子供のインフルエンザ

子供のインフルエンザ、年齢別のポイントは? タミフルや解熱剤の使用、登園登校の基準

学校保健安全法における出席停止期間について
インフルエンザは咳やくしゃみなどの飛沫感染、物や皮膚等を介をして接触感染するので、保育園や学校などたくさんの子供たちが集団生活を送っている場では一気に感染が広まる可能性も高く、毎年、子供たちから流行が始まると言っても過言ではない。

1.風邪との違いは?子供のインフルエンザ、3つの見分け方
インフルエンザの主な症状は、38℃以上の高熱、寒気、関節痛、倦怠感、吐き気などの全身症状と、少し遅れて現れる咳や鼻水、喉の痛みなどの上気道の症状だ。

私的コメント
「吐き気」が主な症状であることもあり、しばしば胃腸風邪と間違えられる。
例年、シーズン後半に流行するインフルエンザB型では、胃腸症状が多いのが特徴でもある。
また、「『少し遅れて現れる』咳や鼻水、喉の痛み」は局所症状といい全身症状が最初に出るのがインフルエンザの特徴でもある。

突然、激しい症状が出てすぐインフルエンザだと分かる場合もあるが、小さな子供の場合、発熱してもわりと元気があることも多く、風邪と見分けがつきにくい場合もある。
症状は似ていても、風邪が鼻や喉などの上気道(鼻の穴から喉の奥まで)の炎症であるのに対し、インフルエンザは肺、気管支など呼吸器の疾患であり、見分けるにはポイントがあります。

私的コメント
この点は重要と思われます。

症状が風邪かインフルエンザか迷う時は、以下のような症状がないかまずは確認しよう。

インフルエンザと風邪の見分け方
①:全身症状がある(筋肉痛、関節痛、倦怠感など)
インフルエンザを発症すると、まず筋肉痛や関節痛など全身の症状が初めに出るのが大きな特徴。
最初に咳や鼻水、喉の痛みなどの症状から始まる風邪とはここが大きく異なる。
いつも元気なお子さんが急に「ぐったりだるそうにしている」「唇や顔色が悪い」「節々の痛みを訴える」などいつもと違う様子が見られる時は、インフルエンザに感染している可能性がある。
但し、小さな子供の場合、大人と違ってだるさや筋肉痛、頭痛などがはっきり出ないこともある。
1歳未満の赤ちゃんや小さな子供の場合、ミルクの量や離乳食の食べる量が減る、機嫌が悪くてぐずる、いつもとは違う泣き方などが見分けるポイントとなる。

②:発熱を繰り返す(二峰性発熱)
風邪とインフルエンザ、どちらも38℃以上の高熱が出ることがあるが、風邪の場合は通常2~3日程度で自然に下がり、再び上がる事はほとんどない。
しかし、インフルエンザの場合、3日~5日程度で一旦、発熱が治まっても、24時間以上たった後に再び熱がぶり返すことがあるす。
これは「二峰性(にほうせい)発熱」と言い、B型に多く見られる症状だが、A型でも起こることがあります。

私的コメント
本当にB型に多く見られるかどうかは経験上実感していない。
また、この見分け方は初期の診断には役立たない。

解熱後も体内にまだインフルエンザウイルスが残っていることが原因で、免疫力がまだ弱い子供に比較的多く見られる。
また、発熱で免疫力が落ちているところに別の細菌やウイルスに感染して再度、発熱している場合もあるので、ぶり返す熱には注意が必要だ。

③:脈や呼吸が早く、息苦しさや胸の痛みがある
高熱が出ると呼吸数が増え、脈拍も上がるが、インフルエンザは普通の風邪に比べると「ウイルスの増殖スピードが速い」という特徴がある。
(24時間で1つのウイルスが100万個に増殖)
インフルエンザの場合、重症化すると「肺炎」や「心筋炎(心臓の筋肉の炎症)」を起こすことがあるので、発熱後、急激に容体が悪化し、「息苦しい」「胸がドキドキする」など症状が見られる時は、インフルエンザを疑う必要がある。
普段から呼吸数や脈拍が早い乳幼児の場合も、「肩で呼吸する」「全身を使って呼吸する」「ゼーゼー苦しそう」など、いつもと違う様子が見られる時は早めに受診しよう。

私的コメント
乳幼児ではRSウイルス感染症との区別が必要となる。

肺炎や心筋炎のサイン
○呼吸が苦しい、息苦しくて寝ることができない。
呼吸数が多い 5~11歳であれば1分間に30回以上、12歳以上であれば1分間に20回以上。
○動悸が激しく、胸がドキドキする。胸が痛い。
脈拍が多い 5~11歳であれば1分間に140回以上、12歳以上であれば1分間に100回以上。



2.赤ちゃん・幼児(0~4歳)のインフルエンザの特徴&注意点
生まれてすぐの赤ちゃんは、お母さんの胎内でもらった免疫や母乳からの免疫が働いているため、病気に罹りにくいとされているが、インフルエンザは感染力がとても強いウイルスなので、パパ、ママ、兄弟など、家族内に感染者がいる場合、家族から感染してしまうケースも少なくない。
さらに生後半年以降になると、お母さんからの免疫がそろそろ切れて病気にかかるリスクも高まる。
体力のない乳幼児はインフルエンザを発症すると重症化する可能性が高いので、次のような症状が見られる場合はすぐに病院を受診するようにしよう。
• 38℃以上の急な発熱、3日以上発熱が収まらない
• 手足の突っ張りやがくがくした震えなどけいれんの症状
• 顔色が悪い(青白い、土気色)
• 肩や全身を使って苦しそうに呼吸をしている
• 水分(母乳、ミルクなど)を摂れず、半日以上おしっこが出ていない
• おう吐や下痢を繰り返している
そのほか、「泣き方がいつもと違う」「機嫌が悪くぐずる」「ぐったりしている」など、いつもと違う様子の時も注意が必要だ。

乳幼児はハイリスク!インフルエンザで起こる合併症5つ
5歳未満の子供にとってインフルエンザで一番怖いのは「合併症のリスクが高い」こと。
インフルエンザで起こる可能性がある合併症は以下のようなものがある。

インフルエンザ脳症
インフルエンザの合併症の中で最も重篤な合併症が「インフルエンザ脳症」だ。
インフルエンザを発症後、24時間以内に意識障害やけいれんが現れ、症状が急速に悪化する。
毎年50人~200人が罹患し、そのうちの10~30%は死に至り、重い後遺症が残ることも少なくない。
なぜインフルエンザ脳症が起きるのか、その原因やメカニズムなど詳細は未だ不明だ。
「呼びかけに答えない」「意識がもうろうとしている」など、いつもと違う様子が見られる時はすぐに医療機関を受診するようにしよう。

②熱性けいれん
乳幼児はまだ脳が未熟なため、高い熱が脳神経の刺激となってコントロールを失い、筋肉に勝手な指令を出してしまうのが「熱性けいれん」だ。
幼児の10人に1人の割合で起き、体の硬直、ガクガク震える、白目をむく、唇が青紫色になり呼吸が乱れるといった症状が突然現れるが、5分程度で納まることがほとんどで、後遺症が残ることはない。
発症時には焦らず、以下のような点に気を付けよう。
• 衣服を緩めて、呼吸を楽にしてあげよう。
• 姿勢は横向きにして、吐いた物が詰まらないようにしよう。
• 口の中に飲み物や食べ物、その他割り箸などの異物は入れないようにしよう。
• 大声で呼びかける、激しく揺するなど刺激を与えないようにしよう。
• 体温や眼球の動き、けいれんの様子や経過時間をきちんと観察しよう。
「けいれんが5分以上続く」「5分~10分の間に何度も発作が起こる」「麻痺や重度の昏睡が見られる」場合はインフルエンザ脳症の恐れもあるため、すぐに受診するようにしよう。

③急性中耳炎
インフルエンザの合併症で一番多い「中耳炎」。
鼻や喉のインフルエンザウイルスが、耳管を通って中耳という部分に入り、炎症を起こす。
中耳に膿が溜まると、鼓膜への圧力が高まって強い痛みが起こるため、小さな子供は機嫌が悪くなり、耳をしきりに触ったり、反対に耳を触られるのを嫌がることもある。
痛みが強い時は耳の裏を冷やすと痛みが和らぐのでアイスノンや冷やしたタオルなどをあててあげるのも良い。

④肺炎
インフルエンザウイルスや細菌が肺に侵入して炎症を起こしてしまうのが「肺炎」だ。
高熱が数日間続き、激しい咳が出て、呼吸も荒くなります。
ウイルスそのものが原因となる他、ウイルス感染で免疫が落ちたところに別の細菌に感染して発症する場合もあるが、症状は同じだ。
呼吸が上手くできないと、チアノーゼ(酸素不足で皮膚や爪先が青紫色になる)になることがある。

⑤ライ症候群
脳症や肝臓の機能障害等を起こす合併症で、時には命に関わることもある。
その原因ははっきりとは分かっていないが、解熱剤として用いられるアスピリンを服用した小児に発症しやすいとされている。
そのため、現在では小児へのアスピリンの投与は原則禁忌となっており、患者数は減りつつある。

5歳未満の乳幼児のインフルエンザの治療法。0歳児のタミフルの使用も可能に!
乳幼児のインフルエンザの治療には、大人と同じく「抗インフルエンザ薬(ノイラミダーゼ阻害薬)」を使用する。
抗インフルエンザ薬の中でも、吸入するタイプの「リレンザ」や「イナビル」は、赤ちゃんや小さな子供には使用が難しいため、治療には「タミフル」が処方される。
これまで0歳児には、効果や副作用が明らかになっていないということでタミフルは使われていなかったが、2016年12月より保険適用され、0歳児でも使用できるようになっている。(生後2週間未満は使用しない)
大人が飲むカプセルタイプのタミフルとは違い、お子さんに処方される「タミフルドライシロップ3%」は顆粒の溶けるタイプ。
独特の苦みがあるが、ヨーグルトやアイス、ジュースやイオン飲料などに混ぜると飲みやすくなる。
但し、タミフルは、インフルエンザの症状が出てから48時間以内に服用を始めることが重要で、それ以降の有効性は確認されていないため、その期間を過ぎてしまった場合には使用しない場合もある。
また、以前からタミフルは、服用時に見られる異常行動が問題となっているが、異常行動の原因が本当にタミフルのせいなのか、高熱によるものなのかはまだはっきり分かっていない。
乳幼児は重症化のリスクが高いため、これまで通りタミフルが処方されているが、服用開始後2日間はお子さんをから目を離さず、状態をしっかり観察するようにしよう。

解熱剤の使用には要注意!
お子さんが高熱を出していると親としてはなんとか下げてあげたいと思うものだが、解熱剤の使用には注意が必要だ。
通常、医療機関で解熱に良く処方される「ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)」「メフェナム酸(ポンタール)」は脳症との関係があると言われており、小児には使用しない。
また、「アスピリンバファリンPL顆粒など)」も、ライ症候群を引き起こす危険性があることから、処方されることはない。
内容の分からない市販薬や、他の家族の分の使いまわしなど、家にある解熱剤を勝手に与えるのは絶対にやめよう。
解熱剤が必要な時には、比較的効果はマイルドですが安全性が高い「アセトアミノフェンカロナール、アンヒバ、アルピニーなど)」をお医者さんで処方してもらい、必ず用法用量を守って使用するようにしよう。

ワクチン接種は生後6カ月から
インフルエンザ予防接種は原則「生後6か月から」受けることができる。
接種しても100%発症を予防できるわけではないが、症状の軽減や合併症のリスクを減らすには有効なので、可能な限り接種するようにしよう。
ワクチンの効果は、接種後、2週間位で現れる。
流行前にしっかりと免疫を付けておくためには「11月に1回、3週間以上空けて12月の上旬までに2回目を受ける」のがおすすめだ。
また、ワクチンを受けられない6カ月未満の赤ちゃんの場合、周りの家族がウイルスを持ち込まないようにすることが大切。
うがい手洗いと手指の消毒の徹底、家族全員予防接種を受ける、流行期は外出を控えるなど家族全体での予防が必要だ。

3.5歳~9歳の子供のインフルエンザの注意点。登園・登校の基準
熱せん妄に注意!インフルエンザの症状
たくさんの子供が集団生活をする幼稚園や小学校に通う5~9歳は、インフルエンザに罹る可能性も高い年代だ。
38℃以上の高熱、咳や鼻水など症状の他、筋肉痛や関節痛、頭痛といった症状がはっきりと出るようになる。
乳幼児に比べると脳症などの重症化のリスクは減るが、このくらいの年代の子供は、高熱により意識が混濁し、錯視や幻聴などの異常行動を起こす「熱性せん妄」になることがある。

≪熱性せん妄の主な症状≫
• 急に笑い出す、泣き出す
• 訳の分からないことをしゃべりだす
• 何かから逃げようとする
• 「ゾウやライオンがいる」など幻視・幻覚
• 部屋の中をうろうろと歩き回る
• 理由もなく何かをひどく怯える
脳症の症状と似ていますが、熱性せん妄は、まだ脳神経が未熟な子供に起こる一過性の症状であり、脳への影響はなく、通常は数分~1時間程度でおさまる。
しかし、乳幼児とは違い、この年代の子供は自由に動けるので、突然の異常行動が大きな怪我や事故にもつながることがある。
高い熱が出ている時は、お子さんから目を離さないようにしよう。

喘息などのアレルギー、持病のある子は重症化に注意!
5歳を過ぎると、お子さん自身に体力もついてくるため、乳幼児のように重篤な症状を引き起こす可能性は低下する。
しかし、小児喘息などのアレルギー持ちのお子さんや、慢性疾患を持っているお子さんの場合は、肺炎などの重症化のリスクも依然として高く、発作や持病の悪化につながることもあるので注意が必要だ。
周辺の地域の流行状況をしっかりと把握して、流行前にワクチン接種を行っておくことや、日頃から手洗いやうがい、マスクの着用など予防対策を徹底するようにしよう。

5~9歳のインフルエンザ治療の特徴。リレンザ、イナビルなどの吸入薬も!
5~9歳くらいになると、タミフル以外にもリレンザ、イナビルといった他の抗インフルエンザ薬も使用できるようになる。
リレンザ、イナビルともに吸入するお薬だが、リレンザが1日2回、5日間吸入するのに対し、イナビルは感染初期に1回吸入するだけと、治療が楽なのが特徴だ。
幼児同様、抗インフルエンザ薬による異常行動が起こる事があるので、お薬の服用時は少なくとも2日間、子供を一人にしないようにしよう。(リレンザ、イナビルでも異常行動の発生の報告あり)
また、これらの抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に服用を始めないと効果が期待できない。
発症後、48時間以上過ぎていた場合には辛い症状を和らげるための対症療法を行う。

再登校はいつから?登園・登校再開の基準
感染力の強いインフルエンザは、熱が下がって症状が落ち着いてきても、体内にはまだウイルスがあり、周囲への感染力は残っている。
そのため学校における児童や先生の健康のための法律である「学校保健法」では、インフルエンザは「第2種伝染症(飛沫感染し、学校で流行が広まると考えられる感染症)」に定められており、出席停止期間が「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」と決められている。
さらに、免疫力が弱い幼児はウイルスの増殖期間が長い事や、保育園は学級閉鎖が出来ない事から、幼稚園、保育園の場合は停止期間が1日長い「解熱後3日」となっている。
「発熱した時=発症」と考え、発熱が始まった日は数えず、翌日を発症第1日目として考える。
発症の翌日に解熱して3日経過したとしても、5日経過した6日目までは登園することができない。