PM2.5をどう防ぐ

大気汚染物質として関心が高まっている「PM2.5」への対応をうたう製品が増えている。
たちまちアレルギー症状が出る花粉と違い、すぐに悪さが見えてこない“敵”なだけに不安も募りがちだが、そもそもPM2.5の正体は何か。
人体にどういう影響があるのだろうか。

気になるPM2.5どう防ぐ 微小粒子、肺の奥で炎症

某大型スーパーでは全国の中大型店で「PM2.5」の対策商品を集めた売り場を設けている。
住宅の換気口に付けるフィルターや空気清浄機、布団掃除機などをそろえ、2~3月の売上高は前年同期比で10%増という。

PM2.5とは、大気中の微小粒子状物質で粒径がおおむね2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下のものを指す。
大きさで規定されているだけで、その中身は硫黄塩や硝酸塩などの塩類、黒色炭素や有機化合物、金属成分など様々だ。
有機化合物は数千種類にも及び、中には発がん性物質も含まれる。
工場の排煙やディーゼル車の排ガス、石炭を使った暖房システムからの排煙、火山活動などがPM2.5の発生源だ。

■過剰反応を戒め
吸い込んだ粒子が気管支に作用して起きるのがせき。
体質的にぜんそくを起こす人もいる。
粒子が小さいほど、吸い込んだときに肺の奥まで達しやすく「長期的には、気管支の先の細気管支、さらにその先の肺胞領域まで広く炎症を起こし、間質性肺炎COPD慢性閉塞性肺疾患)にかかる場合もある。
COPDは別名タバコ病とも呼ばれる「肺の生活習慣病」だ。
粒径1マイクロメートルに満たないタバコの煙の粒子もPM2.5に入る。
間質性肺炎COPDの先には肺がんにつながる可能性もあるが、それは何年にもわたって高濃度のPM2.5にさらされる場合。
1~2日続くぐらいなら、そんなに騒ぐ必要はない」という過剰反応を戒める声もある。

日本ではPM2.5の環境基準を「大気1立方メートル中のPM2.5の量が1年平均で15マイクログラム以下、かつ1日平均で35マイクログラム以下」と定めている。
現在、地方自治体が全国700カ所以上に機器を置いて濃度を測定しており、1日平均で1立方メートル当たり70マイクログラムを超える恐れがある場合、都道府県が住民に注意喚起をしている。

そんなときは屋外活動を控える。
光化学スモッグへの対応と同じだ。
また、外出時にはマスクを正しく着用する。
最近は0.3マイクロメートルの粒子を95%以上防ぐという医療用の高機能マスクも売られているが「息がしづらく長時間の着用は難しい。
花粉用マスクでも影響を減らせる。
ちなみに、帰宅時に洋服にブラシをかけても花粉のようには落とせない。

室内に侵入したPM2.5は空気清浄機でも対応できる。
日本電機工業会(JEMA)は昨年、家庭用空気清浄機のPM2.5対応についてガイドラインを定めた。
今まで空気清浄機の集じん性能についてはタバコの煙で試験してきたのを、PM2.5用の新たな指標を追加した形だ。
ガイドラインの発効により、各社は発売されていた製品に「PM2.5対応」の記載をするようになった。

■抵抗力を高める
それほど高機能・高性能な空気清浄機でなくてもPM2.5は除去できる。
ただし、フィルターの目詰まりを防ぐために水洗いなどのメンテナンスは欠かせない。
その際、飛び散るPM2.5を吸い込まないようマスクをするといい。

PM2.5は外から侵入するばかりではない。
タバコの煙はもちろん、実は石油・ガスのファンヒーターやストーブ、コンロ、線香や蚊取り線香からも発生する。
大気中のPM2.5を心配するくらいなら、喫煙や開放型燃焼器具の使用をやめた方がいい。
日々の運動で心肺力を高め、体の抵抗力をつけていく方が得策といえる。

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■気象協会のサイト、分布予測を公開
中国からの飛来で話題になっているPM2.5だが、これは別に新しいものではない。
かつての四日市ぜんそくもPM2.5による健康被害だという。

PM2.5の基準は米国が世界に先駆けて1997年に決めた。
日本で基準値が定められたのは米国より12年遅い2009年。
ただ、国や自治体によるPM2.5の測定は01年に始まっていた。

現在、日本気象協会サイトはPM2.5の分布予測を公開。
環境省の大気汚染情報サイト「そらまめ君」では、各都道府県の注意喚起情報などを一覧できるようにしている。

[日経プラスワン2014年4月5日付] 一部改変
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO69380170U4A400C1W13001/