「心不全パンデミック」の懸念

心不全パンデミック」の懸念 高齢化で増え続ける患者 約20年で21万が34万人に

息切れやむくみ、だるさを感じる・・・。

こうした症状が出る心不全患者が増え続けている。

急速な感染症の拡大になぞらえて「心不全パンデミック」とも呼ばれ、懸念されている。

冬は急性心臓病患者が増えるシーズン。

新型コロナウイルスの感染の広がりも重なり、医療機関の救急対応は大丈夫なのだろうか。

 

息切れ 健診先延ばし・・・緊急入院

ハーフマラソンの大会に出るほどランニングが好きな東京都内に住む会社員、Kさん(60)が異変を感じたのは、新型コロナの感染が広がっていた今年の春ごろだった。

週1回のランニングがつらくなり、夏には歩くだけでハアハアと息切れがした。

 

前年の健康診断で検査結果に「不整脈」と記載されたが、とくに症状もなかったので今春の健診まで様子をみようとそのままにしていた。

 

ところがコロナの感染が拡大。医療施設で感染するリスクを避けようと、健診をさらに先延ばしにした。

 

そんなさなか、9月初旬の夜、眠れないほど息苦しくなり、近くの病院を受診。

急性心不全と診断された。

榊原記念病院(東京都)に転送され緊急入院になった。

薬による治療などで3週間ほどで息切れなどの症状がなくなり、いまはリハビリに取り組む。

 

厚生労働省調査による心不全の総患者数の推計は1996年に約21万人だったが、2017年は約34万人になった。

 

高齢化に伴い、心不全患者が爆発的に増える「心不全パンデミック」への対処が課題になっている。

 

心不全の代表的な症状や兆候は、息切れ、むくみ、だるさの三つだ。

いずれも心臓のはたらきが落ち、血液の循環が悪くなり、血液が停滞するなどして起きる。肺水腫による心不全の場合、動いたときに息切れしたり夜寝ているときに息苦しくなったりする。

むくみは足の甲や足首などで起きやすい。

だるさは、動きたくないという感覚や疲れやすさ、食欲不振につながる。

 

症状がでない「隠れ心不全」という言葉がある。

症状を感じていても、たいしたことがないと自分で判断してしまう人も多い。職場や家族の周囲のだれかが息切れなどの異変に気づいたら、心不全を疑って本人にも受診を働きかけるとよい。

 

コロナ禍 救急対応に課題/受診控え心配

心臓病患者のための集中治療室(CCU)をもつ都内の73病院で組織する「東京都CCUットワーク」によると、新型コロナ感染が広がっていた4月、17病院が心臓病患者の救急の受け入れを停止し、多くはコロナの対応に専従し

た。

17病院はふだんは都内の心臓救急の19%を担う基幹的な病院だ。

なかでも東京都の中心部では受け入れられる病院が45%になり、他地域と連

携した区域もあったという。

 

多くが新型コロナの入院施設に組み入れられたことが大きな要因だったが連携できた。

新型コロナ患者の対応のために心臓病患者の受け入れを止めて対応した。

冬を迎えたこれからは急性心臓病患者が増える時期となる。

治せる患者が入院できない事態が起こらないように対策を考える必要がある。

心臓病や脳卒中などの増加に対応しようと昨年末、循環器病基本法が施行された。

今年10月には、各分野での対策の方向性を示す国の基本計画も策定された。基本計画は新型コロナの医療と、循環器病などそのほかの医療との両立をめざすことを求めている。

 

東京都の救急の受け入れは何とかもちこたえているが、医療資源に限りがある地方での今後の対応が課題だ。

基本計画に基づいて自治体は急いで計画をつくる必要がある。

さらにコロナ禍での受診控えも心配だ。

一度心不全の発作を起こすと、必ず心不全の病状が悪くなる。

検査や治療にできた空白が影響を及ぼさないか、長期的に見ていかなければならない。     

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.12.16

 

<関連サイト>

こんなときは心不全の疑い

https://aobazuku.wordpress.com/2021/01/07/こんなときは心不全の疑い/