新型コロナで「再感染」 1度かかっても安心できず?
新型コロナウイルス に感染して回復したあと、再び感染が確認されたケースが相次いでいる。「同じウイルスでの症状が治まりきらないうちに、また悪化したのでは」という見方もあったが、ウイルスの遺伝情報を調べて「別のウイルス」に感染したと確認された例が、少なくとも海外で4件ある。国内の感染者は11万人を超えたが、1度かかっても注意は続けたほうがよさそうだ。
再感染は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の報告などによると米国、香港、ベルギー、エ
クアドルの4カ国・地域からで、患者は20代から50代の男性3人、女性1人。
最初の症状が改善し、鼻の奥のぬぐい液などを調べる検査で、ウイルスの遺伝情報の一部が見つ
からなくなる「陰性」となるなどしてから、検査で再びウイルスの遺伝情報が見つかる「陽性」となり、再感染が判明した。
最初の感染から2度目の感染までの日数は48~142日。
論文は8月末から10月にかけて、電子版で相次いで発表された。
エクアドルの事例は、速報を重視して内容の審査を受ける前に公表する「プレプリント」という形式で公表された。
日本でも、再感染とみられる例はある。
沖縄県は10月8日、「いずれも20代の女性2人が1度感染し回復したあと、再び感染したとみられる」と発表した。
こうした発表はほかの自治体でもあった。
ただ、論文として掲載された海外の再感染は、ウイルスの遺伝情報をすべて調べたうえで、1度目と2度目で別のウイルスに感染したことが確認されている。
新型コロナウイルスは、アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基と呼ばれる化学物質が約3万個並んだ遺伝情報持っていて、この遺伝情報は時間がたつにつれて少しずつ変化している。
塩基を機械で読み取ることで、別のウイルスかどうかがわかるしくみだ。
なぜ「再感染」が起きるのか
再感染は、なぜ起きるのか。
感染症と免疫に詳しい米エール大の岩崎明子教授は「最初に感染したときに体内で起こる免疫の働きはケースによってさまざまで、次の感染を防げるほどの機能をだれもが得られるわけではないようだ」とみる。
たとえば、エクアドルの男性の場合、ウイルスに対抗して体内でできる「抗体」というたんぱく質が検出されていたのに、再感染を防げなかった。
詳しい経過は不明だが、抗体にはいろいろなタイプがあるので、検出された抗体はウイルスの感染を防ぐ効果が十分ではなかった可能性も考えられるという。
米国とエクアドルの男性は、1度目よりも2度目の感染のほうが症状が重く、呼吸困難などを起こした。
2度目のほうが症状が重くなる原因の仮説として、米ネバダ大などのチームは「1度目よりも多い量のウイルスにさらされる」「抗体がかえって感染を促進させてしまう『抗体依存性感染増強(ADE)』という現象が起きる」といった可能性をあげる。
ただ、今回のケースに当てはまるかはわかっていない。
大阪大の朝野(ともの)和典教授(感染制御学)は「麻疹(はしか)など1度かかれば一生感染しない病原体もあるが、新型コロナはそうはいかないようだ。こまめな手洗い、換気や身体的距離といった予防策は、感染したことがある人でも続けたほうがいい」と助言する。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.12.27
<関連サイト>
新型コロナ 「抗体」があっても感染が防げないイメージ
https://aobazuku.wordpress.com/wp-admin/post.php?post=1868&action=edit