学校栽培のジャガイモ、食中毒に注意

学校栽培のジャガイモ、食中毒に注意 緑や未成熟、毒素多く

兵庫県宝塚市の市立小学校で7月9日、校内で収穫したジャガイモを食べた5年生16人が腹痛や吐き気を訴え、うち13人が病院に搬送された。
実はジャガイモには天然毒素があり、食中毒が毎年のように発生。
多くが学校栽培の現場で起きている。

宝塚市教育委員会によると、この小学校では理科学習の一環としてジャガイモを栽培。
当日朝に収穫したジャガイモを家庭科の調理実習で粉ふきイモにして食べたという。
症状を訴えた児童のうち8人が入院したが、翌日には全員が退院した。
兵庫県宝塚健康福祉事務所は、調理実習で捨てられたジャガイモの皮や未収穫の校内のジャガイモから、ジャガイモに含まれる天然毒素の「ソラニン類」が検出されたため、ジャガイモによる食中毒と断定した。
 
農林水産省によると、ジャガイモにはもともと、ソラニンやチャコニンなどの天然毒素が含まれている。
特に発芽部や緑色の皮の部分に多く、光に当たったり、イモに傷がついたりすると増えることが分かっている。
未成熟で小さなジャガイモも含有量が多いという。
 
市販用に流通しているものは適切に栽培・保管されているので問題ないが、自家栽培では注意が必要だ。
農水省は昨年、食中毒を防ぐための注意点をまとめたリーフレットを学校関係者向けに作製。
▽ 芽を間引いてイモの成長を促す「芽かき」や、日光に当たらないように盛り土をする「土寄せ」を行う
▽ 熟した大きなイモを傷つけないように収穫する
▽ 暗い場所で保管する
、などを呼びかけている。
 
ソラニンやチャコニンを過剰に摂取すると、嘔吐や下痢、腹痛、頭痛、めまいなどが起こり、海外では死亡例もある。
食品安全委員会によると、体重50キロの成人の場合、50ミリグラム摂取すると症状が出る可能性がある。
子どもの場合はより少ない量で注意が必要。
通常のジャガイモには100グラムあたり平均7.5ミリグラム含まれているが、光に当たって緑色になったところは100グラムあたり100ミリグラム以上含むものもあるという。
 
また、熱に強く、加熱調理で量を減らすことが難しい。
「芽や皮の部分は取り除くことが大切。未熟なイモや緑のイモは食べないで」と呼びかけている。

成長促す「芽かき」・光防ぐ「土寄せ」、不足
1989~2015年に発生したジャガイモの食中毒について、厚生労働省への届け出をもとに、2016年に分析した結果がある。
1997年までは報告がなかったが、その後は2002年と08年を除いて毎年発生し、合計で30件あった。
全体の9割は学校で栽培したジャガイモが原因で、半数は7月に起こっていた。
 
▽ 肥料や芽かきが足りず未成熟
▽ 土寄せが不十分
▽ 光の当たる場所で保管した
▽ 皮の部分を除かずに食べた
などの事例が目立った。
 
1988年以前も発生はまれで、98年以降毎年のように起こっている理由は不明だが、農家などの協力者が減ったり、栽培知識が受け継がれていなかったりするのではと推測できる。
7月に多いのは、夏休み前に収穫して、未熟なイモを食べている可能性もある。
地域や天候などにもよるので一概には言いにくいのだが、夏休み前に収穫するなら、3~4月初めには種イモを植え、十分な栽培期間を取りたい。
 
とはいえ、ジャガイモは、食生活と健康リスクを学ぶうえで、身近で有用な素材。
「防げる食中毒」として、リスクを知り、気をつけて栽培したい。

参考・引用 一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.7.30

関連サイト
ジャガイモ食中毒
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/479

ジャガイモによる食中毒を予防するために(農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/potato.html
(動画とリーフレットあり)
 
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