなどを、塩素系漂白剤を薄めて作れる濃度0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液で消毒するよう勧める。
タオルや衣類、食器などは、普通の洗濯や洗い物でよく、家族と分けて別に洗う必要はないとしている。
また、密閉した空間では、空気中を漂う、ごく小さな微粒子エアロゾルによる感染の可能性も指摘されている。
政府の専門家会議は、可能であれば、2方向の窓を開けて換気するよう呼びかけている。
■便からも検出例、十分な手洗いを
新型ウイルスの感染者の便からもウイルスが検出されている。
感染を広げないために、トイレの後は十分にせっけんと流水で手を洗う必要がある。
自分の体の表面には常にウイルスが付いているという前提に立ち、不用意に目や鼻、口を触ったり、電車の中など不特定多数の人が出入りする場所で飲食をしたりするべきではない。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.4.10
<関連サイト>
新型コロナウイルスの感染力はいつまで